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1 帝国

 ネーミングについては、極力、普通にあるような名前。そして、既存の名前を援用いたしました。


歴史が好きな方。

そして、宗教、哲学・思想にも興味を持っておられる方に読んでいただければ、と思います。

主要な登場人物のかっこよさ。

そして、彼らの台詞のやり取りには、かなりの意を注ぎました。

 帝国 ホアキンは平和を謳歌していた。 都市国家として誕生して以来、八百年の歴史を誇るホアキンにあって草原地帯を除いた全世界がその版図となったのは約三百年前。その時点で対外戦争が行われることは無くなったわけだが、帝位をめぐる争い、あるいは内乱の類はその後もしばしば発生した。

 が、近年は百年近くにわたり大きな争いは起こらなかった。


 現在、ホアキンは第五十二代皇帝オットー・キージンガーが統治していた。八年前に即位したオットー・キージンガーは現在三十二歳。容姿端麗、性格も温厚であり政務においては賢帝との評価も高かった。

 帝国には何の憂いも存在していないかのようであった。

 しかし、何の憂いもない世界などはない。 皇帝オットーにも、その内面に憂いは存在した。

 ひとつは執政オビディウスを当主とするローザン一族の存在である。

 ローザン一族。帝国の要職はほぼこの一族により占められていた。

 またここ数代の皇后は全てこの一族の出身者であった。

 千年近くにわたり続く皇帝の血脈。ホアキンの草創期において何度か父系直系の血が絶えたことはあったが、いずれにしても皇統は連綿と続き、ホアキン統合の中心としての位置がゆるぐことはない。

 いかに内乱がおきようとも、この皇帝の血脈に縁のない者が帝位を簒奪したことはなかった。帝国の民にとって望みうる最高の地位は俗人としてはあくまでも臣下としての地位であった。

 ゆえにオットー・キージンガーにとって、その帝位が侵される心配は微塵もない。ローザン一族もふくめて、臣下はオットーに対して最高の礼を尽くす。

 が、帝国の実際的権力はローザン一族が保持していたのである。


 もうひとつは、皇后シモネッタのことである。二人はオットー・キージンガーがニ十一歳、シモネッタがニ十歳の時に夫婦となった。

 オットーはこの時、皇太子であった。

 シモネッタは、極めて美しい容姿を持っており、ふたりの結婚の際は、帝国は官民をあげて熱狂した。


 結婚して十一年が経過し、その間、ふたりは、皇帝、皇后となったが、オットー、シモネッタ。この夫妻は不仲であり、普段、会話を交わすこともほとんど無い。


 歳月が重ねられていく中、シモネッタも、三十一歳となった。

 その美しさは、今や絶頂と言うべき時期を迎えていた。

 しかし、オットーとの仲はそのままであった。


 シュアンは皇帝オットーの子を産んだ唯一の女性であり、今に至るも唯一の寵姫であった。

 現在の帝国が抱える最大の問題は後継者に関することであった。既に六歳となったニキタであったが、皇子ではあっても皇太子とはなっていない。

 将来の皇帝としてみるには母親の出自が問題であった。

 ホアキンの歴史において、かくも低い身分の女性を母親とした皇帝は皆無であったし、さらに、ホアキン本来の民族とはあきらかに異なる東方の民族の女性を母とした皇帝は存在しなかった。

 それは最も尊い皇帝の血脈に他の民族の血が混じることであり、皇帝と同じ民族であるとの誇りをもつ原ホアキン民族にとって到底受け入れられることではなかった。

 美しき皇后シモネッタとの間に皇子が誕生することが臣下あげての願いであったが、それがかなわなければ、せめて帝国の貴族階級の娘を妾として子をなすべく何度か皇帝に対して諫言がなされた。しかし、皇帝は肯んじなかった。


 一億八千万人といわれる帝国の全人口の中で、貴族及び高位聖職者階級の占める割合は0.5パーセントにすぎない。

 その下に騎士階級(かつてはその言葉通り帝国の軍事をになう人々であった。今も伝統的に軍人を職業として選択することが多いが、そう決められている訳ではない。今では貴族と、一般民の間に位置する階級としての意味をもつ)が二~三パーセント存在する。 八割近くは一般民であり、その下に奴隷階級が約二割存在する。


(以下の3行は削除します。以降に矛盾する記述が出てきますので

2018.9.23 作者)

 奴隷階級はその主人の所有物であり、売買の対象ともなる。職業の選択権、居住場所の選択権はないが、通常は家庭を営むことは許される。

(以上、削除)


