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第六十七話 「水のない加湿器の謎」

 その日、私立探偵・榊原恵一は神奈川県警の要請である殺人事件の捜査に関わる事になり、事務所のアルバイトでもある自称助手の女子大生・深町瑞穂と共に横浜市内の四階建てビルの二階にある部屋で県警刑事部の大内宏警部から事件の概要を聞いていた。

「被害者は有水乾太郎ありみずかんたろう、三十歳。職業は経営コンサルタントで、この『有水コンサルティング』という事務所の所長です。昨日、この事務所内で遺体となって発見されました」

「随分若い人ですね」

 瑞穂が感心した風に感想を漏らす。

「関係者の話だと、業界ではかなりのやり手だったと評判だったようです。ただしその分敵も多く、真偽不明ではあるものの、この仕事に就く前に何かよからぬ事をしていたのではないかという噂もあったようですが」

「殺害動機のある人間はかなりいた、って事ですか?」

「そうなりますね」

「……事件当時の状況を教えてもらえますか?」

 今まで黙ってじっくり現場を観察していた榊原の急な問いかけに、しかし大内は慣れた様子で軽く咳払いをして事件の詳細を説明し始めた。

「事件当時、被害者はこの部屋に一人でいました。出勤したのが午前九時で、その時にこの部屋に入るのを受付にいた秘書が確かに目撃しています。そしてその二時間後の午前十一時頃、予定通り来客が訪れたので秘書が部屋の中に内線電話をかけたのですが応答がなく、不思議に思った秘書と来客が部屋に入って遺体を発見したという流れです」

「つまり、その二時間の間に被害者は死亡したと?」

「えぇ。解剖した医師も死亡推定時刻が午前九時から午前十一時の間と判断していて、矛盾はありません。またその解剖の結果、死因は紐状の物で首を絞められた事による絞殺と判明しています。ただ、それとは別に死亡する前に鈍器か何かで頭部を殴られているらしく、出血こそなかったものの首を絞められた時点では意識が朦朧としていた可能性が高いというのが解剖医の所見です。いずれにせよ状況的に自殺や事故の可能性は考えられず、我々は殺人事件であると断定して捜査を行っています」

 そう言って、大内は現場の状況の説明に入る。

「この事務所は御覧の通り四階建てオフィスビルの二階にあって、廊下からまず受付や待合スペースのある部屋に入り、そこからこの部屋に入る仕組みになっています。現場のこの部屋に入る出入口は二ヶ所で、一つは受付のある部屋に通じる正面のドア、もう一ヶ所はこの部屋の端の方にある外付けの非常階段に出る非常口です。そして正面のドアについては、問題の午前九時から十一時の間、ずっとドアの前にある受付に秘書の方が座っていて、人の出入りがなかった事を証言しています」

「つまり、その秘書が嘘をついていない限り、正面のドアから犯人が入った可能性はあり得ないという事ですか」

「そうなります。その一方、非常口の方を確認したのですが、これが不用心な事に鍵が開けっ放しになっていました。なので、犯人の侵入口がその非常口である事はほぼ確定ですね」

「でも、非常口の鍵って普通は閉まってるんじゃ……」

 瑞穂が当惑気味にそんな疑問を言うが、大内はそれに対する答えをちゃんと用意していた。

「確かにそうなんですが、被害者は喫煙者でしてね。この部屋は火災報知器がある関係上タバコを吸う事ができないため、被害者は日頃から非常口から外付けの非常階段に出てタバコを吸っていたそうです。さすがに誰もいない時はちゃんと鍵を閉めていましたが、逆に本人が在室中の時はいちいち開け閉めをするのが面倒くさかったのか、鍵を開けっ放しにしている事も多かったといいます」

「要するに、被害者が在室していた時にはその非常口から誰かが入って来てもおかしくなかった、という事ですか」

「えぇ。まぁ、そういうわけで正面のドアの前に人はいたとはいえ密室殺人とかではないんですがね。ただ、逆に言えば外部も含めて誰でも非常口から入る事ができたという事でもあるので、むしろ容疑者が増えてその洗い出しに困っているというのが本音です」

 そんな大内の説明を榊原は何度か頷きながら聞いていたが、一通りの説明が終わると不意にこんな質問を返した。

「なるほど、状況は理解しました。ですが、こう言っては何ですが事件そのものはごくありふれた殺人事件です。わざわざ私に協力を依頼せずとも、地道に捜査をすれば警察だけでも充分に解決できるように思えるのですが」

