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15.侵略

 どの番組をつけても、同じ内容を放送している。

 外人さんが、日本語で演説しているのだ。


 ……それを演説と言っていいのか、少し微妙だが。


「……何、これ?」


 演説の内容は、日本を占拠したこと、幾つかの要求があること、逆らう者には容赦しないことなど……。


 要するに、テロが起こった。


「何、これ!!」


 恐らく録画なのだろう。それが、繰り返し流されている。……全てのチャンネルで。


 落ち着け……深呼吸だ。


「……とりあえず、会社に行かない?」


 エルザさんの提案だ。連絡も取ってあるらしい。誰かしら来るのだろう。


「そうですね……。

 カエデちゃんはどうする?」

「僕も行く」

「……この状況で、一人で置いて行くよりは――」


 エルザさんも反論は無いようだ。


「急ぎましょう!」


 事態の深刻さに気付いたのは、駅に近付いてからだった。

 それまでは、せいぜいがテレビ局の他は限られた場所しか占拠されてなどいまいと思っていたが、駅の間近で、サイキック戦が繰り広げられていた。


「流星弾!」


 そう叫んで火の玉を放っているのは、赤い髪の男。赤い短髪の女性もいる。確か、女性の方がジュンナで、ジュンナが一度言い放った名前が男の名ならば、彼はキョウジ。クルセイダーとか言っていたが、恐らくはキラーチーム。……サイコソフトを悪用するならず者の集団だが、その2人が相手をしている敵が、全て外人であることを考えると。

 クルセイダーは、侵略してきた外国のキラーチームと敵対している。繰り返しの放送の中で出てきた名前では、『セレスティアル・ヴィジタント』と名乗っていた。

 この駅であるのは、偶然ではあるまい。僕たちと出会った駅だから。

 だから、ここは協力して、外人さんたちを始末しなければならない。


「……エルザさん、危なくなったら、お願いします!」


 サイコワイヤー……超能力の作用点を決める糸のようなものを伸ばす。使うサイコソフトは、『Nu-e』。外人さんをそれで捕捉しようと試みる。服は、当然コーティングされていて弾かれる。だが、肌に触れれば。……捕捉して、超能力を封じる!

 それを、キョウジが狙っている外人さんに行えば、キョウジが焼き捨ててくれる。

 外人さんは10人いたが、僕に気付いて襲ってきたのは、一人だけだった。そいつは、エルザさんが光の槍で始末してくれた。アンチサイコワイヤーコーティングは、サイコワイヤーしか防いでくれないので、攻撃系サイキックに対する防御手段とはなり得ない。……クソッ!僕が使いたくて調べて知った情報なのに、僕には何の役にも立たない!


「悪いな、助かった」


 キョウジが近付いてきて、握手を求めてくる。痛いぐらいに強く握られたが、悪い気はしない。


「ニュースは見たわね?

 あなたたちを確保に来たの。私たちの庇護下に入って欲しい。

 少なくとも、単独で立ち向かえる相手じゃないことは理解して。

 戦うにしろ、一時的に共同戦線を張るということで納得していただけない?」

「戦うつもりなら?」

「一緒に戦いましょう。『Athene』が味方にいると、心強いわ」


 ……僕は、戦力にならないんだろうな。


「着いて来て。拠点に案内するわ」


 幸い、電車は使えるらしい。

 恐らく、僕の細胞を使った『Dark Cat』が普及していたら、こんなにあっさりと全テレビ局占拠とかいう事態にはなりづらかっただろう。と、エルザさんが言った。

 タイミングとして、最悪だった。


 だけど、何故だろう。


 僕が、秘かに心躍らせて、この事態を捉えているのは、恐らく、誰も理解してくれないだろうと思った。


 国の危機?


 いいや。


 僕から見れば、冒険物語の幕開けだぜ!!

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