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第百五十四話 ゴルトベルガー家攻略戦①

書けるときに書いておこうと思います。

 大和元年十月十日


 松永軍三千八百は旧ホフマン領都ゼーヴェステンに集合していた。

 九月に入ってから各地の武将達には出兵の準備はするよう伝えており、十月に入り行動に移すよう指示をした。

 領地も広がり、武将数も増えたので合流に手間取るかと思われたが今のところ順調である。


 また松永軍のレフ率いる精鋭三百と、カラの町のガチムチギルマスの二百には別働隊として動きヴァンダイク家の警戒を行ってもらう手筈だ。


 さてそろそろ時間だ。


「出発だ!」

「了解なのでおじゃる!!」


 早速俺の一声にジーモンが反応し伝令する。


 実は最近小姓を増やした。

 これまでは主にジュンケーやジーモン、たまにクラリス程度だったが、武将数もそれなりに増えてきたので重臣らの優秀な子供たちを側に置き親衛隊を作ることにしたのだ。

 レフの長男で地竜の卵を盗んだヨハンだっけ、とかダミアンの長男ドミニクなど家臣の優秀な子弟や兵卒でも特に優秀な若者を二十人集めたのである。

 若いうちから俺に顔を覚えられ気に入られれば、将来土地持ちになる可能性が高いので、各武将たちから希望が殺到したが、あえてその中から定員二十人として人を厳選したのだ。


 そして、内十名はお茶くみや伝令などの役目をこなす桃母衣ももほろ衆、もう十名を馬廻りとして身辺警護にあたってもらう黒母衣くろほろ衆に分けた。

 ちなみに桃母衣衆の筆頭は敏腕メイドビアンカ、次席がクラリスであるが、彼女がピンクのマントを所望したため桃ということになったのである。

 一方黒母衣集の筆頭はチカである。次席が付き合いの長さからヨハンとしている。実力的にドミニクに奪われぬよう精進せねばならんが。

 

 親衛隊についてはこれくらいにして行くとしよう。


 ジーモン達の伝令が伝わり、四千近くの我が軍が動き出した。

 久しぶりの戦場だ、気を引き締めてかからねば。

 


---

 