 そんな榊原の問いに、大内は複雑そうな顔をして答える。

「それなんですがね……実は、現場の状況に不自然な点があるんです。もしかしたら犯人を特定する有力な証拠になる可能性があるのですが、意味がよくわからず、我々としても困っているというのが現状です。そこで、それらの疑問点ついて榊原さんに意見を伺いたいと考えた次第でして」

「不自然な点、ですか」

「えぇ。そこの被害者のデスクの横に加湿器がありますよね」

 その大内の言葉に改めてそちらを見てみると、確かにデスクの近くに小型の加湿器が備え付けられているのが見えた。

「見た限り、よくある加湿器のようですが」

「確かに加湿器そのものはどこにでも売っているようなものです。ですが鑑識が調べた結果、不思議な事にその加湿器のタンクに水が入っていなかった事がわかりましてね。その理由がどうにもよくわからないのですよ」

 大内は真剣な顔でそう言うが、そんな事を言われても瑞穂にはそれのどこがおかしいのか一瞬よくわからなかった。

「水がなかったって……だったら、それは単に加湿器が稼働し続けた事でタンク内の水が全部なくなっただけじゃないんですか? 殺害された後も加湿の電源が入れっぱなしだったら、そのままタンクの中の水がなくなっても不思議じゃないはずです」

 瑞穂が当然とも言える反論をするが、同時にそんな当たり前の答えだったら、大内がわざわざ榊原を呼んだりするはずがないとも思っていた。案の定、大内は深刻そうに首を振りながらこう再反論をする。

「もちろん我々も最初はそう思いました。現に鑑識が調べた時に問題の加湿器の電源は入れっぱなしでしたし、さすがに被害者が水の入っていない状態のまま加湿器の電源を入れるような事をするとは……ないとは言いませんが、かなり考えにくい話だと思いましたのでね」

「ないとは言わないんですか」

 瑞穂は思わず突っ込むが、大内は気にせず話を続ける。

「ところが、事件後に改めて関係者に事情を聴いたところ、被害者が出勤した午前九時頃に被害者自身が加湿器の水が切れている事に気付き、彼の指示で例の秘書がタンクに水を満杯にした事がわかったんです。被害者の遺体が発見されたのはタンクに水を入れてから約二時間後の午前十一時頃で、その三十分後には警察と鑑識が現場に到着して問題の加湿器を調べ、タンクの中に水がなかった事を確認しています。後で鑑識が同型の加湿器を使って実験を行った結果、満杯にした加湿器のタンクの水が完全になくなるのにかかる時間は、ずっと稼働させ続けたとしても十時間から十二時間程度。となると、多少減っている程度ならともかく、二時間でタンクに入った満杯の水が空になるなどという事はあり得ないという話になります」

「……ふむ、なるほど。確かにそうなると、話は大きく変わってきますね」

 榊原はそんなコメントをする。つまり今までの話をまとめると、加湿器に水を入れてから事件が発覚するまでの間に、事件現場で加湿器の水を使った何者かが存在するという事になるのだ。当然それは、この部屋で起こった殺人に何かしらの関係があると考えざるを得なかった。

「正直、かなり些細な事ではあるんですが、事件が起こっている以上は見過ごすわけにもいかないものでしてね。問題は、一体誰が何のために殺人現場で加湿器の水を使ったのか、です」

「まぁ、普通に考えれば『誰が』の答えは『被害者か犯人』でしょうね」

 榊原が極めて常識的な答えを言い、大内もそれを認めるように頷く。

「それについては同感です」

「一応聞きますが、現場で加湿器の水がどこかに使われた痕跡はあったのですか?」

 榊原の疑問に、しかし大内は首を振った。

「いえ、遺体やこの部屋の中に水をこぼしたような痕跡はどこからも確認できませんでした」

「あの、じゃあ観葉植物の植木鉢とか給湯室のシンクみたいに水があってもおかしくない場所に捨てられたとかはどうですか? そんな事をした理由はわかりませんけど」

 瑞穂が遠慮がちに意見を言うが、これは大内に否定される。

「見ればわかるように、この部屋には観葉植物や水槽のように水を捨てても大丈夫な場所は存在しません。また、この事務所の給湯室やトイレは隣の部屋の受付の後ろにあります。そこに行こうと思ったら一度部屋を出て受付を通る必要がありますが、さっきも言ったように受付にいた秘書は、犯行時間帯に誰も受付を通らなかったと証言しているんです」