 ヴァン・トゥルクは二十四歳。帝国参政官の地位にあった。

 トゥルクは貴族ではない。一般民の出身である。

 帝国においては一般民の生まれであっても帝国枢要の地位につくことは決して不可能なことではない。

 貴族、騎士、一般民という身分は厳に存在するし、生活の場においては上位階級に対して敬意を表しなければならない。

 しかし、公務の上で一般民が貴族、騎士の上の地位となる場合はありえたし、公務においては下位の階級の者が上司となった場合は貴族といえどもその命には服さなければならなかった。

 むろん、貴族、騎士は幼少時代から教育環境には恵まれていたから、一般民が帝国枢要の地位につくことは並大抵のことではなかったが、可能性はあったのだ。


 遺した功績が顕著であれば騎士が貴族に、一般民が騎士身分に叙せられることもありえた(多くはその一代限りの栄誉であったが)


 一般民が帝国枢要の地位につくことを志せば、その方法は三つあった。聖職者となるか、軍人となるか、官僚になるかである。

 いずれもその最高位、及び最高に近い地位はほぼ貴族によって占められていたが、そのような地位に一般民がつくことは稀ではあっても皆無ではなかった。

 逆に貴族も、単に貴族というだけで、帝国職階表に記されるような枢要の地位に就くことができる訳ではない。ある程度の能力を示さなければ、実権を伴わない名誉職につくことができるだけであった。


 優秀な頭脳に恵まれていれば、毎年春に行われる高等官任用試験に合格することが出世のためには最も近道であった。

 これは一般民のために行われている試験であり、合格者は将来、概ねかなりの地位まで昇進することになる。

 従って帝国全土の秀才がこの試験の合格を目指すことになる訳だが、首都ホアキンで行われる最終試験を受験するには、先ず各地方で行われる選抜試験に合格する必要があった。

 そして、最終試験の合格者定員は毎年十名と決まっており、極めて狭き門であった。


 受験に対しては、年齢は上限は四十歳であったが、下限はなかった。

 とはいえ、合格するためには学識だけではなく、人格も問われた。(各地方の試験の中で、その人物全体に対する周囲の評価も合否を決める対象となった)

 また、後述する不文律もあり、十代で合格することは不可能であった。

 トゥルクはこの高等官任用試験に二十歳で合格した。

 それはこの制度が、ほぼ現在の形に整えられた百三十年あまり前からの記録によれば史上六番目の若さであった。

 ただ、過去十代で合格した三名のその後は、ひとりは二十代前半で精神を病み、ひとりは二十歳になる前に自裁し、そしてもうひとりは長命ではあったが、年齢を重ねるにつれかつての神童ぶりはいずこへいってしまったのか、特に際だった功績を遺すこともなく、高等官任用試験の合格者としては生涯、平凡な地位にとどまった。


 このような過去の経緯により、以後は十代のうちには合格はさせない、という不文律ができていた。

 ゆえにトゥルクは誕生日と試験日を考慮に入れれば、望みうる最少の年齢で合格したことになる。

 合格の際は帝国において大きな話題となった。それから四年、際だった功績をあげるということはなかったが、これは帝国の政情が安定しておりそのような大きな功績をあげること自体が不可能であることによるものであり、二十歳の合格者として周囲から寄せられる厳しい目にも、決して恥ずかしくはない能力を示し続けた。

 トゥルクは通常三十歳未満では任じられることはない帝国参政官に二十二歳にして任じられた。このことによりヴァン・トゥルクの名前は帝国職階表に記されることとなった。

 

 トゥルクが二十歳で高等官任用試験に合格して大きな話題になった翌年、帝国に英雄が誕生した。毎年夏に行われる帝国騎士剣技会において二十歳の若者が優勝したのだ。

 優勝者の名前はチャン・ターイー。

 帝国騎士剣技会の歴史は古い。伝説的なものを含めれば六百年以上前から開始されていたことは間違いない。

 三百五十年前からは優勝者の名前もきちんと記録に残っている。

 記録に残っている限りにおいてチャン・ターイーは史上二番目に若い優勝者であった。


 なしとげた事柄により、チャン・ターイーのことが帝国の民の話題となる量は、前年のトゥルクとは比較の対象にはならなかった。 帝国全土がこの英雄の誕生に沸き立った。


 実際の戦争が行われなくなって長い時間が経過した帝国においては帝国騎士剣技会の優勝者こそが最大の英雄であったわけであり、その剣技会に二十歳の若者が優勝したとなれば、人々が熱狂するのも無理はなかったのである。

 今に至るまで、チャン・ターイーは帝国剣技会に勝ち続けている。優勝者に与えられる杯を、チャン・ターイーは既に四個保持していた。

 騎士階級の出身であるチャン・ターイーは昨年、少将に叙された。帝国において最年少の将官である。

 過去においてはさらに若い将官も存在したが、全て貴族であった。騎士階級の出身者としては、チャン・ターイーは史上でも最年少であった。

 剣技において優れていたからといってそれだけで将官になれる訳ではない。

 チャン・ターイーは軍略においても多大な才能を示したのであった。


 少将に叙されると同時にチャン・ターイーは近衛師団第一連隊長を拝命した。 

 

