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第百二十一話 亜人軍団到着②

 それから、鰐族の代表の下へと向い挨拶を交わした。

 鰐族も三十人の戦闘員を引き連れてきた。

 これで獣人部隊は、合計二百を数えることになる。

 将は化け物クラス、兵も冒険者ランクで最低Cクラス以上の実力はあるはずだ。

 とんでもない精鋭部隊の完成だ。

 これにバレス隊が加われば、肉弾戦で負ける姿が俺には想像できない。

 ピアジンスキー家の騎馬隊とぶつかっても、勝ってしまいそうだな。


 続いて、羊・山羊族だ。

 彼らには酪農を手伝ってもらうことにした。

 また、鹿族には農業と道路整備を行ってもらう。

 そして、リス族には、その体を生かし忍として何人かを回し、それ以外は木材加工に携わってもらう。


 次は翼人族。

 今回は大鷹族ではなく、魔法を得意とする、白鳥などのカモ科の翼人が集まった。

 その数、十人。

 これで、空中からの魔法攻撃が可能になった。

 

 そして、兎族である。

 兎族は性別的に女性が圧倒的に多い。

 そのせいか、回復系魔法を使える者や、手先が器用で手工業を営んでいる者も多い。

『うさぎのしっぽ』という、もふもふとした毛玉は、兎族の体毛から作られており、素早さを上げる効果があるらしい。

 その他にも、同様の効果をもつ『うさみみ』や『バニースーツ』に『網タイツ』などの特産品がある。


 そんな多芸な兎族のなかから参戦してくれたのは、なんと族長の娘らしい。

 年齢は十六歳とのこと。

 いい感じである。

 早速挨拶をしよう、そうしよう。


「こんにちは、私が松永秀雄です」


 俺は、紳士ぶって、ウサミミちゃんに挨拶をした。

 

「まあ、あなたが秀雄様ですの!? 私は兎族代表のハンナと申します。あなた様のお噂はうかがっておりましたわ。比類なき武勇と知略をお持ちになり、亜人にも優しき心をもつ。ぜひお会いしたいと思い、今回参加させて頂きましたの。私も秀雄様ほどではありませんが、回復魔法を使えます。どうぞお役立てくださいね」


 とウサミミちゃんがこちらを振り向き、耳を左右に動かしながら目を輝かせ、上目遣いで挨拶をしてきた。

 かっ、かわいい!

 ただでさえ、小動物系の美少女なのに、ウサミミが付くとこれ程までに可愛さがブーストされるものなのか!

 まずいな……。

 俺は、己のリビドーが膨れ上がるのを抑えることができなかった。


「ひゃぅ!」


 あっ、しっ、しまった。

 初対面なのに、いきなりウサミミを触ってしまった。


「すっ、すまん。手が勝ってに動いたんだ。別に他意はないんだ。許してくれ」


 俺は、嫌われたくない気持ちと、いたいけな少女を驚かせたことに対する罪悪感から、素直に頭を下げて謝罪をした。


「もっ、勿体無いです。秀雄様が謝る必要はありませんわ。私の耳でよかったらいつでもどうぞ」


 ハンナは、まるで聖母のような慈愛に満ちた笑みを浮かべながら、ウサミミを俺の手元へと寄せてきた。

  

「いっ、今はその時ではない……」


 俺は何とか、その言葉を搾り出すことしかできなかった。


「わかりました……。ではまたお願いしますね。私たち兎族二十人のうち十名は回復魔法が使えます。残りの十人は温泉での就職を希望していますわ」


 ハンナはシュンとしながらも、気を取り直し、引き連れてきた兎族たちの紹介をした。

 

「おお、これはありがたい。回復魔法士、コンパニオン共に不足していたんだ」


 回復魔法士はもちろんのこと、コンパニオンも最近数が足りなくなっていた。

 街道整備の影響と、松永家の人口が増えたため、温泉街を訪れる旅行者が急増したのだ。

 もちろん、男の旅行者のお目当てはコンパニオンなので、質の高い女性の需要は高まっていたのだ。

 また、温泉街にはカジノを建設した。

 資金も余裕ができたためだ。

  

「でしたら、お母様にいって他国に流れている兎族をあ集めしましょうか? 彼女たちも秀雄様の下で働いたほうが、幸せだと思いますわ」


 そんなことまでしてくれるのか!

