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白雪姫を溺愛する王妃様

作者: 黒ユリ

白雪→美少女。王妃のことは好きだが、鬱陶しいと思っている。少し反抗期?


王妃→白雪大好き。王のことは普通に好きだが、恋愛感情はない。お金と地位には興味ない。


王→可哀想なひと。王妃の事を愛している。死んだ白雪の母親とは戦略結婚だが、非常に仲が良かった。しかし、恋愛感情は無い。白雪のことは愛しているが、王妃があまりにも白雪を溺愛し過ぎて嫉妬している。

「世界で一番美しいのはだぁれ?」

  

 裕に身長を超える大きな鏡に向かって問いかける。その答えを勿論彼女は知っている。


「勿論王妃様で御座います。────ってまた!? 昨日も一昨日もその前も来てたよね! なんなの? 暇なの!?」

 鏡は少し苛立ったように言う。なにせ、この王妃はこの鏡に出会って二年、ずっと毎日問いかけているからである。


「では、世界で一番可愛いのはだぁれ?」


「勿論白雪姫様で御座います。────はぁ」


 鏡に寝ている白雪の姿が大きく映し出された。すやすやと気持ちよさそうに眠っている姿はまるで天使のよう。誰が見てもあまりの可愛さに頬を緩めるだろう。それは実の母親ではない、王妃も例外ではない。


「嗚呼っ!! なんて可愛らしいのかしらっ!! 犯罪級の可愛らしさ! ……あら。興奮し過ぎて鼻血が」


 ぽたりと胸元に赤い小さなシミを作る。これでドレスをダメにしたのは果たして何着目だろうか。このドレスも国民の税金によって作られたドレスだ。このことを国民が知ったら怒り狂うだろう。




「また、こんな真夜中にさわいでいるのか……。今日も白雪のことか? いつになったらそなたの瞳に我を映してくれる?」 

 

 ドアノブを掴みながら暗い顔をして嘆く王がいた。

 愛する人をやっと手に入れられた。しかし、愛する人は自分など眼中にない。愛する人は白雪姫に夢中だ。



「白雪を小人の家にしばらく滞在させれば、少しは我を……」



 ぼそりと呟くこの言葉は王妃の耳には届かなかった。もし、届いてしまったらきっと王妃は激怒し、王を愛することは永遠に無いだろう。しかし、離婚は何があってもしないだろう。何せ、白雪と同じしろに住めなくなるからだ。



「白雪の寝顔を見に、白雪の部屋に行ってくるわ!!」


 楽しそうに笑顔でいる王妃とは反対に王は泣きそうだ。


うふふふと嬉しそうに笑いながら部屋を後にし、こっそりと白雪姫の部屋に入る。



「きゃぁあ。今夜も可愛いわっ!!」


 カメラを構え、パシャパシャと凄まじい早さで連写する。

 にやついた赤い口と、ドレスの赤い染みをどんどん大きくさせている鼻血を気にする様子もない姿は例え傾国の美女と囁かれている王妃でも、普通の人なら引くだろう。


「お母様、煩いわ。寝させてちょうだい」


 眉を寄せ、ふっくらとした子供らしい赤い頬を膨らませ、小さな口を不機嫌そうに尖らせた姿はとても可愛らしい。

 


 そんな愛らしい姿で怒られても反省するどころか、興奮してしまうことは言うまでもない。


 可愛らしい白雪姫の怒った姿を王妃はすかさず写真に収めると、白雪は更に眉をひそめ、黒い大きな瞳を吊り上げて叫んだ。


「お母様なんて大っ嫌いよ! 早く出て行ってちょうだい!!」


 王妃はその言葉に青ざめ、ふらりと倒れそうになるところを王妃の後ろに立っていた王は王妃を抱きかかえる。───いわゆるお姫様抱っこというものだ。


「嗚呼。白雪に嫌われてしまったわ……」


 

 王妃は王に抱き抱えられて頬を染めるどころか、視線すらよこさない。ただ、白雪に嫌われてしまったことだけが頭を占めていた。


 そんな王妃の姿を悲しげな目で王は見ていた。



「恋仇は我が娘か……」


 王は白雪の部屋を恨めしいというばかりに睨み付けた頃、白雪はお腹一杯フルーツの乗った分厚いパンケーキを食べている夢を見ていた。



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