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第百四話 三国同盟と会談②

「ほら! 松永殿、飲め飲め! こんな可愛い犬狼族の娘だけでは飽き足らず、猫娘に、白黒エルフに、ウラディミーラ殿だとぉ。けしからん、けしからんぞぉー!」


 握手のあとは、会議は和やかに進んだ。

 そして、時刻も夜になり、親睦を深めるために食事をすることになった。

 折角なので、酒を少し入れたところ……この有様である。


 カールの嫁は、鬼族と人族の二人らしい。

 すでに跡継ぎもいるため、そう簡単に側室を増やすことができないとのこと。

 嫁たちの締め付けが厳しいんだとか。


 カールは、大いに俺のことを羨ましがっているが、実際にやってみろといいたい。

 

「まあまあ、カールさんにも、鬼族の嫁さんがいるだろうに」

「わいの嫁たちはそりゃあいい女やけれども、束縛すんのが玉に瑕なんですわ」


 これくらいが丁度いいぞ。

 今後シュトッカー家も忙しくなるのだから、体は大事にしたほうがいいよ。


「ははは、それは大変だな」


 俺も、近くにビアンカとウラディミーラがいるので、下手なことは喋れない。

 なので、適当に相槌を打つ。


「そうでっしゃろ、そうでっしゃろー。それにしても、松永殿は大したもんですなー。この年で嫁はんが五人とは、流石に勢いのある家は違いますのー。なあ、イアン、ゲオルグ」


 カールはワインをくいっと呷りながら、イアンとゲオルグに目を向ける。

 彼ら三人は幼少のころから、親分子分の関係だったらしく、イアンとゲオルグはカールに頭があがらないようだ。


「そうですね。自分などは一人で十分ですが、松永殿のような、英雄の器であられる方は違いますな」


 とはイアンの言葉だ。

 彼は、真面目な雰囲気である。

 常にカールの言動を気にし、ときには諌めてもいる。

 当家でいえば、レフに似ているな。


「俺も松永殿が羨ましいぜ。白黒エルフをゲットしているなんて……。これからは師匠と呼ばせてもらいます」


 とはゲオルグ。彼はエルフが大好きらしい。

 エルフの嫁を手に入れたいがために、三十手前にしていまだ独身。

 妾腹の男児がいるため、世継ぎには問題がないので、己がロマンを追い求めているとのことだ。


「そうよのー、そうよのー。こんだけ勢いのある松永殿と組めば、わいらも安泰やー」


 カールは酔いも手伝ってか、上機嫌である。


 こいつらとなら、上手くやっていけそうな気がする。

 

「おう、俺もあなたたちとは気が合いそうだ。今日は同盟成立記念に、飲みまくるぞー!」


 俺はリリに頼み、ローズ公国からお取り寄せした高級シャンパンを開けて、皆に振舞った。

 ついでに、村民にもご祝儀として酒を配っておいた。

 

 そして、宴会は盛り上がり、夜遅くまで続いた。



---



 翌日、俺もカールらも昼過ぎに起床した。

 二日酔いだ。

 しかし、まだ詰めの話がある。

 

 そのため、全員の頭が動くのを待ってから、交渉を再開した。


 その内容は、人質を送るかどうかについて。

 そして、両家の関所を廃止する点についてだ。


 まず前者について。

 松永家は、従属勢力も含めると、三国同盟の倍石高を有しているだめ、こちらから人質を送る必要はないと判断した。

 だが、それは建前で、本音は人質として送れる一門衆がいないのだ。

 ならば、嫁や譜代臣となるのだが、全員要職についているため、人質は不可能。

 俺の心情的にも嫌なので、そのような判断を下した。

 

 そして、三家に対しても、一門に関しての事情を説明し、人質は結構と断りを入れた。

 しかし、カールが五歳の娘を嫁がせたい、と言って引き下がらなかった。

 ならばと、家老クラスであるレフの息子のヨハンを挙げてみたところ、それでも構わないとの返事が返ってきたので、素直に受け入れることにした。


 ヨハンは現在、マルティナの側仕えをやめさせ、一人前にさせるため、忍の里に押し込んでいる。 

 ただ、寄子の息子では格的にまずいので、形式的に俺の養子にして箔を付けることにした。


 カールが一歩引いてくれたお陰で、結果的に両勢力は、晴れて婚姻関係となったのである。

 