「うーん、さっきから聞いてると、その秘書の人が滅茶苦茶怪しく見えてくるんですけど、どんな人なんですか?」

 瑞穂の質問に、大内は丁寧に応じた。

「秘書の名前は小荒侑香里こあらゆかり、二十五歳。大学卒業後すぐにこの事務所に就職し、今年で三年目になります」

「……何か、こう言ったらあれですけど、かわいい名前の人ですね」

「というより、名前の由来が物凄くわかりやすいな」

「えぇ。どうやら本当に親がその場のノリと勢いで決めてしまった名前らしく、本人も今までかなり苦労してきたようです」

「それでいいのか……」

 大内の補足情報に、瑞穂と榊原が何とも言えない複雑そうな顔をする。が、今大切なのはそこではない。

「話を戻しますが、実際問題、彼女が犯人だと考えると、事件の構図を推測するのがかなり楽になるのも事実です。事件発生時に被害者以外で現場の事務所内にいた事が確実な唯一の人物ですし、もし本当に彼女が犯人なら自由に正面のドアから出入りできるわけですからね。それに受付の後ろにある給湯室やトイレを使う事もできますので、目的はともかく、加湿器の水を処理する事もできます」

「ただ、さすがにそこまで単純ではないと?」

「えぇ。確かに一番怪しい人物ではありますが、彼女が犯人である事を決定づける証拠がないのも事実です。それにあまりにあからさま過ぎるのも確かなので、我々も慎重に捜査をしています」

「本人はどういう証言を?」

「犯行時間中はずっと受付に座って事務作業をしていたと言っています。もっとも、部屋に防犯カメラが設置されているわけでもないので、それを客観的に証明する事は不可能ですが」

「その間に誰かが事務所を訪れたりはしなかったんですか?」

「一緒に遺体を発見した来客を除くと、問題の時間に受付に姿を見せた人間は誰もいなかったと言っています。ついでに、現場の部屋からは物音も聞こえなかったと言っていますが、調べた所、この部屋の防音はかなりのものらしく、多少の物音程度では隣の部屋まで聞こえないと結論付けました」

「多少というと、具体的にはどれくらいまで?」

「そうですね……さすがに絶叫や本棚が倒れたレベルの音だと聞こえるようですが、普通の会話や適切な音量のテレビ程度では聞こえないと思って頂ければ充分です」

 ついでに言えば、被害者は頭部を殴られて意識朦朧の状態で首を絞められている。つまり、殺害時に被害者が隣室に気付かれるほど暴れたり悲鳴を上げたりする事はかなり難しかったと考えられ、そうした音が外まで響かなくても不思議ではなさそうだった。

「ところで、さっきの話だと遺体を発見した時、客が一緒だったという事ですが」

「えぇ、その通りです」

「その客というのは?」

保嶋頼人ほしまらいと、三十五歳。芸能プロダクションの社長で、被害者はこの会社の経営顧問をしていました。事件当日も経営についての相談をしにこの事務所を訪れたとの事です」

「その予定はいつ決まったものなのですか?」

「事件の四日ほど前、電話でアポイントメントがあったと小荒秘書は証言しています。実際にその約束通りの時間……つまり、遺体発見時刻の午前十一時頃に訪れたとの事です」

「事務所に来るまでの行動は?」

「その辺で時間を潰していたと言っていますが、明確なアリバイはないようです」

「では、遺体発見後の行動は?」

「二人で倒れている被害者に駆け寄り死亡を確認。その後、それ以上現場を荒らしてはならないと二人一緒にいったん受付の部屋に戻り、そこから小荒秘書が受付の電話で救急と警察に電話をしたという事です。その後は、警察が駆け付けるまでおとなしく待機をしていたと」

「つまり、遺体発見後にどちらかが何か小細工をする時間的余裕はなかった?」

「そうなりますね。もちろん、どちらかが加湿器に触れたというような事もなかったようです」

「……一応聞きますが、その加湿器のタンクに残っていた指紋はあったのですか?」

 榊原の問いかけに、大内はすぐに答えた。

「鑑識が調べた所、指紋は一切付着していませんでした。有水氏の指紋はおろか、直前に水を入れたはずの小荒秘書の指紋もです」

「それって、犯人がタンクの水を使った時に指紋を拭いたって事ですよね」

 瑞穂の言葉に大内は頷く。

「現状ではその可能性が非常に高いと思われます。そう考えないと、水を入れた小荒秘書の指紋が付着していない事に説明がつきませんから」

 と、榊原はさらに別の質問をする。

「話は変わりますが、他の階にいた人間は何か異常に気付かなかったのですか?」

 その問いかけに、大内は首を振った。

「このビル、一階には建山高夫たてやまたかおという設計士の事務所、三階には植原佳久うえはらよしひさという司法書士の事務所があって、四階は空きテナントになっています。それぞれの事務所を経営する二人にも話を聞きましたが、事件発生時刻はそれぞれの事務所で仕事をしていたものの、特に変わった事はなかったという話です」