 大和元年十月十二日


 松永軍はナヴァール川沿いの街道を進軍し、領境の町で一夜を明かした。

 そして翌日シュミット領へと足を踏み入れた。


「ヒデオー、お迎えがきたみたいだよー」


 リリがブーンと元気よく飛んできて使者の来訪を知らせてくれた。

 一時期気落ちをしていたようだが、見たところ回復したようだ。

 リリは聡い子だから俺としては心配はしていないが。


「おう。流石に礼儀を心得ているじゃないか」


 予定ではこの先の砦で落ち合う予定だったが、あちらも立場が分かっている者がいるとみえる。


「うん。なんか普通の男の人だったよー。ガチムチと思ってたら案外だったー」


 リリがガチムチなんて言葉を覚えてしまったのは俺の責任である。

 さて、それは置いておいて使者と会うしようか。


「どうせなら綺麗な女の方が良かったのだがな」

「そんなこといってるとマルちゃんに怒られるよー」

「そっ、そうだったな。産後鬱とかあるし気をつけないとな」

「だよねー」


 もちろん育児休暇など取れない。もし育児休暇と称して領土拡張を止め、女と遊びまくっていたら誰かよろしくシャレにならんことになりそうだ。


「まあ、しばらくはな……」


 粛々とローテーションをこなすか。


「秀雄様使者でおじゃる。メッツェルダー家の当主直々でおじゃりまするよ」

「パトリックという男なのじゃ」


 リリとおしゃべりをしていると、ジーモンとクラリスが使者の到来を告げに俺の下へとやってきた。


「ほう……。会おう、連れてこい」

「了解でおじゃる」

「わかったのじゃ!」


 それからしばし待つと、クラリスとジーモンが立派なお髭を蓄えた中年紳士を引きつれ戻ってきた。

 面を合わせると、中年紳士は一礼し口を開く。


「お初にあずかり光栄です。私はパトリックと申す、メッツェルダー家の当主であります」


 と丁寧な口調で名乗った。


「これはご丁寧に。私が松永家当主、松永秀雄だ。この度はこちらまでご足労懸けて痛み入る」


 俺はちゃんと礼を持って接してくれる人にはそれなりの態度を取るつもりだ。


「いえ、大したことではございませぬ。松永殿には当家を助力していただけるのですから」

「うむ、そう言ってくれるとこちらも楽になる」

「こちらこそ、松永殿がお若いにも関わらずその物腰、頼ってよかった。今しがた、改めて感じ申した」


 パトリックはそう言い、心からであろう笑顔を作った。


「そうかそうか、そう言われてはこちらも頑張らねばな」

「ありがとうございます」

「うむ。ところで、シュミット家とハイデル家のご当主はいずこにおられるのだろうか?」


 俺としては軽い気持ちで問うたのだが、僅かにパトリックの顔が曇ったのを俺は見逃さなかった。

 

「ハイデル家当主のドロシーは、手勢を引きつれゴルトベルガー家に備えるべく最前線の砦に詰めております。そしてシュミット家当主カミルは……、本拠にて松永殿をお待ちしております」


 パトリックは何かを悟られぬよう思っているのか、淡々と述べた。


「ふむ、ドロシー殿は分かるが、総大将たるカミル殿が悠々と本拠で構えているか……。失礼だが、そちらにそこまでの余裕があるとは思えないのだがな」


 最上の礼を尽くすのならば総大将であるシュミット家当主カミルが出迎えてもおかしくない。

 しかしきたのメッツェルダー家のパトリック。

 もしかしたら三国は一枚岩ではないのか……。


「いいえ、ただ今カミル殿は露払いを務めるべく、金蔵を放ち兵を募っているのです。決して邪な思いはございませぬ」

「そうか……、ならば合点が行く。あいわかった、顔合わせも済んだことだ。時間が惜しい、そろそろ出立するとしよう」

「松永殿のお心遣い感謝致します」

「うむ。では行軍開始だ」


 と俺は小姓らに伝える。

 とりあえずはカミルとやらに会ってからからだ。


 そして松永軍は、シュミット家本拠ルール城へ向けて動き出す。



---



 その日の夕刻。


 日が暮れる前までに松永軍はシュミット家が本拠ルール城へと到着した。


 にもかかわらず、四千近くもの大軍が姿を現しているというのにルール城の城門はなかなか開かれない。

 

「さて、これはどういうことだろうか?」


 流石に不快に思った俺は、轡を並べて進むパトリックに問いかける。


「これは……、何かの手違いかと……。しばしお待ちくだされ……」


 パトリックはそう告げると、急ぎ城門近くへと向っていった。


 ありゃ、なんだか雲行きが怪しくなってきた。

 まあいい、そんなときはイライラせずに茶でも飲んでよう。


「さて茶でも飲もう。リリ、クラリス、それにエミーリアも疲れただろう。門が開くまで休憩しよう」

「うん! アタシは緑茶ねー」

「妾は紅茶なのじゃ!」

「秀雄様、私は緑茶でお願いします」


 クラリスは桃母衣衆ではあるがそれ以前に俺の妹である。

 俺の隣でくつろいでもなんら問題はない。

 リリは言わずもがな、エミーリアも俺のお気に入りなので問題ない。


「よし、ジュンケー茶を頼む」

「了解しました!」


 美味しいお茶を淹れられるジュンケーに任せ、しばし時を過ごすとしよう。

 俺はピアジンスキー家から贈呈されたバイコーンから下馬し、ござを引かせ茶をたしなむことにした。

 やはり緑茶は美味い。


 そして、三十分後。

 ようやく城門が開かれる。

 すると城内からパトリックがシュミット家の面々を引き連れて近づいてきた。

 

 やっとのお出ましか。


「さて来たようだ。こちらも行くとしよう」


 待ちくたびれて少々気分を害していた俺は、再び馬に飛び乗りパトリックらの下へとバイコーンの巨体を操りバコバコと向う。


 両者の距離も縮まり相手方の姿が見えてきた。

 ふむ、あのパトリックと並んでいる小太りのおっさんがシュミット家当主だろうな。

 俺はそうあてをつけ、さらに馬を進めお互い顔を合わせる位置まで近づいた。 


「俺が松永秀雄だ。そなたらがシュミット家の者であるか」


 そして、巨馬に跨り、多少の覇気を出し威圧するように俺は名乗った。

 シュミット家の者たちに対する微妙な思いもあり、少々強硬な態度で出ることにしたのである。


 すると、気圧されたパトリックがすぐさま下馬をし、それに続き他の武将らも馬から降りる。


「松永殿、こちらがシュミット家当主カミル殿です」


 パトリックが早速カミルを紹介してくれる。

 するとカミルはパトリックを一瞥し、馬上から


「ワシがシュミット家当主カミルである。このたびは松永家のご助力感謝する」


 と、俺から見たらふてぶてしい態度でそう告げた。

 