 続いて、後者の関所についてである。

 松永家の領内は、エロシン時代に設定されていた通行税を撤廃してる。

『人』・『物』の流れをよくし、経済を活性化させるためである。

 また、南方へ『物』を流す予定でいるので、関所の撤廃は必要不可欠だ。


 それをカールに説明したところ、二つ返事で承諾してくれた。

 亜人領域から流れる品を、ファイアージンガー家やアホライネン家あたりに流す目的の商人が多くなれば、領内の活性化に繋がると踏んだのだろう。

 

 詰めの交渉は、大体こんな感じだ。

 

 それから俺達は、カールら三人と別れを告げ、領都への帰路に就き、翌日にはマツナガグラードに到着した。


 

---



 さて、これで年が開けるまで大きなイベントは無い。

 粛々と内政をこなし、種付けをする。

 やれることをやるだけだ。

 

 アキモフ家も年内には、国替えが完了するそうだ。

 ボリスの野郎は、出陣を見送ったくせに、国替えの下準備はしっかり済ませてやがる。

 まったく調子のいい奴だ。

 

 だが、次の戦では、これまでのように風見鶏でやらせるわけにはいかない。

 アキモフ領はすでに一万一千石にまで膨れ上がった。

 動員兵力は三百近くもある。

 以前のような百人程度ではない。 

 彼らにしっかり働いてもらわなければ、戦局が左右されかねない。


「段蔵」


 一声発すると、ドロンと忍が姿を現す。


「ははっ、お呼びでしょか」

「ああ、温泉旅行は楽しかったか?」

「はい。秀雄様のお心配りにより、それはもう最高でした」


 彼ら家族にはフェニックスの間を、俺の権限を使い宛がわせた。

 

「それはよかった。組合長に俺の名を出せば優先的に予約が取れるだろう。たまには里の慰安旅行にでも使ってくれ」

「ははっ」

「でだ、長期任務から帰還してい早々悪いのだが、お前には新たな指令を与える。明日よりアキモフ領に潜入しボリスの周辺を監視せよ。不穏な動きがあったら、すぐに証拠を取り知らせてくれ」


 これまで、忍の人数的な問題と、アキモフ家の国力を考え、常時監視することはしてこなかったが、そろそろ、方針を変えねばならないだろう。

 敵と領地を面し、石高も一万石を超える。

 手綱を握れなければ、弱みを握り排除する、もしくは隷属させる必要がある。

 

「承知しました」

「うむ、では頼むぞ」

「はっ!」


 段蔵は再びドロンと消えた。 


 さてボリスが、どのように出るのか楽しみだ。

 俺としては、素直に従ってくれれば一番よいのだがな。


 

---



 そして、年が明け、新たな元号『大和』が始まった。


 大和元年一月七日


 ノブユキから連絡が入る。


 亜人代表との交渉の日時が決定したと。

 一週間後にアキモフ村で開催するようだ。


 松永領まで引っ張り出すとは、ノブユキもやりおる。

 猫族や狸族、また有翼系はともかくとして、他の種族は日数を要するだろうに。

 鰐族や鬼族など遠方から駆けつける者たちには、感謝せねばならないな。


 時は過ぎ、一月十四日となった。

 俺たちは、アキモフ村へと向い、会議に備えていた。

 

 各種族の代表たちは、狸族の村で一度合流し、ノブユキが引率してくるとの話だ。


 午前十一時過ぎ、種族代表の面々が到着した、との報告が入る。


 俺は出迎えに行き、亜人代表団と顔を合わせる。


「皆さん始めまして。私が松永秀雄です。遠路よりご足労していただきまして、誠に感謝します。では食事の用意ができておりますので、会食がてらリラックスしてお話をしましょう」


 わざわざ、松永領くだりまできてくれたので、いきなり交渉を始めるのは失礼と思い、豪勢な料理を用意させた。

 さて、飯でも食いながら話合いといこう。

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