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嘘とオテーヌ家

 私は気まずくて彼女たちの顔が見ることが出来ない。しかし、私は二人を心配させたくない。それなので、私は意を決して顔を上げる。


「アンドゥー、ユリア様って本当に綺麗な方ね。あのような方に、お仕え出来るなんて大変名誉なことね」


「そうかな? そうでもないような気もするけど」


「照れるのかい? アンドゥー」


 私は会話を続けながらも、周囲の視線を痛いほど感じている。私は二人がいなければ食堂をとっくに離れている。



 放課後、私は二人に誘われ一緒に帰る事となり校庭を歩いている。


「ユリア様ってお優しい方なのね」


「どういうこと?」


「アンドゥー、私たちと一緒に帰れるよう気を使ってくださったのよ」


「僕もそう思うよ」


 そんなことは有り得ないのだが、私はそのように思ってくれる優しい二人のことをさらに好きになる。彼女の気まぐれの結果として、そうなっただけであるとしか私は思えない。


 私たちが正門を出ると、男性が私たちに近づいてくる。


「すみません、もしかして、あなたがアンドゥーさんでしょうか?」


「はい、そうですが」


「あの、少し離れた所でお話したいのですが?」


「どうしてでしょう? どちら様でしょうか?」


「実は私はオテーヌ家の従者です」


 彼は二人に聞こえないよう耳元で囁く。私は話しかけられるような身に覚えが全くない。


――オテーヌ家?


 私は二人に迷惑がかかるといけないので、それに応じる。


「ごめん、二人とも少し待てるかな?」


「もちろんさ」

「もちろんよ」


 私は彼の後に続き、彼らから離れた所に移動する。すると、彼が振り返り立ち止まる。


「オテーヌ家の方が私に何用でしょうか?」


「実はマチルダ様が、お話があると」


「私はマチルダ様とは、お話したことはありません。友人を待たせているので、これで失礼します」


「お待ちください。ユリア様の事でして」


「どういう内容でしょうか?」


「それは私には分かりません。私は頼まれただけですので」


 私は思う悩むが気にかかるので了承することにする。


「わかりました」


 彼が言うには彼女は教室で待っているとのことである。すると、彼は足早に去って行く。


「二人ともごめん。急に屋敷に呼ばれて。一緒に帰れなくなってしまったんだ」


「でも、今の方はアンドゥーのこと知らないみたいだったけど?」


「……メリーチ家は使用人が多いからね。知らない人もいるんだよ」


「クリスティーナ。僕たちとは違うんだよ」


「そうなのね。ごめんなさい」


「本当に申し訳ない」


 私は深く頭を下げる。私は嘘をついてしまった事と、彼らの私への気遣いに心が痛む。


「じゃあ明日仕切り直しね」

「そうだね。じゃあ、また明日」


 私は二人の姿が見えなくなるまで、手を振って見送る。そうするうちに、私は胸が熱くなっている。それはマチルダに対する憤りなのだろうか、自分に対するものなのか自問自答する。そして、私は指定された場所へ向かう。

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