「非常階段から誰かが入ってきたというような事は?」

「なかったという事です。もっとも、仕事に集中していたので非常階段を誰かが歩いていても気付かなかっただろうとの事ですが」

「四階は空きテナントという事ですが、そこの状況は?」

「確認しましたが、呆れた事に非常階段の鍵が開きっぱなしになっていましてね。つまり、非常階段から四階の空きテナントに出入りする事は可能だった事になります。ただし、テナントから廊下に出るドアの鍵はしっかりかかっていたので、四階テナントからビル内に侵入する事は不可能だと思われますが」

「では、事件当時の一階正面からの出入りがどうなっていたかわかりますか?」

 榊原の間髪入れない質問に、大内はまたしてもすぐに答えた。

「事件当日の午前九時から十一時の間、このビルと契約している清掃会社の清掃員が一階フロアの廊下と階段の清掃作業をしていたのですが、その清掃員曰く、その時間帯にビルに出入りをしたのは、遺体を発見した保嶋頼人氏ただ一人だけだったという事です」

「その時間に間違いはありませんか?」

「実際に作業を行った灰本富也はいもととみやという清掃会社の社員に話を聞きました。事件当日は、午前八時から始業時間に当たる午前九時までの一時間で一階の設計事務所内の清掃作業を実施。その後、午前九時に設計士の建山氏が出勤してきたのと入れ替わりに事務所を出て一階の廊下やトイレの清掃を始め、そこから階段を経て二階と三階の廊下の清掃を行う予定だったという事です。で、一階の清掃を終えて階段の清掃をしている時に事件が発覚したという流れのようですね」

「当日に清掃作業が行われたテナントは一階の事務所だけですか?」

「えぇ。この清掃会社はビルの管理会社との契約でビルの共有部分……廊下や階段、トイレなどの清掃業務を請け負っていますが、各階に入居するテナントが個別にオプション契約をすれば事務所内の清掃もしてもらえる事になっています。現状では一階の設計事務所と三階の司法書士事務所がこのオプション契約を結んでいて、それぞれの事務所を二日に一回交互に清掃しているとの事です。事件当日は一階の設計事務所の清掃日でした」

 その言葉に榊原は何か引っかかったようだった。

「つまり、二階の現場に清掃業務は一切入っていない?」

「そうなりますね。もし入っていたら、始業時点で加湿器の水がないなどという事はあり得ないでしょうから。確認した所、備え付けられている加湿器の水を補充するのも清掃業務の一環という事になっているようですので」

「しかし、なぜ被害者はこの清掃オプションの契約を結んでいなかったのでしょうか? 人手も少ないようですし、普通なら契約した方が得だと思いますがね」

「それは本人が死亡してしまっているため何とも言えません。小荒秘書曰く、少しでも出費を減らすためではないかという事ですが」

「ふむ……」

 榊原はそこで何か考え込む仕草を見せた。

「どうでしょうか? これまでの情報から、何か意見はありませんか?」

 大内の問いに、榊原もすぐに答えるような事はしなかった。少しの間再び事務所内を見回しながら何かを考え込んでいる様子だったが、やがてポツリとこう呟いた。

「どうもね。少し前の京都の事件を思い出した」

「京都の事件って……あの裁判の事件ですか?」

 瑞穂の頭に、少し前に京都地裁を舞台に行われたある事件の裁判の光景が浮かんでいた。

「あぁ。今回の事件、その本質はあの事件と似たようなものだ。問題は、その上で犯人が誰かという事だが……論理を突き詰めれば、考えられる答えは一つだけだ」

 あくまで静かな口調でそんな事を言う榊原であったが、瑞穂の見るその目は、何かを鋭く見据えていたのだった……。


 それから一時間後、榊原は『その人物』を前にして、静かに自身の推理を告げていた。榊原の背後には瑞穂と大内が控えており、『その人物』が何か行動を起こしてもすぐに対処できるようにしている。

