24.超人化
――Kyoji
衝撃波は、俺らのところまでは届かない。さほどの射程は無さそうだ。
だが、その範囲からジュンナが逃れるとなると、逃亡と言われそうなぐらいの範囲はある。
4度目の衝撃波。
俺は、ジュンナが意識を失ったのを確信した。
――SHIELDが吹っ飛んだか。
事前の情報で、その推察が立った。
――負けたな。
まずは、そう思った。降参して、ジュンナの命があればメッケモノだろう。――そう思った。
バリバリッ!!
轟音が鳴った。雷が間近に落ちたようだ。……否、雷が間近に落ちたのに等しかった。
その雷は、ジュンナから迸り、一騎打ちの相手を貫いた。……恐らく、命を奪った。
バチッ、バチッ!
時折、ジュンナの体から火花が走る。……意識が飛んだわけでもないのか?
「おい、ジュンナ」
ジュンナは、俺の呼びかけには応えず、右手にGunginirを握って、敵の付き添いで来ていた連中に襲い掛かった。
「おい、ジュンナ!!」
動きが鋭い。1人が瞬殺された。もう一人が、テレポートで逃亡する。
ジュンナが周囲を見回し、俺と目が合った。
「お、おい……?」
Gungnirを握り、俺に迫ってくる。……一撃を辛うじて避けた。
「ジュンナ!何をしやがる!?」
……恐らく、正気では無いのだろう。
そして、この状況に、俺は1つの推論を立てた。
……これ、カエデとやらが言っていた、『超人化』じゃないのか!?
「目ぇ覚ませ、ジュンナ!!」
声をかけても様子が変わらないので、「ゴメン!」と断ってから、Salamanderの全方位攻撃を放った。バチンッと火花を散らして、フッと、ジュンナは意識を失った。俺は、慌ててその身体を支える。
「……『超人化』とは聞いていたが……自我を失うんじゃ、諸刃の刃じゃねぇか」
とりあえず、CVの連中が約束を守って撤退してくれるのなら儲けモノだ。
だが、少なくとも、主力の一人を失ってまだ、抵抗を続けるのならば――
奴らには、甚大な損害を与えて、思い知ってもらうしかない。
――窮鼠が、奴らよりも強い、という事実を。
「まぁ、まずはジュンナを抱えて帰るかねぇ」
正直、俺はもう、戦いたくなかった。
初めて経験した実戦。
恐怖を覚える前に終わった。だから生きている。
恐らく、恐怖を覚えるまで戦っていたら、死んでいた。
命があっただけでも儲けモノだ。
「でもなぁ……」
立場上、言うわけにはいかないよなぁ……。『戦いたくねぇ』なんて。