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19.ジュンナの不安

――Junna


 Walkyrie使いの子たちに促されて、エルサレムに帰還した。……エネルギー補充を兼ねて。

 帰って驚いた。……テレパシストの子たちを中心に、非戦闘員のはずの皆が、どうやら戦っていて、しかも、状況としては優勢。……私とキョウジを除けば、まともにCVと戦える戦力はいなかったはずなのに!


「食べながら聞いて下さい。『ネットを組む』という技術について、知っていることを説明します」


 ……突然、戦力が増えた理由は分かった。しかも、こちらの主戦力をネットに組み込めば、戦力は跳ね上がることも理解した。……この戦い、勝機が生まれた!!


 正直、私は勝てるつもりでなど戦っていなかった。恐らく、CVによってYamatoは蹂躙され、私たちの生き残りが、再建のために尽力することになるだろうと思っていた。……AegisとGungnirを別個に使える私ですら、エネルギー切れが原因で死ぬだろうと覚悟を決めていた。だけど、その戦況が覆る!!


 あの3人には、いくら感謝してもし尽くせない。本当に、それ1つで、Yamatoを救うぐらいの功績に値する!私たちは、それに力を貸すだけ。


 勝機が見えて、士気も上がった。主戦力が次々に帰還し、パフェでエネルギー補充をしながら、ネットに組み込まれることで、戦力が次々と強化されていく!


「キョウジ。戦える?」

「ああ。この戦、勝てるぜ!」


 私とキョウジもネットに組み込まれた。情報が流れ込んでくる。

 ……しかし、なんて数!!何万という数で攻め込んで来たんじゃないの!?


 今は私は休むべき時。エネルギーが満ちるまでは。

 残念ながら、エネルギーの共有までは出来ない。……当たり前だ。他人の栄養を奪えるわけがない。他人の適性を借りられるだけで十分だ。


 ……でも。私の冷静な部分が囁く。

 この程度で、本当にあの数のCVを相手に、勝てるのだろうか、と。

 クルセイダーは、全部で1万とちょっとしか構成員がいない。

 その全員が戦力になったと考えても……。厳しいのではないだろうか?


「……あの3人は?」

「ああ、ヒーラーを回収しに向かったと聞いたなぁ。

 多少の怪我を負っても大丈夫になるらしいぜ!」

「護衛は?」

「うーん……3人いるみたいだが?

 そもそも、Athene使いがいるんだ。下手に護衛を増やして目立つより放置した方が安全じゃねぇか?」

「馬鹿!!あの3人が抜けたら、戦力激減よ!?

 もしも。もしも『ネットを組む』技術が知られたら、また不利に追いやられるわ!!」

「大丈夫だろ。いざとなればテレポートすれば」


 わざわざ、危険を冒してまで、回収しなければならないヒーラーって……何者!?

 ネットに組み込まれているのだから、テレパシーでやり取り出来るはず。……ハヤトに聞けばいいのかしら?とりあえず、テレパシーで話しかけてみる。


『ハヤト。聞こえる?』

『……はい。聞こえますが……ジュンナさんですか?』

『ヒーラーを回収に向かったと聞いたんだけど。何で、わざわざそんな真似を!?』

『……Swan使いです。役に立つと思いますし、放置は出来ないと思いまして』

『Swan!?』


 聞いたことがある。ありとあらゆる病を治すヒーリングソフト。失われた部位を再生させることまでは出来ないが、部位そのものが失われていなければ、どんな傷でも治せる。……失血死に対しては、あまり役に立たないとも聞いたことがある。


『……分かったわ。確かに、放置できないレベルの戦力ね。

 でも、回収したら、すぐに帰還して。あなたたちが浚われたら、ちょっとシャレにならない事態に陥るから』

『当然、危険を察知したら帰還しますよ。

 大丈夫です。エルザさんが試作型のDark Catを持っていたので、ESPでもそう簡単には居所を掴まれません。

 あと30分ほどで帰還の予定です』

『……そう。

 絶対に、無理はしないでね』

『当然ですよ』


 ……今、クルセイダーは優勢であるように見えている。

 だが、正確に戦力を比較するとするならば。Yamataiにいるクルセイダーは、200人に満たないのだ。Yamato全域となると、1万に辛うじて届くが、CVがどのくらいの勢力で攻めてきているか、予想でしかないが、2万~3万。今は予想外の善戦を繰り広げているが……。エネルギー切れのタイミングで、覆る可能性はかなり高い。

 その時、彼らがいるのといないのとでは、大きく違ってくるのだ。


 情報通り、CVの目的がただHanumanだけなら。最悪、差し出すという手もあるのだ。


「さて。俺はもう一戦、やりあってくるかな」


 キョウジが動く。私も、もう少ししたら動かなければなるまい。


「死んじゃダメよ、キョウジ」

「ああ。

 ……Salamanderがな。疼くんだよ。『Dragonを喰いてぇ』って。

 まぁ、例え話だがな。一匹でも多く、狩ってやるぜ!」

「私も――」

「――ん?」

「……いえ」


 私は頭を振った。


「なんでもないわ。

 勝つわよ。絶対に負けない!!

 だから――

 この戦いが済んだら、ちゃんと私を貰ってよね」

「……久々にその話をするか。

 まぁ、まだ早いと思うだけで、俺も結婚するとしたらお前しかいないと思ってるよ。

 だがな。……わざわざここで死亡フラグ立てなくても、とは思うぞ」


 キョウジはそう言って、笑いながら発った。


「死亡フラグ、ねぇ……。

 ま、そんな迷信、信じないけどね!」


 私は、脳が活発に動き始めたそれから30分後、エルサレムを発ち、戦場へと向かった。

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