「私がまず、この加湿器の謎について考えた時に取っ掛かりとした疑問は、『加湿器の水を抜いたのは被害者なのか犯人なのか』というものでした。状況的に、現場にあった加湿器の水を処分できるのはこのどちらかでしかあり得ません。なので、最初どの可能性がありうるのかについて場合分けをしながら考えてみる事にしたわけです」

 そう言いながら、榊原は一つずつ考えられる可能性を潰していく。

「まず、被害者が加湿器の水を使った可能性はないと考えてもいいでしょう。なぜなら被害者に何か水を使う理由が存在したとしても、素直に給湯室に行って水道の水を使えばいいだけの話だからです。被害者に給湯室を使ってはいけないなどという縛りは存在しませんし、水道を差し置いて加湿器の水を使う理由も考えられません。よってこの可能性は排除しても問題ないと思われます」

 榊原はさらに論理を展開していく。

「次に、犯人がタンク内の水を必要とした可能性についてですが、これについてはこれまで警察が必死に考えたにもかかわらず有力な考えが出ない状態でした。どう考えても現場の部屋の中でタンクの水を使うような状況は存在せず、また実際に事務所内で水を使った痕跡も存在していません。ならば事務所から脱出した後に使ったのかとも思えますが、それならわざわざタンク内の水を使わずとも、その辺の水道を使うか適当な自販機で水を購入すれば済む話なのです」

 一息入れて、榊原はさらに話を続けた。

「以上から、被害者にしても犯人にしても、現場で加湿器のタンクの水を使う理由はどれだけ考えても存在しないと判断せざるを得ません。ならば推理の規模をさらに拡大した上で、もっと俯瞰的な視点から浮かび上がる疑問を検証する必要がある。すなわち、被害者と犯人のどちらがやったのかは別として、『そもそも実際にこの工作を行った人物の目的が、本当に加湿器のタンクの水を抜く事だったのか?』という根本的な疑問です」

 突然意味のわからない事を言い始めた榊原に、しかし『その人物』は黙って怖い表情を浮かべている。だが、榊原は一切気にする様子を見せず、自らの論理を展開していく。

「要するに、その人物……仮にXとしますが、そいつの目的は加湿器のタンクの水を使う事ではなく、あくまで別の何かの工作を行った結果として加湿器のタンクの水がなくなっただけだった。つまり、『目的』と『結果』の誤認が起こっていたという可能性です。加湿器のタンクの水がなくなっていたのはXの『目的』ではなく『結果』に過ぎなかった。今まで述べてきた推論は全てタンクの水がなくなっていたという事象をXの『目的』と考えて行ったものですが、その考えで答えが出なかった以上、Xの『目的』は別にあってタンクの水がなくなっていた事象はあくまで『結果』だったという可能性を考えていくべきでしょう。そしてこの場合、問題になるのはXが工作を行った『目的』です」

 一度言葉を斬り、相手の反応を確認しながら榊原はさらに言葉を紡ぎ出していく。

「Xは何らかの『目的』により現場で何らかの工作を行い、その工作の『結果』として満杯だったはずの加湿器の水がすべてなくなるという事態が発生した。では、そんな『結果』が生じてしまう工作とは果たしてどのようなものだったのか。鍵になるのは、タンクの水がなくなった事があくまで『結果』に過ぎない以上、その工作はタンクに直接何かをする類のものではないという事。にもかかわらずタンクの水がなくなったとすれば……Xが実際に工作を行った対象がおのずと明らかになるはずです」

「……」

「答えは明白でしょう。Xが工作を仕込んだのはタンクではなく、そのタンクを内包している加湿器その物だった。Xは何らかの目的で現場にあった加湿器に工作を行い、その加湿器に対する工作の結果として加湿器内のタンクの水が全てなくなる事となったのです。では、Xが加湿器に工作を行った理由とは何で、またXは具体的にどのような工作を加湿器に行ったのか? ここで仮にXが被害者だと考えてみても、その疑問に答える事は非常に難しい。被害者が加湿器に何か工作をしたとすればそれは間違いなく『犯行前』の話でしょうが、被害者が犯行前の時点で加湿器に何かをする理由などまず存在しないからです」