 ヴァン・トゥルクとチャン・ターイーは、チャン・ターイーが最初に剣技会で優勝した二ヶ月後に初めて相知った。

 話題の二人を招待するという主旨で開かれた、帝国の政務上の最高職である執政オビディウス・ローザン公爵主催のパーティーの席上であった。


 事の大小はともあれ、ともに帝国において大きな話題になったという共通点をもつことによったのか、ふたりは意気投合した。

 その後も親交を深め、今では肝胆相照らす仲となっていた。



 帝国首都ホアキンの中心を占めるのは広大な皇宮である。

 その皇宮の外縁部に元老院、参政院、各省庁など、帝国の政治的建造物がたちならぶ。

 その中には軍務省、帝国首都に駐屯する第一師団もあった。

 近衛師団は皇宮内に置かれていた。


 政治的建造物がたちならぶ地域からほど近い場所に帝国高官の官舎があった。

 官舎といってもひとつひとつゆったりとした敷地をもち、建物もやはり広く堅牢であった。

 ヴァン・トゥルクとチャン・ターイーの官舎は隣り合っていた。

 ともに独身であったから、従者も同じ建物内に居住していたとはいえ、建物の広さをいささか持て余していた。

 ふたりは公務の合間をぬっては、お互いの官舎を訪問しあい、談論することがしばしばであった。

 話題は概ね、帝国の現状、将来の展望に関することであった。


 今日はヴァン・トゥルクがチャン・ターイーの官舎を訪れていた。いつものようにチャン・ターイーの書斎に入った。

 チャン・ターイーの執事ロイが飲み物をもってきた。

 二人とも酒は嗜まない。

 チャン・ターイーは東方茶を、ヴァン・トゥルクはコーヒーを好む。

 ロイは慣れた手つきでソファに座して向かい合う二人の間の応接机にそれぞれが好む飲み物を置いた。

 ヴァン・トゥルクは早々にカップを取り上げ口をつけた。


「うーん、今日のコーヒーも最高だね。さすがにホラビア地方の豆は違う。ありがとうロイ」


「いえ、本日はブラール産の豆でございます」


「あ、そう」


ロイは恭しく礼をすると書斎を出ていった。


ロイは思う。

ヴァン・トゥルク様は一般民の出身であるとはいえ、ターイー様のご友人として申し分のないお方だが、ものの味がお判りにならないのが欠点だ。それでいてああやってすぐに当てようとする。当たった試しがないのだからおやめになればいいのに。


「陛下はいよいよニキタ殿下を立太子なされるご決意を固められたようだ。昨日、近衛師団長から内密にということで俺に話があった。近衛師団としては不測の事態も想定して備えておく必要があるからな。むろんお前以外にこのことを誰にも言うつもりはない。言うまでもないが他言無用だ」

チャン・ターイーが話の口火を切った。


「そうか」


「これでいよいよ皇統に東方民族の血がはいることになる」


「そうと決まった訳でもあるまい。一旦皇太子となられた皇子がその後取り消され、別の皇子が皇太子となられたことは帝国の歴史において皆無ではない」


「では、いったいどの方が皇太子になられるというのだ。陛下には、お子はニキタ皇子しかいない。」


「それはそうだが」


「あれほどにお美しい皇后陛下がおられながら、なぜ、あの東方民族の女性を愛されるのか俺にはわからん。もっとも近年の皇后陛下の行状を見れば、おそれながら元々皇后としてふさわしい方ではなかったようだが」


 帝国臣民としては珍しく、チャン・ターイーは夫も妻も配偶者に対して貞淑であるべき、

 さらに言えば、性的交渉は男女とも生涯たったひとりの相手ともつべきであるという信条の持ち主であった。

 ヴァン・トゥルクは常々


「それではお前は誰とも結婚できないぞ」

とチャン・ターイーをからかっている。



「一五歳を過ぎて男を知らない娘を見つけるのは、砂の中から砂金を見つけるようなもの」


これが人口に膾炙した帝国における俚諺であった。

だからヴァン・トゥルクはチャン・ターイーに対して


「どこかの見目麗しい幼女をさらってきて妻とするべく養育してみるか」


などときわどい冗談も飛ばしていた。

が、残念ながらチャン・ターイーには幼女を愛する趣味はなかった。

したがって、


「誰とも結婚できないぞ」


というヴァン・トゥルクの言葉はチャン・ターイーがおのれの信条を変えない限り、けっして冗談、といってすませられる言葉ではなかったのだ。


 チャン・ターイーは今も帝国における最大の英雄である。

 最初に優勝してから一、二年の間は若い娘からのファンレター、さらにファンレターの域を超えた求愛の手紙はひきもきらなかった。

だが、その手紙は、当時チャン・ターイーはまだ両親の家に住んでいたが、その家で飼っていた山羊の餌になるだけであった。 

 やがてチャン・ターイーの信条が世間に知れ渡ると若い娘からの手紙はほとんど来なくなった。

 仮にまだ男性経験がなく、チャン・ターイーの妻となる資格のある娘がいたとしても、相手がいかに帝国最大の英雄であっても、将来、当然愉しんでしかるべき多くの男性との恋愛ができない、となれば人生を愉しむことに貪欲な帝国の民として生を受けた女性にとってはその損得勘定は明らかであった。


