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怒る令嬢 アン・ロマーナ

 私は視線を逸らせる。すると、ニコラが駆けよってくれて、手を差し伸べてくれている。


 彼女の力では、支えられそうにないので自ら立ち上がる。彼女は、それがお気に召さなかったようである。


「ありがとう。ニコラ」


 そして彼女の手を握ると機嫌を良くしてくれる。


「うん」


 私は四人を一人ずつ見るが、アンが私に敵意むき出しのように感じる。今日、初めて会って、会話すらしていないのに理解に苦しむ。


 彼女はニコラを優しい目で見つめている。そういうことかと思う。マチルダは、とても気まずそうである。しばらく、沈黙が続いている。


「あら、マチルダさん。お久しぶりですね」


「えぇ、ユリアさん」


「採寸ははかどっているかしら?」


「今来たところですの」


「あら、そうなの? ごゆっくりどうぞ」


「いえいえ、ユリアさんたちを待たせてしまっては、申し訳ないわ」


「なんか、私が急かしてしまっているみたい」


「そんなことは、ありませんわ。ユリアさん」


「あら、私の考えすぎだったみたい」


 私は二人の取り留めのない会話に背筋が凍る。それは、私だけが感知できる能力なのかも知れない。


 ニコラが手を強く握ってきた。私は、どうしたのだろうと、彼女を見ると片方の手でしゃがむように促している。


 私が彼女の動作に従うと耳元で囁く。彼女は嬉しそうに話してくれている。その内容はアンから聞いたことであった。


 それは、何時間も同じやり取りを繰り返しているとの言う事である。採寸に納得がいかないそうだ。何度も測り直させて、その度に罵声を浴びせているとのことである。


 彼女は自分の言うサイズに近づけたいらしい。それだと、店の者は着ることはできないと説得しているそうだ。彼女は決して譲らないそうだ。


 その揺るがない理由が彼女の行きつけの店では、そのサイズで新調しているというのだ。私は、ふと思う。見えない力が動いていることに。


 アンは、そのやり取りが面白かった。ここは王国唯一の舞踏会のドレスの専門店だそうである。他の店の者が彼女に気を遣い、採寸を勧めてきたが断ったというのだ。


 彼女は、しばらくすれば終わると思っていた。しかし、今では、そうしたことを深く後悔しているという。


 もう帰ろうとして、眠そうにしていた所に、私たちが現れたそうだ。朝会ったときから考えると、どの位経っているのだろう。


「ところで、ユリアさん。どうして、エリーザさんと御一緒いるのかしら?」


「たまたま、外で御一緒しまして、お誘いしましたの」


「あら、そうなんですね」


 ユリアの言っていることは、嘘ではないが人が悪いと思う。彼女はマチルダとの会話を楽しんでいる。マチルダは店の者との会話に戻る。


「何度も言っているけど、どういうことなの? あなた、私が嘘を言っているとでも、言うのかしら?」


「決して、そのようなことは、ありません。マチルダ様」


 彼女は、どうも納得がいかないようだ。それを見守っているとアンが私たちの所に歩いてくる。私は身構える。


 彼女は私たちの前で止まると、指を差している。その先を見ると私とニコラが手を握っているのが、お気に召さないようである。


 ニコラが手を握り返している。それが、アンの怒りに油を注いでしまったようだ。彼女は詠唱を始める。


 私は咄嗟にユリアとエリーザを見る。彼女たちは、マチルダたちのやり取りに夢中なご様子である。


 私は彼女の攻撃を受けても、恐らく何ともない。しかし、私の巻き添えをニコラが、受けてしまっては大変である。彼女は怒りのあまり、我を失っているようだ。


「ニコラ、アン様が、お話ししたがっているよ」


「そうなの? お兄ちゃん。もっとお話ししようと思っていたのに」


 私はアンを見るが、その表情は殺意に満ちている。手をつないだけで、この対応なら先程の抱きかかえは、それどころでは無かったのだろう。


 巡り合わせに感謝する。四令嬢総てに嫌われているなんて、光栄なことなのかも知れないと思う。

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