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緊迫と意外な訪問者 ユリア・メリーチ

 周りの様子をうかがうと、皆が同じ方向に顔を向けている。そこを見てみると思いもかけない人物がいる。


――ユリアだ。どうしたんだ?


 こんな事は、あり得ないことだ。本館には豪華な食堂があるし、上級科の生徒は、下級科生を非常に見下している。マチルダは、それが顕著である上級科生だ。彼女は、こんなことを言っていた。


 私の屋敷に比べたら、あんなの小屋よ。どうしても、近くを通るときは息を止めてるわ。さぞかし臭いんでしょうね。制服に臭いが染みつくんでしょ。私なら使用人にすぐ替えの制服をもってこさせるわ。まぁ、立ち入ることは一生無いけど等だ。


 別館に入ることは、どんな噂を立てられるか分からないのだ。場合によっては、下級科同様の扱いを受けるかもしれないとも限らない。ここに絶対に立ち入ってはいけない。それが上級科の共通ルールである。


 彼女は辺りを見回している。一体何をしに来たんだろうと私は思う。彼女は、こんな所に用なんか無いはずである。私は彼女と目が合ったような気がする。それなので、私は咄嗟に顔を背けうつむく。早く帰ってくれないだろうかと、そればかりを私は願っている。


 私はローレンスに肩を叩かれる。彼女が去って行ったのだろうかと、私は彼の方を見る。彼は前方を指さしている。ゆっくりと私は顔を上げてる。


 彼女が立っているので、私は反射的に立ち上がる。


「どうなされましたか? 何か御用でしょうか? ユリア様」


「えぇ、ちょっと急用があって」


「急用とは何でしょうか?」


「何だったかしらね。今思い出すので待ってもらえるかしら?」


「はい、もちろんです」


「もしかして、こちらの方が友人のローレンスさんかしら?」


「はい、そうです」


 ローレンスは立ち上がり、彼女に丁寧な挨拶する。彼は少し緊張している様子である。


「よろしくお願いしますね。アンドゥー、こちらの女性は誰か紹介してくれないのかしら?」


「はい、こちらはクリスティーナさんです」


「初めましてクリスティーナさん。ちなみに学科はどちらかしら?」


 彼女は立ち上がるが、彼女も緊張が見てとれる。


「初めまして、ユリア様。私はクリスティーナと申します。学科は魔法科です」


「そうなの。アンドゥーのお知り合いなら、様は付けなくても宜しいわよ」


「いいえ、とんでもありません」


 ユリアの視線が自分の胸元に向けられている。私は咄嗟に手をやるが、手遅れのようである。


「あら、アンドゥー素敵なペンダントだこと。以前から掛けてたかしら?」


「ユリア様、これは僕たちが彼に贈った物です。昨日は彼の誕生日でしたので」


「あら、誕生日だったの? アンドゥー。私も何かを贈くらなくてはいけないのかしら?」


「ユリア様、滅相もございません」


「あら、私からは不要なのね。アンドゥ-、もう迎えは結構よ。それでは皆さんごきげんよう」


 彼女が出て行く。今までの張りつめた空気から皆が開放される。私は帰った時のことを思うと気分が重くなる。

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