「最近は男からしかファンレターは来なくなったな。たまに女性名前の手紙がきたと思ったら、みんな十歳以下だ」


 約二年前からチャン・ターイーはこう言ってヴァン・トゥルクによくこぼした。

 しかしその顔は決して悪びれたものではなかった。

 自分に、若い娘から手紙が来なくなった(幼い娘は除く)ということが判ってからは、チャン・ターイーは来た手紙にはすべて目を通し、返事を出した(もっとも返事はロイの代筆であった)。

チャン・ターイーの信条は、風変わりなものではあっても、人々から悪意をもたれるようなものではない。帝国の民にとって、チャン・ターイーはやはり愛すべき英雄であった。

 人々は彼のことをこう呼んだ。

童貞将軍と。


「俺の前で皇后陛下の悪口を言うのはやめてくれ」


「おっと、またやってしまったか。すまんすまん」


「俺はな、十四歳の時に初めて皇后陛下を拝見した時から、いつかこの方に間近にお会いしたいと志をたてたのだ。その一念で死ぬほど勉強したよ。おかげで二十歳で任用試験に受かっちまった」


 ヴァン・トゥルクが初めてシモネッタを見たのはヴァン・トゥルクが育った町で行われた神殿の修復完成式に皇太子オットー・キージンガーとともに出席した時であった。

 その時シモネッタは結婚した翌年、芳紀まさに二十一歳であった。


「その話を聴くのは二十七回目だ」


「近い内に二十八回目を聴かせてやるよ。今でもいいぞ」



「このまま、あっさりとニキタ殿下の立太子が受け入れられるとも思えないのだ」


「お前はさっき、ニキタ殿下以外に陛下にお子さまはおられないと言ったと思うがな。だがかくも長期にわたって皇太子が決定しない、ということも異例なことだぞ。陛下におひとりも皇子がおられなければ、必然的にニコラス大公殿下が次の皇帝ということになられるが、まがりなりにもニキタ殿下という方がおられる以上、万一の皇帝陛下ご不予の際に備えて、次期皇帝となるべき方を確定しておくのが帝国の慣例のはずだが」


「そのニコラス殿下を皇太弟として擁立しようとする動きがある」


「そうかやはりニコラス殿下か」


「そう、ここ七代帝位は父子継承が続いてきたが、さっきお前が言ったように皇帝が皇子がないままになくなられた場合、その弟君が帝位を継がれることは、かつてはままあったことだ。東方民族の血をひく皇子が皇帝となられることに比べればむしろその方が自然だろう。ニコラス殿下は陛下と同腹のお方だから、お母君の身分にも何ら問題はない」


「だれが中心となって擁立されようとしているんだ」


「オビディウス・ローザン公爵だ」


「オビディウス公か」  


オビディウス・ローザン。

ヴァン・トゥルクとチャン・ターイーが出会うきっかけを作った人物である。今もそのまま執政の座にある。


「となれば、それは容易ならざることだぞ。チャン・ターイー」


「うむ、オビディウス公が決心されたとなれば、むろんローザン一族はあげてオビディウス公を支持するだろう。その他勢力をもつ貴族、元老院、各省大臣、お前が所属する参政院、また聖職者、はたまた軍にもその支持の輪を広げようとするだろう。いや、あのオビディウス公のことだ。すでに相当に広げていると見るべきだろう」


「では内乱が起こる可能性もあるわけか」


「今の帝国には問題を武力で解決するという風潮はないからな。それは近代以前の考え方だ。だから、おそらくは平和的に妥協点を捜すことになるだろう。が、もし、陛下もオビディウス公も主張を変えないということになれば、武力が用いられることもありえるだろう」


「もし、そのようなことになれば、チャン・ターイー、お前はどうする」


「俺は近衛師団第一連隊長だ。陛下に忠誠を誓っている。迷うことはない」


 ヴァン・トゥルクは本音を言えば、陛下に折れていただきたかった。ニキタ殿下が皇太子となれば、それではあまりにも皇后陛下がお可哀想だ。

 チャン・ターイーには冗談めかして言っているがヴァン・トゥルクのシモネッタに対する思慕の念は純粋なものだった。 

ヴァン・トゥルクはシモネッタの幸福を願っていた。

ただ、だからといってヴァン・トゥルクが女性に無縁である、という訳ではない。シモネッタへの思いがあるだけに、誰か特定の女性にのめりこむことはなかったが、彼は、男女の仲に関する帝国の自由な気風を存分に満喫していた。

