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第二十四話(地図あり) ウラール地域の情勢

勢力が混在しているので、簡単に地図書きました。

下手なのは仕様です。

見逃してください。


「これからは新たに秀雄殿も加えまして、当家の活動方針についての会議を行いたいと思います。では、早速ですが秀雄殿、何か質問はありますかな」


 司会進行は、クレンコフ家譜代の騎士バレスだ。

 彼は齢四十五を超えており、マルティナが赤子の時から面倒を見て来た家内一の重鎮だ。

 そろそろ老人の域の達する年齢だが、その眼光は衰える事無く、特に戦場での槍働きは返ってその鋭さを増すばかりで、近隣勢力にその剛勇は鳴り響いている。

 彼は若き頃、マルティナの父とナターリャと共に冒険者活動もしていた。

 当時のランクはAである。

 

 そしてバレスに次ぐ騎士二人がレフとセルゲイだ。

 彼らも譜代騎士であり、年齢は揃って三十を過ぎた所だ。

 実力はバレスには劣るものの、日々のバレスとナターリャによる扱きのお陰か、並の騎士に比べたら遥に戦闘力は高い。

 

 その外にも、バレスの息子であるニコライとヒョードルなどの兵士達も、中々の実力を備えているらしい。

 ちなみに、マルティナの側仕えの少年ヨハンはレフの息子である。

 今日までクレンコフ家が、国力が低いながらも独立を維持して来たのは、民忠の高さと共に、兵の質が他と比べて数段高い事に起因している、と言っても過言ではない。


 大体クレンコフ家の陣容はこんな感じだ。


 ではバレスの質問にお答えするか。

 聞きたい事は山ほどあるからな。


「まずは現在クレンコフ家を取り巻く情勢を知りたい。簡単な地図でもあると嬉しいんだけど……、あるかな?」


 まずは地形が分からないと話にならないからな。


「そこまで精度は高くないが一応あるぞ。少し待っててくれ……」


 するとマルティナは棚の引き出しをごそごそと探り、俺達の前に地図を持って来て、なんの装飾も無い質素なテーブルの上にそれを広げてくれた。


「これがウラール地域の勢力図だ」


挿絵(By みてみん)


 俺は一先ず地図を眺める。

 ふむふむ……、って簡単に理解できるか。

 ここはじっくり考えよう。


 まずはクレンコフ家側の戦力だな。

 形の上では、アキモフ家とロマノフ家が同盟勢力になってはいるが、エロシン家にもいい顔をしているので、直接的な援護は無いと思った方がいい。

 だが、地図をよく見ると合わせて人口九千人の勢力が、エロシン家とガチンスキー家に対する牽制の役割を担ってくれているのが分かるな。

 それだけでも、十分効果はあるはずだ。


 次にエロシン家側の戦力分析だ。

 エロシン家に、シチョフ、バラキン、ガチンスキーの三家が従属しているとの事だ。

 シチョフ家は元姻戚関係で、クレンコフ家の元側室が嫁いできた家である。

 四家の人口は合わせて約四万七千人だな。

 一見、国力の差は圧倒的だが、敵も少なからずいるようだ。

 その為、やりあう事になっても全兵力をこちらに差し向ける事は出来ないだろうな。


 最後に中立陣営だ。

 バロシュ家の人口一万人を筆頭に、チュルノフ家が人口六千人、チェルニー家が人口四千人だ。

 チュルノフ家とチェルニー家が姻戚関係にあり、バロシュ家はこの地図には記載されていないが、西に隣接する人口一万五千人を擁する豪族、ピアジンスキー家と姻戚関係にあるらしい。

 この三家はエロシン家連合と衝突を繰り返してきているようで、エロシン家にとっては目の上のたんこぶの様な存在みたいだ。


 うん、大体こんな感じか……。

 恐らくエロシン家は、クレンコフ家がマルティナに代替わりしたのを切欠に、精鋭揃いのクレンコフを吸収し、そのままアキモフ家とロマノフ家を盗る算段でも立てているのだろうな。

 そして戦力も増え、後顧の憂いも無くなった事で、改めて南部三家を撃破し、ウラール地域を統一する腹積もりなのかもしれないな。

 だと考えると、エロシンがマルティナを側室に迎えようと言う、申し出も納得いくか……。


 続いて、もしエロシンがクレンコフ家に攻め入った時の、予想を立てるとするか。

 クレンコフ家の動員兵力はマルティナに聞いたところ、出兵時は五十人が限界だそうだ。

 大体戦国時代の一万石、つまり約人口一万人で、二百五十人前後の兵力動員ができると考えればいいかな。

 

