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第百二十四話 内政視察 鉱業・農業

 大和元年四月二十九日


 ホフマン家への調略は順調に進んでいる。

 下準備が整い次第、ホフマン領へ出兵だな。

 時期としてはいつ頃だろう、早ければ六月には、遅くとも七月には出陣できそうだ。


 であるので、その合間を利用して内政を行おう。

 俺は、あれから松永領に居座っているヴィンセントさんらを引き連れて、旧クレンコフ領へと向う。

 目的は、鉱脈発掘だ。

 旧アキモフ領での銅山に関しては、すでに視察はした。

 今回は、もう少し上等な鉱物が眠っているのではないかという、スケベ心によるものだ。

 いくら銅を取っても、たかが知れているからな。

 せっかくドワーフがいるのだ、使わない手はない。

 目指すはその先よ。


 ということで、旧クレンコフ村に到着した。

 ついでに紙工場も視察する。


 ここでは栗鼠族の木材加工の技術が生かされ、これまで手間のかかっていた、木を細かく砕く作業が、とても簡単に行われるようになった。

 あとは、これを大釜で煮れば、日本でいうパルプの完成だ。

 それからは、紙をすいてから天日に干せば、紙の出来上がりだ。

 才蔵が、東方の製造技術が書かれた巻物を持参したため、それを使い効率的な生産が可能となった。

 

 この工場で作られた紙も、交易品として南に流してみよう。

 評判がよければ、増産を考えればいい。

 

 それにしても栗鼠族の歯はとても強いな。

 これまでの倍以上のスピードで、木を切り加工することができる。

 初めはあまり役に立たないんじゃないかと思っていたが、前言撤回だ。

 やはり亜人は、どの種族も一芸に秀でているみたいだ。

 

 さて、紙工場の話題はこれくらいにしよう。

 俺たちはクレンコフ村を出て、獣道を抜け、大山脈の麓へと向った。


「では皆さんお願いします」

「おう、任せてくれ」


 そうお願いしたのは、ドワーフ族三十人に対して。

 亜人領域から派遣されていきた人材だ。

 彼らにはこれから、鉱山開発はもちろん、武器・防具の生産や修理、築城など様々な分野で活躍してもらう予定だ。


「さて、俺とヴィンセントさんはここで待つとしよう。ジュンケー、茶をおくれ。リリは天幕を出してくれ」

「はいっ! ただ今お持ちします」

「オッケー!」

 

 俺たちは、ドワーフたちが散り散りになり鉱脈調査に向うのを確認すると、天幕へと入り茶をすすりながらくつろぐ。

 もちろんヴィンセントは、ウイスキーお茶割りだったが。


 そして、待つこと日の入りまで。

 時間にして八時間程、ようやくドワーフ衆が戻ってきた。


「お疲れ様。首尾はどうだ?」

「今日一日では正確にはわかりやせんが、手付かずの鉱脈が大量にあるのは確かですよ。中には銀山や金山があるでしょう。これから、さらに調査を進めていきまっせ!」


 とドワーフ衆の男が述べた。


「おお、金山に銀山が! これは凄いぞ!」


 この世界の貨幣制度は、金属がそのまま貨幣として扱える。

 つまりは、銀山と金山があるということは、そのまま現金をゲットということだ。

 

 例えば、年間三十トンの銀が取れるとしよう。

 銀貨一枚の重さは十グラム、つまり銀貨換算で三百万枚。

 金貨でいったら、三万枚だ。

 これは、石高でいうと四千石以上になる。

 しかも現金という流動性の高さを考慮すると、石高以上の価値が出てくるだろう。


 また、金が年間一トン取れれば、すごいことになりそうだ。

 これも計算してみよう。

 金貨一枚の重さは十グラム、つまり金貨換算で十万枚。

 石高でいうと、一万四千石を上回る。

 これも、流動性の高さを付け加えれば、石高以上になるはずだ。


「なんと……、もしやと思ったが……、やはり大山脈の麓には手付かずの鉱山がたくさんあるようじゃの」


 ヴィンセントさんも、興奮した面持ちだ。

 俺も、テンションが上がってきたぞ。

 