 彼は、これ、と思った女性とは全て思いを遂げていた。


「なぜ、いつもそんなにうまくいくのだ」


ある人にそう問われた彼はこう答えた。


「簡単なことだ。相手が一番言って欲しい言葉が何かをつかんで、その言葉を繰り返せばよい」 


だが、その彼も最も愛するシモネッタに対しては慎重だった。 

あと、一年か二年のうちに。ヴァン・トゥルクはシモネッタと愛を交わそうと考えていた。

先ずは劇的な出会いを演出せねば、と思い、その機会を窺っていた。


 オビディウス公がニコラス殿下の擁立を決めたのも、一族の娘シモネッタがオットーにないがしろにされたということも大きな要因になっているのであろう。 

ニコラス大公は二十七歳。

四年前に結婚して、既に公子、公女、のニ子をもうけている。

大公妃マリカは美人とはいえない。

が、オビディウス・ローザンその人の娘であった。シモネッタには又従妹にあたる。


「そうか、約一世紀ぶりにこの帝国に内乱が発生する可能性があるわけか」


「うむ、公人としては内乱が起こらないことを祈らねばならないが、私人としては、起きて欲しいと思わぬでもない。俺も帝国発展期の名だたる将軍たちのように戦ってみたい。これまで培ってきた軍略を実際の戦場で試したいと思う」


「そのようなことを軽々しく口に出すな。帝国軍人の役割はあくまでも戦いを未然に防ぐことであって、戦いを起こすことではない」


「むろん、判っている。お前以外に、俺の密かな望みを口に出したりはしない。いずれにしろ、今の俺にはまだ、事態を主導的に動かしていくような力はない。状勢の推移を見守るしかない。」


「うむ。それは俺も同じだ」  


 しばらく話はとぎれた。

ヴァン・トゥルクはロイがおいていったポットから、二杯目のコーヒーをカップに注いだ。


「ところで、ヴァン・トゥルク。帝国の現状を総括した年次報告書の草案はもう出来ているのか」 


「うむ、すでに内務省から参政院にまわってきている。二日前に読んだ」


「何か気になることはあったか」


「三つある」 


「ほう」  


「ひとつは前から言っているが、草原の状勢だ。今まで草原の状勢については、かの地には監視官もおらぬことだから、ほとんどふれられることはなかったが、今年度はある程度の頁がさかれていた」


「やはりお前が言うとおりになってきているのか」


「うむ、草原はついにふたつの勢力にまとまったと、今年度の報告書にはそう明記してあった。とはいえ、帝国で草原に最も近いノイエストの総督府が、草原に通う商人からの話を聞き取ったことを報告してきているにすぎぬようだが」


「お前がこれまで常々注意を喚起していたことが、とうとう帝国の公文書に明記されたわけか」


「うむ、いささか遅きに失したかも判らぬがな」


「何故。その言い方だと草原の状勢の推移が帝国に直接的に係わってくる、という風にきこえるぞ。一応どういう状勢にあるかだけが判っていればそれで充分だろう」


「係わってくると考えている。そのことについてはあとで話す」


「まあ、お前は草原に関しては特別な情報のルートを持っているからな。何かあったのか。その後トクベイ殿から手紙が来たのか」


 トクベイ。ヴァン・トゥルクと同郷で、ヴァン・トゥルクと同年齢である。

ヴァン・トゥルクと同時に高等官任用試験を受験したが、不合格であった。

 その後、草原の部族、突蕨の王、キプタヌイ汗に招かれ、キプタヌイ汗の一子、オゴタイの教師となった。

 今ではオゴタイに限らず、突蕨の将来を嘱望された子弟がその門下に集っている。帝国と草原に別れてからもヴァン・トゥルクとトクベイのふたりは手紙のやりとりを続けていた。


「来た。三日前に届いた。今日はそれもあってお前を訪ねたのだ」


「読ませてくれるか」


 ヴァン・トゥルクは袂から手紙を取り出した。

チャン・ターイーはそれに目を通した。読み終わった。


「そうか、まもなく突厥とテグリの間に会戦が行われるのは必至ということか。帝国が平和を謳歌している間、草原では大変なことになっているな。しかし、そのことを意識している者はこの帝国においてはほとんどいない」


