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理不尽令嬢マチルダとローレンスの勘違い

 中級科の試合は始まっている。淡々と試合は行われていて決勝戦を残すのみである。


 観客は試合の始まりと終わりに拍手するといった感じである。時折、試合に出てる選手の友人が声援を送ったりしている。


 決勝戦の開始が合図される。多少の盛り上がりを見せてるといったところであろうか。ユリアたちの試合を見せられては、そうなってしまうのも致し方ないのかもしれない。


 試合はというと、なかなか白熱している。一進一退の攻防が繰り広げられている。しかし、最終的には優勝候補最有力と目されていた選手が押し切り勝利を収めた。


 観客からは決勝戦を戦った二人とその勝利を讃え、盛大な拍手が送られている。そのまま表彰式に移る。上級科のときは行われなかった。二人も負傷者が出たのだから当然ではある。


 それが終了すると委員会より昼食休憩が告げられる。ローレンスと食堂に向かうことにする。


 本日は大会ということあり本館の食堂が一般開放されている。しかし、それは下級科以外の関係者ということを意味している。それなので私たちには関係のないことである。


 そこへ向かう途中、十数人の武装していない兵士が前方から歩いてくる。大臣の護衛の者かと思っていたが、彼らが通過すると生徒達が声を押し殺し笑っている。


 彼らが横を通過しようとしている。気になって見てみると、その中心にはマチルダがいる。彼女と目が合うと睨みつけてくる。


 すると、近づいてきて私だけ取り囲まれた。ローレンスをみると困った表情を浮かべているの。先に食堂へ行くように伝える。


 大丈夫かいと声を掛けくれる。さすがに学院内では手荒なことは出来ないだろう。私は頷く。食堂で待ってると去って行く。兵士達が周りの生徒を遠ざけている。


「アナタ今笑ったでしょ? なんとか言いなさいよ」


 ため息が漏れそうになる。今回は笑ったつもりはない。完全に周りの者に笑われている怒りの矛先が、私に向かっている。何と返せばいいのかを考えている。やられ放しは納得できない。


「笑ってませんマチルダ様。試合残念でしたね」


 パシッという音がする。あとから痛みがやってくる。頬をぶたれたのである。何が何だか意味が分からない。彼女をみると手を振り上げもう一度ぶとうとしている。慌てて兵士が止めに入る。


 嫌みをこめて言ったのは否定はしないが、ぶたれるとは夢にも思わなかった。ユリアに失神されたのと観衆の笑い者になったのが、受け入れ切れていないのだろう。


「アナタ、この間は確実に笑ってたわ」


 自分の行為を正当化したいのだろうか、問題をすり替えてきている。そういう所はユリアと似ている。これ以上言葉を発するのは危険であると判断する。


「どうしたの? 何か言いなさいよ」


 気まずい雰囲気が流れているが沈黙を続けている。彼女の目は泳いでいる。


 それは、どうして私のような高貴な者の問いに答えないのか、それともその行為をしたことを反省しているのであろうか。後者はないかと思い、吹き出しそうになったが我慢した。もう一発食らうのは御免だ。


「緊張してるのね。まぁ、いいわ。でも覚えておきなさいよ」


 すると、彼女は足早に去っていく。慌てて兵士たちが彼女を取り囲む。正直、何を覚えておけばいいのか、さっぱり分からない。


 急いで食堂へと向かう。その途中でエリーザが一人寂しそうに歩いているのを見かける。


 私に気が付くと駆けだして行く。相当嫌われているようである。マチルダと普段は仲よさげに行動を共にしているのに、珍しいこともあるものだ。


 食堂に着く。


「ごめん、遅くなってしまって。もう食事は済んだのかい?」


「いや、まだだよ。君がくるまで我慢していたよ」


「すまない、ローレンス」


「なんで謝るんだい。食事は親友といただいたほうが美味しいと思わないかい?」


「その通りだね。ありがとう」


「ところで、アンドゥー。その左の頬どうしたんだい? 赤くなってるけど」


 見て分かるほど赤くなってるとは思いもしていなかった。彼に心配をかけてはいけない。どう言うべきか考えている。ここは冗談でも言って笑わせてあげようと思う。


「実はね、ローレンス。ここに来るときに、ある女性に一目惚れしてしまったんだよ。それで頬が赤くなってるんじゃないかな」


 彼の表情は、驚いているというか、冷めているのか読み取れない感じである。


「へぇ、そうなんだ。僕はてっきり、君はクリスティーナのことを気に入ってると思っていたよ。意外だな」


 その言葉に体中が熱くなり、目をそらせてしまう。しばらく沈黙が続いている。


「アンドゥー、右頬も赤くなっているよ」


「からかわないでくれよ、ローレンス」


「違っていたのなら申し訳ない」


 私は何も言い返さないことにする。そんなこと一度も考えた事などなかった。かなり頭が混乱している。話題を変えてみることにする。


「クリスティーナは、どうだと思うかい? ローレンス」


 彼は、なぜか笑っている。どうしてだろうと思う。


「とても素敵な女性だと思うよ」


 私はそのような答えになる質問はしていない。


「いやぁ、ローレンス。試合のことなんだけど?」


「すまない、どうやら勘違いしてしまったようだ。もちろん全力を尽くして優勝してほしいさ」


「あぁぁ、うん。僕もそう思うよ」


 なんとなく気まずい雰囲気のまま会話と食事を進めていく。

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