 それを基準に考えると、エロシン家が約七百五十人、他の三家が約四百五十人の合わせて千二百人か。

 これが全部クレンコフ領に押し寄せてくるとしたらどうだろう。

 恐らく、撃退は出来ると思うが、被害ゼロで済ます事は難しいだろうな。

 だが、エロシン家が攻め込むにしても、領土をがら空きにする訳にはいかないので、南方三家に対する抑えとして三百五十人、アキモフとロマノフの二家に対する抑えとして百五十人と言った所は必要だろうな。


 と仮定すると、動員兵力は約七百人って所か……。

 うん、半分近くまで減らせたな。

 他家をさらに焚きつける事が出来れば、その数はもっと減らせると思うのだが……、現状はそれを求めるのは難しそうだ。

 

 地図から思い浮かぶのは粗方こんな感じかな。

 これ以上の戦略はもう少し話を聞いてから決めることにするか。


「成る程、大体ウラールの勢力関係は頭に入った。あと気になるのは、ナターリャさんやバレスさん、それに俺やリリのように、すば抜けた力を持つ者の存在だ。それが居るか居ないなで、戦術の組み立て方が異なってくるからな。その点はどうなんだ?」


 するとバレスは自信に満ちた表情で、


「恐らくエロシン家や他の三家の中に、わしに敵う奴は一人も居らぬでしょうな。これまで、エロシンの命でバロシュやピアジンスキーなどとの争いに、何度も駆り出された為、奴らの内情は知っておるんですわ。強いて言うとすれば、エロシン家当主のヴィクトルですかな。あの男はゲスい性格だが、魔法の腕は中々ありましてな。恐らく、家宝の魔道具込みで、マルティナ様より少し上位の実力はあると思いますわい。後の者は烏合の衆で、せいぜいCランク程度が数名いる位でしょうな」


 と厚い胸板を張りながら言って来た。


 ふむ、これはいい話だ。

 一人で戦局を左右できる人間が少なければ、こちらが有利になるのは間違いない。

 

 気になるのはヴィクトルだが、マルティナより少し強いと言う事はBプラスからAマイナス程度か。

 ヴィクトルにはそれなりに注意が必要だな。

 残りは雑兵に毛が生えた程度か……。


「その話を聞いて安心したよ。これなら最悪攻められても、撃退する事は出来そうですね」


 こちらにはAランク以上が四人いる。

 さらにマルティナとレフとセルゲイがBクラス、ビアンカとチカはCランク以上の実力はあるだろう。

 これだけの戦力が揃って籠城すれば、何とかなりそうではある。

 

 たとえ、この山城を力攻めで落とせたと仮定しても、エロシン家は甚大な被害が出るだろうしな。

 だからこその、食糧を切ると言う搦め手を仕掛けてきたのだろう。


「ハハハ、わしとナターリャ様が居れば、易々と落ちんわ。それに秀雄殿が加われば、鬼に金棒よ!」

「その通りですな」

「まるで万の援軍を得た気分だよ」

 

 三騎士が口々に俺を褒め称えてくれる。

 悪くない気分だ。

 だが余計な事に、バレスはでかい声で話したかと思えば、俺の背中をばんばんと叩く。

 いてーよ、振動が背骨から頭まで響いてきたじゃねーか。

 少しは自分の力って物を考えやがれ。

 

「そうよねー、秀雄ちゃんとリリちゃんの魔力はエルフの私が見ても、異常な程高いものねー」

「そっ、そうなんですか」


 ナターリャさんにはつい昨日のイメージが残っているのか、喋りに腰が引けてしまうな。

  

「ええ、秀雄ちゃん自分でも気付いて無かったのー。あなたの魔力量はエルフの中でも中々いないわよー。それにまだまだ伸びそうだし、潜在能力は私でも分からないわ」


 そうなのか。

 エルフが言うのなら間違えないだろうな。

 だがナタ-リャの口ぶりだとトップクラスではないようだ。

 潜在能力に期待して、頑張らないとな。 


「ナターリャさんに言われたら心強いですよ。これからも鍛錬を頑張らないといけませんね」

「ふふふ、せっかくだから秀雄ちゃんも、みんなと一緒に練習しましょ。楽しみにしててねー」


 えっ、それはなんか怖いんですけど……。

 でもせっかくエルフに教えてもらえるんだから、それを逃さない手はないな。


「ええ、状況が落ち着いたらぜひお願いしますよ。よし、これでこの辺りの情勢は大方掴めたな。後はこの村を見て周りたいのだけど、案内して貰ってもいいかな。それに、食糧も早い内に配らねばなるまい」


 籠城した場合を考えて村の構造を把握しておくのは大事だからな。


「ああ、では私が案内するよ。詳しい事はバレス爺の方が知っているから、一緒に来てもらおう。爺、いいかい?」

「もちろんですとも」


 こうして俺達は館を後にし、リリ、マルティナ、バレスと共に村の中を視察する事にした。


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