「草原の状勢など帝国には何の関係もない、みなそう考えているからな」


「さて、この会戦どちらが勝つかだが、トクベイ殿は、やはり仕えている突厥のキプタヌイ汗の勝利を疑ってはおらぬようだな」


「チャン・ターイー、お前はどう考えるのだ」


「言うまでもない。トクベイ殿の言うとおりだ。キプタヌイ汗が勝つよ」


「が、今度の相手は草原最大の部族テグリだ。多くの部族が自らの盟主と認めている部族だぞ。これまで、次々に周辺の部族を切り従えてきたキプタヌイ汗にとっても今度ばかりはそう簡単にはいくまい。動員可能な兵力もテグリ側の半分程度だろう。テグリの族長スクタイ汗もなかなかの人物のようだしな」


「それでも突厥が勝つ」


「根拠は何だ」


「キプタヌイ汗は戦争の天才だ。それに尽きる」


「そんなにすごい男か」


「ああ、すごいな。キプタヌイ汗の戦い方には三つの特長がある。兵力の高速移動。兵力の集中。そして敵の想像外の行動をとることだ。口で言うのはたやすいがこれを行うには将兵ともに極めて高いレベルの能力が必要だ。キプタヌイ汗は相当に兵を鍛え上げているぞ。汗は今何歳なのだ」


「たしか、四十一歳のはずだ」


「まだまだ若いな。俺も草原に生まれたかった。あのような天才と戦ってみたいものだ」 


「いずれ、戦うことがあるかもしれんぞ」


「帝国と草原が戦うというのか。帝国と草原は別の世界だ。相争うというようなことはこれまでなかったぞ」


チャン・ターイーはヴァン・トゥルクの顔を見つめた。


「ふむ、何か考えているようだな。聴かせてもらおうか」


「その前に気になる点が三つあると言った残りの二点についてしゃべらせてくれ」


「おお、そうだったな。続けてくれ」


「ひとつはハイツー地方からの報告だ。」


「うむ」


「この地にひとつの思想が広まっている。人間は皆平等であり、貴族、騎士、一般民、奴隷といった身分上の区別は廃止されなければならない、という思想だ」


「それでは世の中は成り立つまい」


「いや、人の心の在り方が変われば、成り立つと主張しているな。まあ、歴史上そういう国家が、過去になかったわけではないしな。主唱者はジョセフという三十歳の男だ」


「その男は今、どうなっている」


「一度、投獄された。しかし、出獄して後は再び同じ主張を繰り返しているそうだ」


 帝国では原則として思想の自由は保証されていた。人に直接的な害を与えない限り死刑に処せられることはなかった。

 あまりに危険な思想であれば、今回のように投獄されることもあるが、思想を唱えるだけであればその罪は軽微なものでしかない。


「賛同者はいるのか」


「うむ、かなりの賛同者がいる。ハイツー地方においては、ひとつのあなどりがたい勢力となっている」


「しかし、ある程度以上の勢力となればその地の帝国方面軍が簡単に鎮圧するだろう。さほど大きな心配事とは思えないがな。もうひとつは何だ」


「カンクン地方からの報告だ」


「ほう、東方の中でも最東端の地方ではないか。何だ」


「トマスという、二十八歳の貴族階級の男が、新たな教団を作っている。教団が誕生したのは三年近く前のことだが、ここにきて急激に信者が増加している。教義は主にふたつ。帝国の国教をはじめとする既存の宗教の否定。そして彼岸に思いをはせることなく、この現実の世界、此岸の美しさを讃えよう、というものだ。前者はもちろん後者も、帝国の国教の教義とは相容れない。」


「国教の否定だと。貴族として生まれながらそのような教義を唱えているのか。その教団が気になるのか」


「うむ、ただ近年、国教をはじめとして既成宗教への批判の姿勢はなくなり、それを切っ掛けに信徒数が飛躍的に増えた、との報告もある。」


「そうか。なぜ、気になるのだ」


「全てがあるひとつの方向を指し示しているように感じるからだ」


「ほう」


「蘊蓄を傾けたい。良いか」


「おお、久しぶりだな。頼む」


 ヴァン・トゥルクは古今の重要な書物に通暁している。特に先賢の著したもの、いわゆる古典に対する造詣の深さは瞠目するべきものがあった。

 チャン・ターイーと座談している際の話題からの関連、あるいはチャン・ターイーの求めに応じて、ヴァン・トゥルクは時に古典の内容をチャン・ターイーに解説する。解説を始める時には


「蘊蓄を傾けるぞ」


と言うのが合図だ。


「帝国が草原を除く世界の全土を領土として三百年たつ。以後、帝国の領域に変更はない。しかし、それ以前においては世界に複数の国家が存在した訳だし、ホアキンを除いて、かつてあった国家はすべて滅んだことになる。ホアキン以前には全世界を領土とした国家は存在しなかったが、世界のかなりの部分を領土とした国家は存在した。そしてそれらの国家もまた滅んでいる。忘れてはならないのは世界がひとつではなく複数の国家が世界に存在した時代の方が歴史的に見てはるかに長いということだ」