「ええ、鉱山開発が成功すれば、松永家の大きな資金源になるでしょう。ヴィンセントさん、よろしくお願いしますよ! もちろん礼は弾みますからね!」

「おお、任せておけ! わしが責任をもって開発してやるぞい。はっはっは、面白くなってきたのう」

「ありがとうございます」 


 ヴィンセントさんも乗り気だ。

 よしよし、面白くなってきたぞ。 


 しかし、ここで一つ懸念材料もある。

 大量の金・銀を手に入れたとしても、もし南の流通網の多くを教会が仕切っていたら、介入される恐れがある。

 ふむ……、ここは三公国との交易路も早々に抑え、複数の販路を確保するべきだな。

 幸い、地竜を売り払ったカラの町は、ナヴァールの隣だ。

 順調に勢力が拡大すれば、近い将来に傘下に置けるかもしれんな。

 

 さらに翼人族にお願いし、俺を大山脈の向こうに運んでもらい、大量買付けというのも悪くはない。

 俺らにはアイテムボックスがあるのだから、その利点をいかした方法もとれるだろう。 

 アイテムボックスを貸し与え大山脈を越えて交易をさせるのは、アイテムボックスを持ち逃げされるリスクがあるのでやめておこう。


 さて、将来の予測はそれくらいにして、今後の鉱山開発の計画を立てるとしよう。


「ドワーフ族たちが、ここで活動をするならば、松永家もそれに応えましょう。クレンクフ村からここまで街道を引っ張り、鉱山街を作りましょう。もちろん飯屋に酒屋、さらには出張コンパニオンなんかも呼べば、生活に不自由しないでしょう」


『おおー!』


 俺の言葉に、ドワーフ衆が反応し、パチパチパチと一斉に拍手を始めた。

 うむ、福利厚生の充実は社員を囲う上で大事だから、しっかりと整備してやろう。 


「流石は松永殿じゃな。ならばワシらも手の空いている者たちを、一斉に呼び寄せよう。そうじゃの……、大体二百近くは呼べそうじゃな」


 にっ、二百人かよ。

 そんなに移って大丈夫なのか?


「そんなに呼び寄せて平気なんですか?」

「大丈夫じゃよ。ドワーフ族は千五百人近くおるからの。二百人程度抜けても、問題ないわい。むしろ、よい出稼ぎ口が見つかって幸運じゃよ」

「そうですか。ならば、給金は弾まねばなりませんね」

「ははは、頼むぞい」

「分かりました。早速、領都に帰り指示を出しましょう。ドワーフ衆は、それまではクレンコフ村を拠点に行動をしてくれ。物資は潤沢に提供するから頑張ってくれよ」


『おう!』


 それから、俺たちはドーワフ衆をその場に残し、ヴィンセントさん共にクレンコフ村へと戻る。

 そして、俺はマツナガグラードへ、ヴィンセントさんは増援をつれてくるために、亜人領域へと別れた。


 さて、鉱山についての視察はこれで十分だ。


 次は農業だな。


 まずは、羊・山羊族が中心となり展開している酪農だ。

 彼らは、所属の性質上、動物の牛・山羊・羊らと心を通わせることができ、人族が酪農を行うよりも効率的な運営が可能だ。

 これまで、亜人領域では森林が多く広大な放牧地がなかったため、彼らの能力を生かしきれていなかった。

 だがそれも、松永領の牧草地を利用することで解決する。

 四圃制ように、クローバーを植えつけた牧草地に牛・山羊・羊を放牧させているので、それらの動物を彼らに面倒を見させれば酪農業としても使え、一石二鳥になるだろう。


 さらに耕地の開墾を、農業に秀でる鹿族に任せれば、作業効率は捗る。

 鹿族は、その石をも砕く強靭な角を使い、人族では掘り起こすのに苦労するような地面も、さくさくと開墾できる。

 彼らの能力は農業だけでなく、道路で整備でも役にたちそうだ。 


 まずは、鹿族に四圃制の導入が加速するよう、各村落に放牧地を作ってもらうとしよう。

 現在、四圃制は徐々に浸透はしているが、農民は今の三圃制で農作業をしながらなので、そこまでなかなか手が回っていないので丁度いい。

 そして、そこに家畜を導入して羊・山羊族に酪農を任せればさらなる生産力の拡大が見込めるな。


 うむ、これならば農業全体の流れにも好循環が生まれそうだ。

 

 当面の内政はこんな感じでいいだろう。

金貨・銀貨の重さは、計算しやすいよう十グラムに統一です。

金・銀の生産量は、石高と調整して考えます。



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