22.戦力
「へぇー……。面白ぇなぁ」
キョウジが帰還して能力をデータ化して、その感想がそれだった。
<<
キョウジ
LV 5
POWER 50
SHIELD 6
KONJO 5
>>
カエデちゃんは、中々優秀と言った。エルザさんのLV 6は、相当高い数字らしい。LVで言えば、2が最も多く、次いで4。1や3は、珍しいらしい。超能力の強度としては存在するが、そのLVの才能を持っていることは、滅多に無いとのことだった。そして、5以上となると、他には、ジュンナさんがいるだけだった。
<<
ジュンナ
LV 5
POWER 45
SHIELD 5
KONJO 6
>>
「信頼できるレベルの使い手は、LV 4なのね」
僕が名前を知らない人たちに対して、ジュンナさんはそう言った。LV 2の人たちは、戦力として当てにしていない人たちだそうだ。実際、外に戦いに行っている人たちの中に、LV 4未満の人はいない。逆に、LV 4でも戦いに行っていない人は、居残り組でも、指導側に回っている、ちょっと能力的に信頼されている人たちばかりだった。
「こうなると、敵の戦力も知りたいわね」
「……捕えるのか?そんな余裕は無ぇだろう」
「ただの願望よ。パソコンに接続しないとならないなら、現実的にデータを得る手段は無いわ」
裏でこっそり、エルザさんが僕の袖をクイックイッと引き、耳打ちをしてきた。
「……ねぇ。カエデちゃん、やけに喋ってなかった?」
「……そういえば」
何となく、ずっとカエデちゃんは無口なイメージがあったが、今回の件で、彼女はやけに喋っていた。僕も、「おやっ」とぐらいには思っていたが。
まぁ、女の子だ。秘密の1つや2つはあるだろう。
「エルザさんが、俺ら以上の戦力、ってのは勿体無いな。かといって、お客人に戦わせるのもな。ま、ハヤトの護衛で力を使ってもらおうか」
「アタシは、ハヤトのマイナスのレベル、ってのが気になるけどねぇ」
「絶対値なら、一番だな!」
その数値を、カエデちゃんは「超人並み」と表現した。
僕も、話にだけ聞いたことがあるのだが。
『超人化』。一時的に、超能力を使う才能が暴走に近い状態で高まることを言うらしい。
でも。僕のマイナス7LVというのは、その超人化した人が使う超能力として、一応の限界である、LV 7強度の超能力も妨害出来てしまうレベルらしい。それを、「凄いことだ」とは言っていたけれど……。正直、自覚はありません。
ただ……。僕も、超人化って出来るのかなぁ、とは思う。それで、超能力らしい超能力が使えるのならば、使ってみたいものだが。
マイナスの方向にだけ暴走するのは勘弁だが。
まぁ、なんにせよ、この一件が片付くまではどうともならない。
凄いボーナスを貰ったのだって、都市機能が麻痺している状態では、使い道も無い。
だけど、それを解決するのに、僕には何も出来ないのがもどかしい。
「……何だ?」
テレパシストを率いているらしい人が、不意に、片耳を手で押さえた。
「……テレビ?テレビが……何?」
慌てて、テレビがつけられる。……一人の外人が映っていた。
Yamatoを占拠したことを演説していた人だったと思う。
言葉は英語だが、和訳が入る。
『抵抗戦力に告ぐ。
お互い、損害は甚大なはずだ。
この際、代表者で一騎打ちし、その結果、勝敗をつけようではないか。
国会議事堂前で待つ』
そのような内容だった。
即座に、会議が行われた。その誘いに乗るかどうかと――乗るのならば、誰を代表者にするのかについて、だった。
「ハヤトなら勝てるけどね」
カエデちゃんが呟く。
「私じゃダメかな?」
エルザさんも言う。だけど。
「絶対に、譲れないからね!」
ジュンナさんと。
「それは俺のセリフだぜ!」
キョウジのどちらかが代表になるであろうことは、もはや分かりきっている状況を、周囲がどう意見をまとめるかという内容となっていたのだった。
並行して書いていた作品が終わったので、こちらに専念できそうです。