「ふむ」


「そのまだ国家が興亡を繰り返していた時代、ツインビーという歴史家がある著作を著した。著作の名は「歴史における法則」だ」


「ほう、その著作名は聴いたことがあるような気がする。しかし内容は知らぬ。教えてくれ」


「国家、それも歴史上に大きな名前を残すような大国家が誕生して、そして滅んでいくには同様のパターンがあるというのだ。国家が誕生し、そして発展していくためには、それまでその領域に住む民が、従来のやり方ではどうしようもないような環境の変化がおこり、その環境上の挑戦に対して、国家を維持するために何らかの応戦をすることによる。

環境の変化は自然がもたらす場合もあれば、政治的な変化による場合もあり様々だ。その応戦を行い勝利した国家が発展を遂げる。この応戦を成功させた人々は創造的個人と定義づけられ、国家を指導する」


「どういう場合にその応戦は勝利するのだ」


「それも様々だ。必要に応じて何らかの新たな技術を生む場合、何らかの新たな制度を生む場合などだな。


そして発展した国家は世界国家となる。これはホアキンのように文字通り全世界を領土とする場合のみをいうのではない。その国家に住む住民が自分たちの国家と世界が同義であると意識している国家のことだ。


その意味で言えば草原という帝国外の領域がありながら、帝国と世界を意識の上で同義と考えているホアキンもその例に漏れないことになる。


そしてその世界国家はやがて変質する。

応戦の際に成功の要因となったこと。新たな技術、新たな制度などは偶像化され、進取の気風は薄れ、国家の指導者は支配的少数者となる。単に支配するだけのひとびとで、創造的な部分を喪失するということだ。


次に国家の内外にその世界国家の支配を良しとしない階層が生まれる。世界国家内部のそれらの人は内的プロレタリアートと総称され、内的プロレタリアートは世界宗教を生む。


世界国家外部には外的プロレタリアートが生まれる。国家内部の人々からみれば、それらの人々は蛮族、あるいはその類の言葉で総称される。


進取の気性を失った世界国家は、この野性の力を止めることは難しい。外的プロレタリアートは世界国家に侵攻し、世界国家を滅ぼす。


この世界国家を滅ぼす蛮族の活動は後世から英雄時代と見られ、伝説的英雄を主人公とする物語の源泉となる。


以上が、ツインビーが著した「歴史における法則」の内容だ」


「ふむ」


チャン・ターイーはしばし瞑目した。 その目が開いた。


「そうか、ヴァン・トゥルク。お前はこのホアキンを世界国家。草原を外的プロレタリアート。ハイツー、カンクンで起こっていることを内的プロレタリアートであると想定しているのだな。それゆえ、やがて帝国と草原が戦うことになる、と考えているわけか。で、ホアキンは滅びると思うのか。あるいは今回の立太子問題も滅亡の予兆とでも考えているのか」


「滅びない国家は無い。ホアキンもやがて滅亡することは間違いない。しかし、その時期は判らぬ。俺達が生きている内に起こるか。百年、五百年あるいは千年ののちになるかは判らぬ。今、内外のプロレタリアートの胎動が見られるからといって、そのまますぐに帝国に取って代わるとは限らぬ。むしろ歴史的に見れば、何度かの争いを長期的に繰り返す場合の方が多い」


「成る程、判った。俺の将来にそのような面白い時代がやってくるとは考えていなかったぞ。これはいい話を聴かせてもらった。だがそうなるとひとつ気になることがあるぞ。」


「何だ」  


「帝国と草原がやがて戦うというのなら、キプタヌイ汗に仕えるトクベイ殿と手紙のやりとりをすることはお互いに利敵行為にならぬか。お前も帝国の現状をかなりの部分まで書き送っているのだろう」


「実は俺も帝国と草原が戦う可能性があるということに思い至ったのは二日前、年次報告書の草案を読んだときが初めてなのだ。ハイツーとカンクンの状勢を読んだときに突然気がついたのだ。ホアキンも歴史上の世界国家と同じ道を歩もうとしている、ということにな。


帝国の民が全てこのホアキンを永遠に繁栄を続ける国家と考えていても、この俺だけはホアキンを歴史の中における一国家として客観的に見てきたつもりだったが、俺も自らが育った環境を特別に考えるということから無縁ではなかったようだ。情けないことだ。

が、ひとたびそのことに気がつき、あらためてトクベイのこれまでの手紙を読み返して見た。


昨日一日、キプタヌイ汗の行動、言動を特に注意して分析してみた。汗は草原を統一したのち、帝国と干戈を交えるつもりだと思う。だから、今日お前を訪ねた。するといきなり立太子問題だ。こういう問題が存在すれば、帝国が一丸となって、草原に対処するという訳にもいくまい。予断を許さない状況だぞ。だが、まだ時間はある。何と言っても突厥はこれからテグリとの会戦を控えているのだから」


