リライト
「ゲーム楽しい! やっぱり乙女ゲームは最高ね!」
今日も今日とて、シャルルくんの部屋のベッドで寝転がる。
しかし、今日はいままでとは違うことが1つ。それは私が握る携帯ゲーム機の存在である。
『ひきこもり姫2』の世界にウィルスとして侵入した私は、ゲーム内のデータを書き換えることができるらしい。
この能力を保有している私は、神であると謳っても何らおかしくはない。
だから、私はその能力――リライトを使うことで、携帯ゲーム機とそのディスクを創りだしたのだ。
反則級の能力を持ちながら、どうでもいいことに使うこの私を阿呆だと罵ればいいと思うわ。自覚はあるから。
「アリスお姉ちゃんが2度寝しないって変な感じ。そのゲーム、っていうの? そんなに楽しいんだ」
「それはもう。私の人生の一部といっても、過言じゃないわ。事実、そのゲームが原因でひきこもり生活を送るようになったわけだし?」
「へー……」
「やってみる?」
「いい。業務で忙しいから。アリスお姉ちゃんみたいに遊んでる暇はないよ」
興味ありげに見てきたから勧めてみたけれど、どうやら違うらしい。
その後もチラチラ見てくるため、私もゲームに集中することがなかなかできず、
「シャルルくん? なにかあるの? 視線が気になってしょうがないんだけど」
「ゲームで遊んでばっかりだから、ボクには構ってくれないのかな、って」
もしかして嫉妬?
嫉妬かしら?
「なら、私の視線をシャルルくんに釘付けにしてよ」
珍しく本心を晒すシャルルくんに対して悪知恵が働いて、意地悪をしてしまう。
内心うふふ、てな感じでウキウキ状態。
いまなら空も飛べそうなくらいご機嫌だ。
「なにをしても怒らない?」
「シャルルくんができるなら、なにをしてもいいわよ? できるなら、だけれど」
にやり。
ロリフェイスで悪役の表情を見せてしまったかもしれない。
反省反省。
「できるよ。ボクだって、男の子だもんっ」
「そうね、男の子だものね。これで頭を撫でるだけなら、しばらくはゲームだけを楽しむことにするわ」
「え?」
「え?」
お互い見つめ合って、その一文字で空いた口が塞がらなくなる。
一度息を吐き、心を落ち着ける。
そして、視線をゲーム画面に戻そうとする。
しかし、携帯ゲーム機を回収されてしまう。
ほぼ同じくらいの体格であれば、やはり男の子の方が力の面では分があるか。
「意気地なしのシャルルくんとは、しばらく会話をするつもりはないわ。さあ、業務に戻りなさい」
「嫌だよ。ボクを好きって言うまで返さないから」
「女の子心が理解できないシャルルくんになんて、絶対言ってあげないから」
「お、女の子心なんてわかる必要ないよね? だって、アリスお姉ちゃんはボクが好きで、ボクはアリスお姉ちゃんが好きなんだもん。それ以外に知っておくべきことってある?」
ベッドで寝ている私に跨がり、顔のすぐ横に片手を押し付ける。
逃げ場は封鎖された。
さらに視線は、シャルルくんのあどけない顔、健康的な体をガン見するほかない。
これは壁ドンならぬ、ベッドドン!?
ふむ、いいネイミングセンスだと思ったのに語呂が悪かったわ。
「ゲームとボクどっちが好き?」
「……シャルルくんがす、き」
「素直で偉いね」
ご褒美として、頭を撫でてくれるシャルルくん。
男の子らしい強引さも素敵。
「うぅ……負けた」
シャルルくんには俺様系の素質があるのではないか、と思うひきこもり姫だった。