9.ボーナス
あけましておめでとうございます
楽しみにしていた、最初の給料日。
明細は、「後日渡します」と言われていたので、金額は知らなかった。
……普通、先に渡すんじゃないの?とは思ったが。
銀行に行って、残高を確認する。
「……」
三度見した。
「……」
とりあえず、残高を印刷した。
窓口に行く。
「スミマセン。故障だと思うのですが」
だって……5000万入ってたんだぜ!?
「はい、少々お待ち下さい」
窓口のお嬢さんが、口座の確認をしてくれているのだろうか。間もなく、こう声をかけられた。
「スミマセン、振込み元に問い合わせたいと思いますが、構いませんか?」
「はい、お願いします」
それからしばし。
「お待たせ致しました。
少々、こちらに来ていただけますか?」
……やはり、何か問題があったんだな。
何やら、特別そうな豪華な部屋に通された。『Dark Cat』のサイコワイヤーが凄いことになっている。
「お待たせ致しました。
確認したところ、問題ないようです。
『間違いなく、5億をボーナスとして振り込みました』との返答が得られています」
「5億!?」
金額を確認した。
…
……
……ホントだ、5億ある……。
「……えーと……意味が分からないのですが――」
「詳細については、会社で説明しますとお伝え下さい、とのことです。
問題ないでしょうか?」
「あ、はい……」
「ところで――」
その後、貯金についての相談で、しばらくの時間がかかった後、会社に向かった。
「やあ、ハヤト。ボーナスはどうだったかな?」
第二研究室に着いてすぐに、そういう話になった。
「あー……凄かったです」
「金額を聞くのは野暮だな。
一応、後で室長が明細を持ってくる。
……多分、驚かせるために明細が後回しになった」
「じゃあ、奢ってもらえるね♪」
エルザさんが嬉しそうだ。一応、奢るために多めに下ろしてある。多少高い程度の店なら大丈夫だ。
「そんな時間があるといいわねぇ」
カグヤ室長がやってきた。「明細よ」と渡される。……封をしてある。後で確認しよう。
「予約、3800個」
「……はぁ!?」
「久々の、残業よ。プログラムは1つ組めばそれを使いまわせるけど、諸々に時間がかかるから、特に急ぎでと言われているの。
ボーナスの査定に考慮すると言われているわ。
ちなみに、単価は2500万にしたそうよ」
「……やっぱ、売れるんだよ」
セージ主任が呟く。
「予約だけで、95億だろ?
ハヤトのボーナスも凄いんだろうが……。
……俺らも、頑張ったらボーナス凄いんじゃね?」
そう言われて気がついた。
……流石に、ボーナス5億はやり過ぎじゃないかと。
だが。
カグヤ室長はこう言った。
「一部の人にしか情報を公開していなくて、初回予約がこの数よ。
流石に、これは凄いという話になったらしいわ。
誰か、株価チェックした?
3倍に跳ね上がったそうよ」
「……まだ上がるな」
「そうね。数万個は売れるでしょうからね」
……凄まじい。
ただ、そのことだけは分かった。
だが。
「……僕、ここを辞めても、そこそこ食っていけるんですけど」
「そうでしょうね。
でもね。
お金は、幾らでも使ってしまえば、無くなってしまうものよ。
けれど。
収入以下の支出で抑えておけば、必ずお金は増えるものなのよ?」
「分かってます。辞めるつもりはないですから」
恐らくは。
……僕が辞めても、会社としては、十分な利益を得た。
それを意味するのだろうと、僕は捉えることにした。