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目覚めのひととき

「あぁ……んぅぅ……」


 長い夢見からの帰還。

 自分から漂う微かな体臭が、久しぶりの目覚めであることを知らせる。


 しかし、私が覚醒したこの世界は現実か、はたまたゲームか――。


「あ、あー! おはよ、アリスお姉ちゃん!」


「おはっ……はっ!?」


「アリスお姉ちゃんっ……アリスお姉ちゃんっ! 起きてくれてよかったよぉ……」


 私の体臭なんてお構いなしに抱きついてくる金髪碧眼の少年――シャルルくん。

 恥ずかしい、恥ずかしいけれど、離れたくない。

 シャルルくんの吸い付くような肌の艶やかさが、ここが私のいるべき世界――ゲームの世界であると告げてくれる。


「心配かけちゃったわね、ごめん。私、どれくらい寝てたかしら?」


「ちょうど1週間だね。でも、アリスお姉ちゃんの寝顔がすごくにこにこで、寝言も何度か口にしてたから、そんなに心配もしてなかったよ。幸せな夢を見てたのかなーとは思ってたけど」


「夢よりもシャルルくんとこうしてる瞬間が私にとっての幸せよ。あ、幸せなんだけど、私、その……臭わない?」


 やはり女の子はできるだけ好きな人によく見られたいと思う生き物である。

 だというのに1週間も汚れを洗い流していない未成熟な体に密着されてしまっている。

 私の体臭をどう思われているか。


「臭うなんてとんでもない。アリスお姉ちゃんからは、すごくいい匂いがするよ。この匂いをずっと嗅いでいたいくらい」


「ん〜〜〜」


 あまりの動揺に顔が一気に沸騰する。


 この発言が素であるならば、将来女性を手玉に取る魔性の男の子になるのではないかと心配である。

 匂いに関する心配は、水の泡に終わった。


「でも、アリスお姉ちゃんが気になるなら、どうにかした方がいいよね。ボクが体を拭いてあげよっか?」


「は――な、なに。もう一度、言ってくれるかしら。ボクが体を拭いてあげよっか? って部分がよく聞こえなかったの」


「ちゃんと聞こえてたね。それでどうするの?」


 もちもちで柔肌なシャルルくんに私の不健康な体を晒すのはいかがなものかと思ったけれど、シャルルくんに体を触れてもらえると考えれば――。


「お願いいたします」


 パンツだけを残して他の衣類を脱ぎ捨てた。

 あらわになった盛り上がりかけの胸は、自分の両手で覆うことできっちり隠した。


 思春期の男の子には、裸体は刺激が強すぎるからね!


「い、いくね……!」


「男の子にこういうことされるの初めてだから、優しくお願いよ?」


「う、ぅ……うん」


 浮わついた声を聞いて、私を女の子として意識し、緊張してくれている。

 そのことに心からほっとした。


「……っ、ん……」


「あ、アリスお姉ちゃん? もしかして痛かった……?」


「ううん、違うの。力はいまくらいが丁度いいもの。続けてちょうだい」


「う、うん」


 濡れたタオルでベタつく汗を拭いとっていくシャルルくん。おぼつかない手つきで、懸命に拭いてくれている。


 シャルルくんに幼稚な体を見られ、清潔にしてもらっている。それが恥ずかしくもあり、優しく触れる彼の温もりが体を火照らせる。


「はあ……あ、はぁ……」


 荒い吐息が漏れる。

 頭はこのご褒美に処理が追いつかず、自分がどのような行動に出るかわかったものではない。


 これ以上は性欲のタガが外れ暴走してしまうと判断し、知っておかなければならないことを尋ねる。


「リライトを使った後、不思議の国はどうなったの?」


「あぁ……やっぱり聞くよね。だって、こんなに変な状況になってたらね……」


 シャルルくんの部屋――お菓子でできた壁や家具にカビが生え、少し腐ったような匂いが漂っている。


「それはね、美味しいそうだったお菓子が腐りかけているんだもの。私が寝てる間に何がどうなったのか」


「えっと……ね?」


 シャルルくんによれば、


 栗栖によって実行された初期化は、私とシャルルくんの手で中断することに成功した。

 しかし、初期化の中断は、『ひきこもり姫2』の世界に多大な影響を与えることになった。


 とくに目に見えて問題になっているのは建物らしい。

 建物の建築材料であるお菓子が腐り、いつ崩れるかもわからない危険な状況で放置されている。

 私とシャルルくん、栗栖しかいない世界とはいえ、いつ崩落するかもしれない建物で暮らすことに不安しかない。


「この王宮もヤバかったりしちゃう?」


「ところどころ脆くなってる部分はあるね。いますぐ崩れることはないと思うけど」


「じゃあ、デートしない? そのついでにこの状況を打開できる方法を見つけられたら、御の字じゃないかしら」


 なにがどうすれば、「じゃあ、デートしない?」に繋がるかはわからない。

 でも、お互いが"好き"を伝え合った。はじめてのキスを交わした。

 ならば、デートをしたいと思うのは、乙女の必然である。


「王妃からのお誘いをボクは断らない。行こ!」


「なら、王妃からの夜伽の誘いも受け入れてくれると嬉しいわね」


「よとぎ……? よくわからないけど、悪そうな顔をしてるからだめっ」


「はい」


 デートに行く承諾を得て、シャワーで体を綺麗にするなどの身支度や、防災グッズを集まるなどの準備を整えてから、私たちは初めてのデートに赴いた。

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