2.第二研究室
入社式を終え、初出勤の日。
Musashiの本社であるBabelビルまでやってきた。
「第二研究室、かぁ……」
他にもチラホラと今日が初出勤の人がいる様子で、受付で場所を聞いている人が何人かいたので、僕も受付で第二研究室の場所を聞いてみる。
「スミマセン、第二研究室って、どちらですか?」
「はい、7階の奥から二番目の部屋ですね。
――えっ!?第二研究室配属なんですか!?凄いですね!!」
……何か、キラキラした目で見られてしまいました。
第二研究室に向かう途中、お手洗いがあったので、鏡を見てネクタイを直す。鏡の中の社員証を確認。それから、目的地へと。
「……ここか」
僕の職場。ノックしてから、「失礼します!」
……返答が無い。
「ああ、キミか、新入りは」
背後から、そんな声がかけられた。
「あの……」
「入って、入って」
現れた女性は、僕を部屋の中へと押し込む。
……そこは、静かな戦場だった。
パソコンに向かったまま、一心不乱にキーボードを打つ1名の女性と3名の男性。
「……あの」
声をかけるのも躊躇われる。全員、目が血走っている。
「キミの席、そこ!
座ったまま、昼まで待機!これは業務命令です!
従えないなら、今日は早退しなさい!」
キーボードを打つ女性が、空いた席を1つ指差して言った。
「ごめんねぇ、納期が近いの。皆、ピリピリしてるから、大人しく座って待っててね」
部屋の中へと案内してくれた女性の、社員証を見る。――エルザさんか。よし、覚えたぞ。
――しかし、会話の1つも無く、黙々と……。
こんな環境で僕は働くようになるのか……。不安だな。
そう思っていたら、エルザさんも「ゴメンね」と言って仕事を始めた。
……どうしよう。
――そうだ!
「すぐ戻ります!」
確か、最上階である12階には、売店があると、どこかに書いてあった。すぐさまそこに向かって、飲み物を6つ買ってきた。
「どうぞ!」
一人一人の机に置いて回る。
配り終えたところで、席に座って飲み物を飲みながら待機する。
飲み物は、全員が時々飲んでおり。
11時頃。
「新入り、もう一本!」
「こっちもだ!」
「ついでだから、全員分買って来い!!」
「はいぃぃ!!」
もう一度、売店まで行くことになった。
そして、昼休みに鐘が鳴った。
「お疲れ~」
「あー……納期間際は厳しいねぇー」
「で?」
全員が、僕の方を向く。
「これが、期待の新入りか」
「中々、気が利く。……75点」
「優は与えられないけれど、良なら十分か」
ここがチャンスだと、起立・気をつけをした。
「ハヤトです、よろしくお願い致します!」
頭を下げると、女性が一人、一歩進み出た。
「室長のカグヤだ。
我らが第二研究室は、キミを歓迎する!」