「であるか……。しかしカミル殿は……、何故我らが助力に謝意を示しておきながら下馬をしないのだ? 礼を失するではないか!」


 この若造か格下かといった風な舐め腐った態度が癪にさわったので、俺は語気を強め言い放つ。


 するとカミルは苦虫を噛み潰した。しかし下馬はしない。ふてえ野郎だ。

 一方で横目に映るパトリックの額には、仕事で大ポカをやらかしたリーマンがごとく冷や汗が噴出している。

 その姿に俺は好感を覚え、パトリックは信用に値する人物と認識した。  


「松永殿が勘違いをしておられる。当家は先祖代々馬上から礼をするのが流儀である。かつての教皇の御幸においても当家は下馬しなかったのだ。聡明な松永殿は無論承知と思っていたのだが……」


 殊勝なパトリックに反し、カミルが述べた言い訳は身勝手なものだった。

 それに加え、言葉尻には歴史のない松永家を嘲笑しているかの意味合いも含まれていた。


 こいつは駄目だ。助けてやる価値もない。

 

「舐めた口を言うな! このブタが!!」


 俺は腰から軍配を抜き、瞬時にカミルとの距離を詰める。


 パチーン!


 二人の動向を見守っていた衆目の中の静寂が終わる。

 

 軍配でカミルの頭をぴしゃりと叩いたのだ。

 それなりの強さで叩いたので、パトリックは一撃で気を失い馬首に上半身を預ける。

 その姿は滑稽で、帽子がズレ、ハゲ頭が半分こちらを覗いている。


「このハゲブタが!! 調子に乗るな!! …………パトリック殿、俺はあなたを買って助力はするつもりだ。とりあえず、本日はここで陣を張る。明日には前線に向けて発つ。このハゲブタはあなたが責任を持って処理せよ」

「しょ、承知しました! この度は大変失礼を……」

「いやよい。謝罪より後のことは頼んだぞ」

「……はっ」


 俺はそう告げ、踵を返しルール城に背を向けた。



---



 時刻は午後十時あれから急ぎ寝床を作り、天幕にコンチンとエミーリアを呼び寄せ今度を対応を練っている。


「行き掛けの駄賃にここいらを盗ってしまおうか」


 気分がよろしくない俺は冗談めいて物騒なことを言う。


「まあ、それもいいかもしれませんが、ここはパトリック殿のお顔を立ててやらねば。それに加え、いまだハイデル家の当主とも顔を合わせておりませぬ」

「コンチン殿の意見に私も賛成です。一先ずはゴルトベルガー家を蹴散らしてからシュミット家の処遇を考えてはいかがかと」

「まあそうだな……。二人の言う通り、当初の目的を達さねば松永家は盗人呼ばわりされるやもしれん」


 面倒なことになったな。


 しかし俺はカミルの頭を叩いたことを後悔はしていない。

 面従腹背の時期はもう過ぎたのだ。

 これからは松永家の誇りを持った行動をする。でなければ家臣もついてこないだろう。


「秀雄様ー、パトリック殿でおじゃるー」


 ほう、この時間にやってくるとはな。

 さてなんの話しやら。




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人物紹介更新します。ちょいちょい変えていきます。


●松永家


松永秀雄:23歳 

統率:88→89 武力:82→83 知力:93 政治:79→81 魔力:126→132(初期値70)

兵科適正:歩A 騎C 弓C 魔法A 攻城C 水E

特技:異世界の英知(特定の条件下で知力がプラス20)

列伝:松永家当主。異世界転移した大学生。異世界で一旗揚げる為に頑張る。ウラール、ナヴァアールを手中にする大大名に。

備考:火魔法 冒険者ランクA 

所持家宝:ミスリルの名剣(武力プラス5)


リリ:年齢不明

統率:30(90→93:妖精を率いた場合) 武力:55 知力:82→83 政治:10 魔力:235→237

兵科適正:歩E 騎E 弓E 魔法A 攻城E 水E 妖精S

特技:妖精王の系譜(妖精を率いた場合、妖精兵の武力、魔力がプラス10)

