四令嬢の想いとあの少女
順位戦以来、ユリアは羨望の眼差しで見つめられている。元々そういう目で見られていたのであるが、それが顕著になっている。
どうでもいい話ではあるが、マチルダは一ヵ月の出席停止処分を受けている。あの現場を目撃した多数の生徒から報告が上がったようである。
それだけなら、もみ消すことが出来たそうなのだけれど学院に通う子女の保護者からも数十件報告が上がったそうである。
決定打となったのは、観覧に来られていた大臣の奥様の存在である。彼女はユリアの叔母である。学院に乗り込んできて、何らかの処分がなされるべきであると激しく抗議したそうである。
当初、学院長は不処分を決め込んでいたが、これでは自分の地位が危ういと判断したらしい。それで落とし所として、この処分がなされたそうである。
私は尚一層彼女に目の敵にされると思い、気が滅入っている。本来なら、即刻学院を除籍処分であってもおかしくないという。
実際に謹慎中にもかかわらずマチルダは嫌がらせをしている。毎朝その趣味の悪い赤い馬車を毎日正門前に停めているのである。そして、私を睨みつけて去って行く。
何故か、その後にエリーザの馬車が来る。そして、彼女は私をこっそり確認し正門に入っていく。
アンは私の事など眼中にない。クリスティーナを見つけると馬車を止め窓を開け彼女を見つめている。
ユリアは、あの日から口さえ聞いてくれない。彼女のような高貴な者を抱きかかえた事について、彼女は無礼だと思っているのだろう。彼女に最大の敬意を払ってしたつもりでいる。
何故か、私は彼女たちの気に障る存在のようである。
朝、屋敷の門を出て学院に向かおうとしている。すると、衛兵が一人飛び出していく。
彼を見ていると何者かが、こちらに近づいてくるのを制しているようである。彼の体に隠れてその姿は確認することは出来ない。
その者が彼の腰元あたりから顔を覗かせる。
「お兄ちゃん」
叫んでいるので周りを見回してみるが、それらしき人を確認することはできない。私のほうを指さしている。
近づきその顔をじっくり見てみる。
それは使用人宿舎にいたあの少女である。彼女は泣き出してしまっている。
「どうしたのかしら?}
ユリアが馬車の窓を開け少女を見ている。目撃していた衛兵の一人が従者に報告し、彼が彼女に伝えている。
「事情は分かりました。放してあげなさい」
衛兵がそうすると少女は私の腰にしがみついてきた。私は、ゆっくりユリアのほうを見る。
「アンドゥー! これは一体どういうことなの? 説明しなさい!」
屋敷に入っていたとは口が裂けても言えないので、街で道案内をしてもらったと説明する。
「ローレンスさんとの関係といい、この子といい一体あなたが、どういう人間か分からなくなりそうよ。行くわよ! アンドゥー」
彼女は軽蔑するような目で見つめている。私は少女の肩に手をやり話しかける。
「お兄ちゃん、私の名前はニコラよ」
「分かったよ、覚えておくね。ごめんね、お家へ帰れるかい? 送っていくかい?」
彼女は首を振りと、悲しそうな目をして去って行く。私は力になってあげたいが、使用人である私には何も出来ない。私は無力さを痛感し、足取りが重くなっている。
私は帰りにユリアを迎えに行き、屋敷の門までもう少しという所まで来ている。すると、あの少女が壁に凭れ掛かり膝を抱え座っている。
彼女は悲しげに私を見つめているが、近寄って来ようとはしない。思わず私が彼女に駆けよると、彼女が泣き出す。私は屈んで彼女の事情を聞くことにする。
「アンドゥ-! あなた、この子に一体何をしたのよ?」
ユリアが衛兵に守られながら、私を冷たい目で見下ろしている。私は、しどろもどろになりながら何もしていないと言う。私は、これから事情を聞こうと思っていると説明する。
彼女が、ここでは人の目に付くので衛兵に少女を屋敷に連れて行くように命令する。少女は泣きわめいて抵抗する。ユリアは、それを諦めて私に命じる。
すると、少女は私の手を握り微笑みかけてくる。ユリアは腕を組み地面につま先を打ちつけている。私は彼女に呼ばれたときに一緒に事情を聞くことになった。
私は少女に部屋で待つように告げ、仕事に取り掛かろうとするが身が入りそうにない。すると、執事長よりユリアの部屋に来るようにと連絡が入る。