 これで、温泉街はすごいことになるぞ。

 ネコミミ、イヌミミに加え、ウサミミだ。

 もちろん人族もいるぞ。

 さらに他種族も加入させたら、大繁盛間違いなしだ。


「それは、ぜひともお願いしたい! 条件は年間で最低金貨百枚以上は保証する。できる限り声をかけて欲しい」

「そっ、そんなにもらえるんですの!? 流石は秀雄様ですわ。それなら、みんな喜んで駆けつけると思いますわ」


 それはよかった。

 金貨百枚程度なら、売れっ子キャバ嬢を雇うと思ったら安いくらいだ。

 一定以上の売上がある場合は、そこから先は歩合制にしよう。

 ならばやる気が出るだろう。


「ああもちろんだ。頑張ればその倍以上も稼げるぞ」

「すごいですわ! 亜人領域では、一人当たりの年間生活費が金貨六枚程度ですのに……」


 松永家では、一石を金貨七枚と定義している。

 だとすると、兎族の収入はそれより少ないことになるな。

 ただ、金貨を通さない市場も存在し、狩猟さ採取で食糧を補っているので、もう少し生活水準は上がるとみているがな。


「いいや。俺は、適切な額を支払っているだけだよ。兎族の女性には、それだけの価値があるということさ。自信をもったほうがいい」

「秀雄様……、ありがとうございます……」

 

 俺は、深く礼をするハンナの頭を撫でてやり、彼女の下から離れた。

 ウサミミは名残惜しいが、次はドワーフが待っている。


 そして、俺はドワーフ族の代表の下へと向う。

 むむむ、こちらも何か見覚えのあるおっさんが、酒樽を持ち上げてがぶ飲みしているぞ。

 これは……ヴィンセントさんじゃないか。

 なんで、彼がきているんだ……。


「ヴィンセントさん、お久しぶりですね。今日は御大自らどうしたんですか?」


 俺が声をかけると、彼は酒樽を置かずに一気飲みしてから、こちらに振り向いた。


「よう、松永殿。久しぶりだの。実は、松永家の方々にわしが武器と防具を作ったんじゃ。ぜひ使ってみてくれるかの? おい! 台車をもってこい」

「へい! 親方!」


 ヴィンセントさんが一声放つと、弟子のドワーフ連中が一斉に動き出し、台車一杯の武器・防具を運んできた。

 んん、乱雑に放り込まれているけど、一つ一つ見たことないほどの輝きを放っているぞ……。

 

「ねえヴィンセントさん、これってもしかしてミスリル……?」


 俺は、もしかしてと思い、どきどきしながら質問してみた。


「流石松永殿は博識じゃの。ご名答よ、全部ミスリルだ。対価は酒でいいぞよ」


 まじか……。

 やっぱりミスリルだった。

 

 ひい、ふう、みー……。

 俺は無言で、台車をまさぐりミスリル装備を数える。

 

「すごい。剣、槍合わせると百本以上ある。防具も胸当てと盾が五十づつ!? これで対価は酒って安すぎですよ!」


 流石に俺も、驚きを隠すことができなかった。

 ミスリル剣一本が金貨百枚としても、全部で最低金貨二万枚以上価値がある。

 これを市場に流したら、金貨五万枚以上の値が付きそうだ。

 代金が酒だけなんて、叩き売りというには温すぎるレベルだ。


「いいのじゃて。これはどうせ使う予定のないものじゃ。折角なら松永殿にあげたほうがよいんじゃよ。これを他国に流したら、金にはなるが危険すぎるので、売り飛ばせなかったんじゃ。だが、そなたなら問題ないじゃろう」


 なるほど、確かにこれを流通させたら、パワーバランスが崩れそうだ。

 亜人領域の首も絞めることになりかねんだろう。

 しかし、俺をそこまで信頼してくれているとは……。

 ありがたいな、感謝の念しか出てこない。

 彼には、精一杯の礼をしよう。

 高級酒を大量に送り、これからフェニックスの間に招待しよう。


「ありがとうございます。これは今後の松永家に必要なものです。素直に頂きます」

「うむうむ。これからの定期的に届けてやるからの。ミスリル鉱石は数が少ない上、精製に時間が掛かるので、大量には送れぬがの」

「いえ、送ってくれるだけで有難いですよ。ささ、どうぞ」


 俺は、早速リリに高級酒を出してもらい、栓を開けて差し出した。


「おお、悪いの。この味が忘れられなくての。なかなか人族の酒は入らなくてな」

「ではお礼に、定期的に送りましょう」

「本当か! それは助かる」

「ええ。ノブユキ、聞いたな」

「はい。分かりました」


 さらに、俺は次々とボトルを開けヴィンセントに差し出した。


 すると、それを見つけた他種族たちも、近くに集まり酒をせがむ。


「秀雄様。どうぞお飲み下さい」


 気付いたらハンナが俺の隣で酌していた。

 

「ああ、悪いな……」


 ウサミミの出す酒を断りきれず、つい一杯やってしまう。

 ここからなし崩し的に宴会が始まってしまう。

 すると、騒ぎを聞きつけた者が、料理を運んできて、場の雰囲気はさらに盛り上がる。

 そして、最終的には城を挙げた大宴会となったのだった。

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