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四令嬢集結 使用人アンドゥーの憂鬱

 後ろに崩れ落ちそうになる。私は太股に感触を感じる。


「お兄ちゃん、倒れそうだよ」


 彼女は非力ではあるが、私を支えようとしてくれている。私は足下に力を入れ踏ん張る。


「だいじょうぶ?」


「問題ないよ、ニコラ」


「よかった」 


 彼女の心遣いに情けなくなる。彼女が、両腕を私に対してあげているので抱き上げる。


 彼女は無邪気に私に微笑みかけてくれている。私は罪悪感に苛まれる。


「ニコラは、何を見ていたんだい?」


「お兄ちゃん、お姉ちゃんが楽しそうにしているところだよ」


「お姉ちゃんって誰だい?」


「ひみつだよ」


「そうか、それは聞かないでおくね」


「うん」


 ユリアたちは入って左側で止まっている、私たちは扉の左側で止まる。早く採寸を終わらせてくれと思う。


 ユリアが私を見ているが、彼女の表情は口を慎めと言っている。彼女たちは、その場に止まって動く様子はない。


 彼女たちが動かない以上、私たちは、どうしようもない。店内には聞きたくもない声が響き渡っている。私は、今にも耳をふさぎたいが、それは恥ずかしくて出来ない。


「絶対違うわ。もう一度測りなおしなさいよ!」


 この発言と構図からどのようなことが起こっているか、容易に想像は付く。ユリアが早く声を掛けてくれないか待っている。いくら経っても、そうしてくれない。


「申し訳ありません」


 店主はマチルダに平謝りしている。このやり取りを何回したのだろう。気の毒である。


 アンはソファに座りながら足をばたつかせている。暇そうというより眠そうである。彼女は待たされているのだろうか。


 彼女と目が合ったが、逸らされたというよりニコラを見つめている。ニコラもそうしていたが、私を見て何か言いたそうである。


「どうしたんだい? ニコラ」


「あのね、アン様の所に行っても良い?」


 私はユリアを見るが、マチルダのやり取りを興味深げに見つめている。こちらを気にしてる様子は全くない。


「行っておいで。でも、ユリア様には気づかれないようにね」


 彼女はコクリと頷く。私は、ゆっくりと彼女を降ろすと小走りでアンの元へ行く。私はユリアを見るが気が付いてないようである。


 すると、アンの前に立ち止まる。アンはソファを手でポンと叩き座るように勧める。彼女はそうする。


 ニコラが彼女に話しかけると、アンは私なんかには決して見せたことのない優しい表情をお見せになっている。なぜか、複雑な心境になる。


 しばらくすると、彼女はニコラを膝の上に乗せ、優しく彼女の白金色の髪を慈しみ深く撫で始める。


 彼女はマチルダの相手をしている以外の店の者を、手で合図して呼び寄せている。その者は、ある者を彼女に手渡す。


 それは櫛である。彼女は嬉しそうにニコラの髪をといている。ニコラは、気恥ずかしそうであるが嬉しそうでもある。


 私は、それを目を細めてみていると、アンがそれに気づき冷たい目で見る。これで四令嬢すべてから露骨に嫌われていることを自覚する。


 私は思わず天井を見上げる。それでも、彼女たちの顔がそこに浮かぶ。私は心を痛めつけられているようだ。そっと目を閉じる。


 その影響なのか、ふらついてきたが目を開け踏みとどまる。私は、ふと右の方を見るとユリアと目が合う。彼女は、ゆっくりと視線を左へと移す。


 その視線の先には、互いに見つめ合って髪をといているアンとニコラがいる。私は恐る恐るユリアに目をやると、彼女の目は怒りに満ちあふれている。


 他人には平静を保っているように見えるかも知れないが、私には分かるのである。


 私は、その恐怖にあまり、腰を抜かしてしまい頭を壁に打ちつけた。冷たい八つの目が私に集まった。

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