苛立つ令嬢 ユリア・メリーチ
私が屋敷に着くと、門でヨハンさんが私を待っている。すぐにユリアのところへ向かうよう言わたので急いで向かう。私は彼女の制止を無視したので、気が気でない。
「ただいま戻りました」
「楽しんできたかしら。私は待つよう言ったわよね! どうして無視したのかしらね?」
「時間が迫っていたものですから。お話したと思いますが」
「少しくらい待っていても、よかったんじゃないかしら? ところで、お友達のお名前は何というのかしら?」
「ローレンスと……です」
「今、と、言ったけど聞き違いかしら。お友達は本当に一人なの?」
「えぇ、はい」
「まぁ、あなたは嘘をつける人間ではないわね。それでは始めるわよ」
クリスティーナの名を出すのを私は直感的に躊躇ってしまった。その後、彼女は百発以上今朝と同じ威力の魔法を打ち込んでくるが、私の体は魔法を全てを打ち消す。本来なら夕食時まで続くレッスンなのだが、彼女は打ち切る。
「アナタは一体何をしたのよ。あんなに昨日まで効いていたのに絶対おかしいわ。あなた、こっそりと魔法でも習ってるんじゃないでしょうね?」
「そんなこと致していません。本当に分からないんです」
「そうっ。もう今日は、これで終わりましょう。明日の朝、来なさい」
彼女は大変苛立っている。彼女が眉間にシワをよせる表情なんて、一度も私は見たことはない。彼女は、いつも顔色を変えず常に余裕のある表情をしている。
結局、朝も結果は同じだった。私は彼女を門で待っていると、守衛兵に彼女が先に学院に向かったと告げられた。
昼食時間である。いつものように三人で、私は食堂で会話を交えながら食事を楽しんでいる。周り生徒たちも各々そうしている。
「昨日は本当にありがとう。興奮してなかなか寝付けなかったよ。寝付くまで、このペンダントを眺めていたよ」
「それは良かったよ。寝不足は大丈夫かい?」
「それが、とても快調だよ。眠りが深かったのかな? 目覚めも良かったよ」
「喜んでもらえて良かったわ。もし、それで寝不足になったなんて聞いたら、なんか複雑な気持ちになるわよね? ローレンス」
「たとえ寝不足になっても構わないさ。喜びで寝られないんだからね」
「もう、アンドゥーったら」
「僕たちを心配させないでくれよ」
私たちは互いの顔を見合わせながら笑い合う。私は服の中のペンダントを出して二人に見せる。
「二人の予定が許すのであれば、また今度一緒にどうかな?」
「もちろんさ」
「喜んで」
今までの雑音が嘘のように、急に周りが静かになる。私たちは、どうしたのかと顔を見合わせる。