「しかし、トクベイ殿はキプタヌイ汗の軍略まで書き送ってきているではないか。トクベイ殿の立場なら、汗の思惑はわかっていように。あるいは元々帝国の出身者だけに気持ちは帝国の上にあり、あえて書き送ってきているということか。だが、そんなことを書いているとキプタヌイ汗に知られればトクベイ殿もただではすむまい」


「いや、キプタヌイ汗はトクベイと俺が手紙のやりとりを続けていることは知っている。自らの軍略を書き送っていることもキプタヌイ汗は了解の上だ」 


「何だと、そんなことは聴いていなかったぞ」


「将来戦うことになるとは気づかなくとも、俺もそのことは気になったのでな。一度それとなく問い合わせの手紙を書き送ったのだ。その返事にそうしたためられていた。その時の手紙はそれ以外に特にめぼしい内容はなかったからお前にも教えなかった。まあ、今にして思えば、キプタヌイ汗が了解の上、というのは、それこそ重大な情報であったな。すまん」


「まあ、それは仕方あるまい。しかし、であればキプタヌイ汗は帝国と戦うことは考えていないということにならぬか。だが不思議だ。キプタヌイ汗ほどの男がありえるかも知れない未来を想定せずに行動するとも思えないがな」  


チャン・ターイーは考え込んだ。

そしてひとつの結論に達した。


「将来戦うことになる相手と意識していて、それでもあえて自らの軍略を明かしているとしたら、キプタヌイ汗という男、とんでもない人物だぞ」


「やはりお前もその結論に達したか」


ヴァン・トゥルクは言葉を継いだ。


「俺もそう考えた。実は、将来、帝国は草原と戦うことになるのではないか、と一昨日、最初にその考えが芽生えた時、俺は、帝国の禄をはむひとりとして、トクベイとの手紙にも以後はあたりさわりのないことのみを書こうと一旦はそう思った。しかし、考え直した。


俺が書き送っている程度のことは、キプタヌイ汗は既につかんでいるに違いないと思う。かりに帝国の間者を草原に送っても人口の希薄なかの地で有効な活動を行うことは難しい。またすぐに見破られてしまうだろう。だが、草原から帝国内に間者を送ることはたやすいことだ。第一、今、帝国と草原は戦闘状態にある訳ではないから、そのことをとがめることはできない。キプタヌイ汗であれば、そういう将来の布石も既に打っていよう。


そうすると、この手紙のやり取りは、俺の方にはるかに得るものが大きいと思うのだ。なぜ、そのようなやり取りを汗は許しているのか疑問だったのだが、お前が今たどりついたのと同じ答えを見出した時、俺も空恐ろしくなったよ」


「しかし、判らん。キプタヌイ汗にとって帝国と戦うことに何の意味がある。帝国と草原では生活様式も全く違う。草原の生活を続ける限り帝国の領土を奪っても仕方なかろう」


「トクベイの手紙から類推するに汗は、戦いに勝利するということ自体が目的なのではないかと思う。そういう人物にとって、帝国の征服者という称号ほど魅力的な響きの言葉はあるまい」


「そうか。たしかにそのとおりだ。そういう人物がこの同じ時代にいると思えばこころが踊るぞ」


チャン・ターイーはヴァン・トゥルクに訊ねた。


「草原地帯の全人口はどれくらいなのだ」


「二百万人を超える程度であると想定されている」


「帝国全土の百分の一をやや超えるくらいか、では戦力的に帝国とは比べるべくもない。国力が違いすぎる。

いや待て、そうか、草原の場合、成年男子は全て戦士となる。そういう民族だ。すると五十万人か。しかも全て騎士だ。帝国の職業軍人は帝国全土で三百万人。そのうち、騎士は七十万人といったところか、それも帝国全土に散らばっている。


ヴァン・トゥルク、俺にも判ったぞ。草原がひとつにまとまる、ということの恐ろしい意味が。いままで草原は多くの部族に別れていて統一行動をとることなどなかったから、誰もその意味に気がつかなかった。


これはたしかに早急に手を打つ必要があるな。きたるべき、突蕨とテグリの戦いもお前の言うとおりだ。手を拱いて見ている訳にはいかぬ。立太子問題などにかまけていて良い状勢ではない」


 翌日、チャン・ターイーはただちにこのことを近衛師団長グリウス・シューター子爵に伝えた。


 そして軍令の最高職である参謀総長オッテンスタイン男爵にこの件を報告したい希望を述べた。


だが、立太子問題に悩むシューターは


「今はそれどころではない」


としてこの希望を却下した。

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