21.データ化
スミマセン、久し振りの投稿です。
ホントに、カエデちゃんは凄い。
僕は、Dark Catを所持して、リョウ君を迎えに行った。
その途中で、ジュンナさんからテレパシーが繋がった。
……おかしくない?
テレパシーは、1つの例外も無く、サイコワイヤーを繋ぐことで初めて作用する。但し、接触してのテレパシーは、長さゼロのサイコワイヤーとして判定される。故に、サイコワイヤーを限界数まで放った状態での接触テレパスは出来ない。だから、1つの例外も無いと表現した。
だけど、ジュンナさんの繋ごうとしたサイコワイヤーは、僕の持っていたDark Catに捕捉されることなく、僕に繋がった。
確かに、僕は出発前に、カエデちゃんから「Dark Catを貸して」と言われて手渡し、すぐに返してもらった。そのわずかな時間に、Dark Catの設定を書き換えたのだ。ちなみに、現在、流通しているDark Catに、一切、そのような機能は無い。開発中の商品を全て含めても、だ。エルザさんが、そう保証してくれた。
ただ、そのやり方を、カエデちゃんは「ヒミツ」と言った。分かる気がする。一方的にサイコワイヤーを封じることが出来たら、その機能を持ったDark Catを沢山揃えるだけで、この戦況を大きく左右する。モノそのものを渡すのと、その技術情報を教えるのとでは、価値が天と地ほども違う。今、状況を有利にするために、そして、僕らの安全の確保のために、カエデちゃんは少しだけサービスをしてくれたのだ。正直、ネットを組むという技術も、そのレベルの極秘情報だとは思うけれども。
「……僕に、出来ることはないのかなぁ」
リョウ君ですら、怪我人の治療で役立っている。
現状で役に立てていないのは、僕とエルザさんだ。
「……まさか、戦いたいの?」
「戦いたいというか……。
何か、手伝えることはないかなぁ、と」
「……会社に行ってみる?」
「何か、それに意味が?」
「皆がいるかも知れない」
だが。僕の外出は「No」と言われた。ハヌマーンを置いて行くと言ったのに、強力なアンチサイ能力者である僕に、守りの一端は任せたいのだと言われた。
「役に立ってるじゃない」
「ボーっとしてるだけだけどね」
「昼行灯でいいんじゃない?あなたが役に立っている状況は、ほぼ負け戦でしょ?」
「……そうかも知れませんけどね」
「役に立ちたいなら、手伝ってもらおうかな?」
そう言いだしたのは、カエデちゃんだ。
「……カエデちゃん、何かしようとしてるの?」
「戦力のデータベース化でもしようかと」
「……どうやって?」
「『魅里亜』によるプログラミングが必要なんだ」
「……流石に、現時点で僕に『魅里亜』によるプログラミングは――」
「私がやりましょう!」
エルザさんが名乗り出る。
「口で説明するのは難しいから、テレパシーで伝えるね」
「パソコンは?」
「あそこに置いてあるのを貸してもらおう。今は使っていないみたいだから」
エルザさんは、早速パソコンのプラグを後頭部のソケットに差し込み、どうやらプログラミングを始めた。
待つこと、1時間。
「意外とあっさり出来たわねぇー」
「試しに、ハヤトのステータスを見てみよう」
僕のソケットにプラグを繋ぐ。
「数値化するよ」
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ハヤト
LV -7
POWER 100
SHIELD 5
KONJO 10
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「……ん?」
どうやら、これが僕のステータスのようなのだが。
「ステータスは、適性と合わせて、完成となるんだけども」
「……1つ1つ、説明してもらえるかなぁ?」
「LVは、使える超能力の強度だね。マイナスは、アンチサイに対して余程の適性が無いと、そう表記されることはないはずなんだけど。ハヤトは例外的にマイナス方向のレベルが高いね」
「プラス方向には、使えない、……ってわけでもなさそうだけど」
「うん。ハヌマーンがS超過適性あるし、LV6相当の強度の普通の超能力も、使う才能はあるね。ちなみに、ごく一部の例外を除いて、LV以上の強度の超能力を使うのは、非常に難しい」
「POWERは?」
「超能力を使うエネルギー。100は相当高いよ。
SHIELDは、無意識に使われている超能力で、超能力の攻撃に対する耐性のこと」
「……最後が気になる。『KONJO』。コンジョウと読んじゃっていいのかな?」
「うん。これが、例外的な超能力の使い方。
自分のLVを超える超能力を使う能力の高さ。10は相当高くて、12を超えることは、ほぼあり得ないと言っていい」
「……試しに、エルザさんのステータスも見せてもらっていいかな?」
「え?……いいけど」
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エルザ
LV 6
POWER 30
SHIELD 3
KONJO 5
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「一応、言っておくけど、これ、かなり高いステータスだからね。ハヤトが色々例外的すぎるだけで。
LVが6あるなら、一流のサイキックと言える。これは、AtheneにS超過適性があるおかげだね。
ただ、強度の高い超能力は、消費も激しいから、エルザさんのPOWERとLVで、全力の戦闘を長時間は出来ない。
ちなみに、ネットを組むと、LVは貸し出せるけど、それ以外は貸し出せない。
KONJOが高いと、エネルギーが尽きていても、多少の超能力は使えるから、貸し出せたら大変だったね。僕は、KONJOだけの超能力は、『予備タンクのエネルギー』を使っていると認識している。
POWERを貸し出せると、補給組と戦闘組に分けて、無限に戦えたかもね。一応、エネルギー保存の法則に従っているらしいけど……正直、それ以外の点でその法則に反しているから、『実はエネルギー保存の法則は、完全な理論ではなかった』だけでは済まない物理学者とかには、同情を禁じえないよ」
「SHIELDって……防御の超能力と関係しているの?」
「ううん。SHIELDは、直撃を受けても耐えられる限界。防御の超能力は、LV依存だね。
ハヤトのSHIELD 5ってステータスは、Gungnirの直撃でも、一回は耐える可能性があるね。
エルザさんのSHIELD 3は、Gungnirの直撃だと、当たった部位が完全に失われる。腕に当たった程度なら、腕がもげても生きてはいるだろうけど、ハヤトは頭に直撃しても、ただの大怪我で済む可能性があるという、非常に高い数値なんだよ。まぁ、それは運が良かったらの話で、実際問題、頭にGungnir直撃は、死ぬと思って注意した方がいいよ」
「……で。これをデータベースにするの?
役に立つかなぁ……」
「聞いてみよう」
キョウジやジュンナさんはいないし、今、この場で最も権限が強そうな女性に、カエデちゃんは話しかけた。
「……面白いわね。
いいでしょう。この際、クルセイダーの全員の能力を数値化して分析しましょう」
その後、エネルギー補充に帰還した者から順に、ステータスをパソコンに取り込むという作業が始まった。
ある程度、情報が集まった時点で、僕は、僕のステータスが非常に高いことを、強く認識するに至った。
……まぁ、レベルは僕が最低だったけどね(泣)
でも、絶対値なら、僕が一番だったから!(言い訳)
次回の掲載、いつになるか分かりません。
ホント、スミマセン!!