表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

朝起きたら俺の可愛い妹がレストランの店頭によく置いてある食品サンプル(スパゲッティにフォークが刺さっていてそのフォークが宙に浮いてる奴)になっているだなんて

朝。目覚めの時。


俺はいつもの様にリビングでコーヒーを飲んでいた。芳醇な香りは遥か遠くキリマンジャロまで俺を連れていってくれる。生まれ変わったら豆になりたい。


「お兄ちゃん!」


そんな時、ジョゼフィーヌの声が聞こえた。

ジョゼフィーヌは俺の妹。金髪ブロンドにブルーアイ、小柄な俺の可愛い妹だ。


俺は振り向いた。しかしそこにいたのばジョゼフィーヌではなかった。


そこにいたのは巨大なスパゲッティだった。


「お兄ちゃん!知ってる?食品サンプルって古くからは大正時代からあって現在の合成樹脂を使用したものとは違って寒天などから作られていたんだって!」


巨大なスパゲッティは妹の声で喋り続けた。スパゲッティの頭上には巨大なフォークがスパゲッティを巻きつけながら宙に浮いており、それはおおよそ自然の物理法則からはかけ離れた現象だった。しかし今はそんなことはどうでもいい。


「ジョゼフィーヌ、お前いったい・・・」


「お兄ちゃん!知ってる?食品サンプルの起源は白木屋というデパートを起源とする説。京都の模型店を起源とする説。現在多く普及している岩崎さんが製造販売した食品サンプルを起源とする説。があって詳しくは分かっていないんだって!」


妹は何故食品サンプルになってしまったのだろう。

そして妹は自分が食品サンプルになっていることに気づいているのだろうか。


「ジョゼフィーヌ!」


「何?お兄ちゃん?」


「お前、食品・・・いやなんでもない・・」


私は妹に食品サンプルになっていることを告げようとしたがやめた。妹が自らを食品サンプルであると自覚した所で現状が変わるとも思えなかった。


「お兄ちゃん!知ってる?食品サンプルってあまり日本以外では普及してないんだって!これは日本人がレシピ通りの料理を出されることに対する安心感を求めているけど、外国の人はそうではないからなんだって!!」


やはり妹に本当のことを告げるべきだろうか。あの格好では就職や結婚にも支障をきたすだろう。しかし食品サンプルであるからと言って不当な差別を受けるべきではない。社会にきちんとした食品サンプルの受け皿を作るべきだ。受け皿というのは皿の形をした物理的な食品サンプルを乗せるものではなくて、食品サンプルの人権を尊重し、食品サンプルらしく振る舞える場所を提供するということである。食品サンプルが輝やけるのはショーケースの中だけ、そんな時代が終わろうとしているのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 深い。メッセージ性がどこかにあるのかも。 [気になる点] これホラーなんだ…… [一言] 妹の熱のこもった食品サンプルの説明が面白かったです! ╲(´∀`)/
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