ノロロのくだらない話
夏です、暑いですね。みなさんは毎年、夏はどこからやって来るのかを知っていますか?そんなことを言っている私もそんなに正確には知りませんけどね。でもさすがの私でも夏が南の国からやって来るのだ、ということだけは知っています。
春も終わりになると、南の島と島の間で夏がうまれます。そして碧い海の底からのっそりのっそり海の底を歩いていって、夏の大群が北の国めがけてやってくるのです。その海底の大移動はそりゃ、もういいながめです。私も毎年一回は夏が移動する様子を赤道まで見に行くんですよ。本当にいいながめです。
そして一匹目の夏がある国の海岸に上陸すると、やっとその国ではめでたく夏になります。一匹、また一匹と上陸するたびにその国の気温がぐんぐんとあがって、しまいには夏まっさかりになるんです。
そして夏が南へと帰っていって季節はすっかり秋になります。そうしてしばらくすると木枯らしがぴゅーと吹いて紅や黄色に染まった木の葉を落としていきます。木がまるはだかにされてしまえばもう季節は冬です。冬ってのは空気が澄んでいるからでしょうか。もう星がきれいでして、星はまるで大きな目玉かおたまじゃくしのたまごのように大地を見下ろしているんですよ。いいもんです。
え、ところで私が右腕に大事そうにかかえている本は何だって?そんなこともどうでもいいじゃないですか。これはとても大事な本。私の命の次に大事な本。むしろ私の命をこの本にあずけてしまったから、この本こそが私の命のようなものですけれどね。まあいずれ分かるでしょう。もうこの本についての質問はここらへんにしておいてくれませんか?
では、これからしばらく私は旅に出ようか、と思います。風にふかれるまま、波の行きつくままの目的地もない旅です。昔の人が言うように「今までどこにいたのかも忘れ、今どこに向かっているのかも忘れてしまった」そんな旅です。ええ、のんきなものですよ。では、さようなら、また会う日まで。語り部はノロロでした。




