成長と可愛い侵入者
あれから、マチルダは送迎の時に顔を見せなくなった。ユリアに聞いてみたが、知らないというばかりだ。あの日の翌日からレッスンは通常通り行われている。
ヨハンさんとの特訓は、心を入れ替え弱音は見せないよう心掛けている。それを感じ取ったのだろうか、彼の指導には熱がこもっている。限界を超えるまで、私は決して諦めず食らいついている。それで、私は彼の動きを冷静に見てとれる様になった。
しかし、彼には未だ歯が立たない。私には、それを悔しいという感情が芽生えてきている。もう少しで届きそうなのに、あと一振りが届かない。それがヨハンさんとの実力差だというのを実感させられている。
彼の口調は、普段と変わらなくなっている。彼は懇切丁寧に指導してくれている。そのかいもあって、ユリアの攻撃を見切れるようになった。
ダンスレッスンの時に私の覚えが悪い場合、彼女は剣術に切り替え攻撃して来るのである。彼女の無茶にも、付いてこれるようになった。
想像の中では、彼女に何度か攻撃を当てれるようになった。実際そうなったかは分からないけど、確実に成長している。
休日の今日は屋敷の巡回を行っている。というのも、大臣の息子の結婚式があるということで、ユリアたちは、それに参加している。
使用人の大半もそれに同行しており、警護兵も必要最低限だけ屋敷に残して任務に向かった。ヨハンさんも警備で同行して行った。口うるさいメイド長と執事長が、不在なので羽が伸ばせる。
改めて思うが、この屋敷は広大だ。歩き疲れた私は、足が痛くなってきている。宿舎に戻り桶に水をため冷やしている。ひんやして気持ちが良い。しばらく、そうすることにする。
朝作り置きした料理を食べに行こうかと考えたが、ひと眠りすることにする。体は嘘をつけないようだ。本来なら今頃クリスティーナの家に招待され、三人で楽しい時間過ごしているはずだった。その事を想像しながら眠りにつくことにする。
どれくらい経ったであろうが、目覚めはよい。時計を確認してみたが、そんなに時間は経っていない。
ドンという音がする。厨房の方からだろうかと思う。宿舎には、自分以外いないはずなので驚く。侵入者だろうか、もしかしてあの仮面の手先の者かもと緊張が走る。近くに置いてあるヨハンさんから貰った短剣を手に取り、私はベットから降りて立ち上がる。
私は足音を立てないように部屋から出ると、慎重に厨房へと向かう。その前まで来ると、ゆっくり扉のノブを回し少し開く。私は中を窺うが、人らしきものは確認できない。
気のせいだたのだろうか、物が落ちた音だったのかもしれないと考え始めている。しかし、私は油断は禁物だとヨハンさんから、口酸っぱく言われている。
恐る恐る中へ入り、辺りを見回すが確認できない。テーブルと炊事場の間に差し掛かった時、思いもかけない光景を私は目の当たりにしている。
少女が倒れているである。あまりのことに私は、その場で固まってしまう。気を取り直して、彼女を観察して見ることにする。彼女は武器になるような物は持っていないようだし、怪我をしてる様子もない。
意を決した私は、彼女の肩を揺すってみる。すると、彼女は目を見開く。彼女は、ひどく怯え後ずさりしている。その視線を追う。それが自分の短剣に向けられているのに気く。私は、それを腰にしまう。
彼女を落ち着かせ事情を聞いてみる。彼女が言うには、家に居るのが嫌になり出て来たそうだ。そこまでは良かったが、道に迷ってしまったらしい。歩き続けていたら、この屋敷の門が少し開いていたので入ってきたという。
私は、そんなことはあり得ないと思う。それは門には守衛兵がいる。そのことを問いただすと、いなかったと言う。私には到底信じられないが、そうでもないと進入は不可能である。
それで、彼女は門から一番近くにある使用人宿舎に入り、厨房で食べ物をみつけたので食べたそうである。いつのまにか眠ってしまったと言うのだ。テーブルの上を見ると、取っておいた料理の皿が空になっている。
私は彼女が言う事を信じることにした。それなので、私は今後の事を考えている。
ご主人様が帰ってるのを待ち、この事を報告すれば彼女は確実に何らかの処分されるのは間違いないだろうと考える。その場合、私が考える最悪の処分が下される事も予想されるのだ。侵入を許した守衛兵は、確実にそうだろうと判断できる。
考えた末に私は、彼女を逃がしてあげることにする。この事が露見すれば、私も只では済まされないことは承知している。私が彼女に二度としないよう注意すると、彼女は涙を浮かべながら頷いている。
私は慎重に周囲を確認しながら門へと向かう。私は門を確認する。すると、守衛兵は詰め所でうたた寝している。木陰に隠れている彼女に、私は手招きをして門から外に出してあげる。私は、意図的に大きな声で彼に声を掛ける。そうすると、彼は驚いて目を覚ます。
すると、彼は慌てて外に出る。そして、彼は門の前に位置取り通常任務につく。私は彼に少し出てくると告げ出かける。
私は、彼女に来た方角を聞いている。彼女の微かな記憶を元に歩いていくと、見慣れた場所に着いたそうだ。彼女が此所で大丈夫だと言うので、私は別れを告げる。私は彼女の小さな背中を見つめている。