列伝:妖精の貴種である花妖精。秀雄と出会い行動を共にする。秀雄の事が大好き。母は妖精の中でも偉い人。

備考:花魔法 風魔法

所持家宝:アイテムボックス上級


クラリス:8歳 

統率:10 武力:15→20 知力:42→45 政治:20 魔力:42→46

兵科適正:歩E 騎E 弓C 魔法B 攻城E 水E

特技:特に無し

列伝:ローザンヌ王国カルドンヌ辺境伯長女。家が滅ぼされ、その逃避行の最中に秀雄と出会い行動を共にする。秀雄の事をお兄ちゃんと呼ぶ。将来は結婚するつもりでいる。

備考:回復魔法

所持家宝:ミスリルの短剣(武力プラス2)、魔力の指輪(魔力プラス5)


ビアンカ:17歳 

統率:65 武力:72→77 知力:70→71 政治:50 魔力:25

兵科適正:歩C 騎E 弓D 魔法E 攻城E 水E 犬狼B

特技:敏腕メイド(主人に従軍したとき全能力プラス5)

列伝:犬狼族の貴種(傍系の端っこ)。奴隷に捕まった所を秀雄に助けられ共に行動をする。秀雄に忠誠を誓っている。秀雄の側室。

備考:メイド


チカ:17歳 

統率:50 武力:79→88 知力:31 政治:11 魔力:23

兵科適正:歩C 騎E 弓E 魔法E 攻城E 水E 猫B

特技:くの一(伏兵となった場合武力プラス5)

列伝:猫族の娘。奴隷に捕まった所を秀雄に助けられ共に行動をする。秀雄の事を好きになっていく。今は大好き。秀雄の側室。

備考:獣化


マルティナ:20歳 

統率:74 武力:55 知力:80 政治:69→72 魔力:83→84

兵科適正:歩C 騎D 弓C 魔法B 攻城E 水E

特技:氷の微笑(特定の条件下で魔力プラス5)

列伝:旧クレンコフ家当主。ハーフエルフ。秀雄に助けられ宿敵エロシン家を打倒する。普段は表情に出さないが、早々に秀雄に惚れていた。秀雄の正室

備考:水・氷魔法

所持家宝:アイテムボックス下級


ナターリャ:秘密 

統率:81→84 武力:64 知力:83 政治:66 魔力:150

兵科適正:歩B 騎D 弓B 魔法S 攻城E 水E

特技:氷の嘲笑5(特定の条件下で魔力プラス20)

列伝:エルフでマルティナの母。戦闘と酒で人が変わる。普段は緩い感じ。

備考:水・氷魔法 冒険者ランクA

所持家宝:エルフの涙


バレス:46歳 

統率:92→93 武力:105→106 知力:57→59 政治:11→15 魔力:39

兵科適正:歩S 騎A 弓C 魔法E 攻城C 水E

特技:先駆け3(先陣を任された場合統率、武力プラス7)、鉄壁3(殿を任された場合統率武力プラス7)

列伝:旧クレンコフ家筆頭騎士。現松永家筆頭騎士。豪傑として近隣に名を馳せる。軍学に興味があるが、知力不足は否めない。

備考:冒険者ランクA


レフ:32歳 

統率:71→75 武力:51→53 知力:75→77 政治:70→72 魔力:15

兵科適正:歩B 騎C 弓C 魔法E 攻城C 水E

特技:副将1(特定の条件化で全能力プラス2)

列伝:旧クレンコフ家騎士。現松永家騎士。高スペック家臣。使い勝手が良い。様々な仕事を任され能力上昇。

備考:無し


セルゲイ:31歳 

統率:65 武力:83→86 知力:45 政治:55 魔力:14

兵科適正:歩C 騎D 弓E 魔法E 攻城E 水E

特技:先駆け1(先陣を任された場合統率、武力プラス3)

列伝:旧クレンコフ家騎士。現松永家騎士。脳筋気味。

備考:無し


コンチン:23歳 

統率:82 武力:52 知力:91→93 政治:89→90 魔力:55

兵科適正:歩A 騎D 弓C 魔法B 攻城C 水D

特技:王佐の才1(特定の条件下で知力、政治プラス5)

列伝:ロマノフ家次男。とても有能。秀雄の直臣。

備考:回復魔法


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