 ここで榊原は少し語気を強める。

「しかし、Xが犯人だと仮定した場合、犯人が加湿器に対して工作を行う理由がたった一つだけ考えられます。すなわち、犯行時に犯人にとって致命的な何らかの痕跡が加湿器に残ってしまい、加湿器そのものを処分する必要性に迫られた場合です。問題の加湿器は被害者が殺害された場所のすぐ近くにありました。状況にもよりますが、そんな位置にあった以上、犯行時に何らかの致命的な証拠が残ってしまった可能性がないとは言い難い。当然、犯人としては加湿器をどうにかしなければならないわけですが、問題はその方法です。一番手っ取り早いのは証拠が残った加湿器その物を現場から持ち出す事ですが、物が加湿器ですから持ち出したところで簡単に処分できる代物ではありませんし、当然警察は現場からなくなった加湿器の存在を徹底的に調べるはず。その状況で犯人の手元から加湿器が見つかれば致命的です。つまり、犯人は現場から加湿器を持ち出す事はできないわけですが、その加湿器に残った痕跡が隠滅不可能なものであった場合、犯人としては進退窮まった気分だったでしょう。そして、必死に考えた末に、犯人はある事に気付き、それを実行に移したのです」

 そこで榊原は一際声を張り上げ、『その人物』に自身の推理を叩きつけた。

「犯人は確かに現場から加湿器を持ち出す事はできなかった。しかし……『入れ替える事』ならできたはずです」

「っ!」

 その瞬間、『その人物』が大きく息を飲むのが背後にいる瑞穂にははっきりわかった。榊原は一気に畳みかけていく。

「犯人は加湿器に隠滅不可能な致命的な証拠が残ったのを受け、現場にあった加湿器Aを全く同型の加湿器Bと入れ替えたのです。まさか警察も問題の加湿器が犯行後にまったく別の加湿器に入れ替えられているとは思わないでしょうから、この工作は犯人にとって非常に有効なものであるはずでした。ただ、この時犯人は元々現場にあった加湿器Aと入れ替えた加湿器Bのタンクに入っている水の量の違いにまで意識が及ばなかった。結果、加湿器Aのタンクには水が満杯だったはずなのに、現場で見つかった加湿器Bのタンクの水が空になって発見されるという、第三者が見れば不可思議な状況が発生してしまったというわけです」

 そう言ってから、榊原は改めてジッと『その人物』を見据えた。

「さて、この推理が正しいとするならば、犯人の正体を特定するための条件がいくつか出現する事がわかります。つまり、『水のない加湿器』という一見事件と何ら関係なさそうな事象から、事件の真犯人そのものを特定する事が可能となるのです」

 そう前置きして、いよいよ榊原は事件の犯人の正体を暴きにかかる。

「まず、当然ながらこの入れ替え工作を行うからには、犯人は事前に現場にあったのと同じ型の加湿器を所有していなければなりません。しかも、加湿器の処分を行わなければならなくなったのはあくまで突発的な話であり、その加湿器を事前に用意しておくわけにはいかない。となれば、犯人は事件を起こした後でわざわざ自分の所有する加湿器を取りに戻るという作業をした事になります。しかし、いつ人が来るかわからない状況下で長時間現場を不在にするわけにもいきませんし、もっと言えば加湿器を持って外を出歩けばいくらなんでもかなり目立つ事になる。実際、ビル周辺の聞き込みでは白昼堂々往来で加湿器を持ち運んでいた不審な人間など目撃されていません。となれば、その入れ替えるべき加湿器Bがあったのは現場に近くて持ち運んでもビル周辺の人々に不審に思われない場所……端的に言えば、現場と同じビル内のどこかだったと考えるしかありません」

「……」

「第二に、現場にあった加湿器のタンク部分に誰の指紋も付着していなかった点があります。先程も言ったように、犯人は二つのタンク内の水の差異を見逃しています。つまり、この犯人は加湿器を入れ替えた時にタンクの確認をしておらず、従ってタンクに付着した指紋を拭くなどという事もしていない事になります。しかし、実際にはタンクからは誰の指紋も一切検出されていません。指紋を拭いていないにもかかわらずタンクに指紋が付着していなかったとなれば、問題の加湿器Bに水を入れた人物は、水を入れた際に指紋が付着しないような状況にあった事になる。よって、入れ替えられる前の加湿器Bは、そのような状況にある人物が存在する場所に元々あった事になります。そして、これらの条件を考慮すると、容疑者となりうる人物はたった一人しか存在しないのです」

 そう言うと、榊原は目の前で顔を引きつらせている『その人物』の名前を告げた。


「何か間違っていますか? 今回、有水乾太郎さんを殺害した犯人の……植原佳久さん!」


 その告発に、『その人物』……否、司法書士の植原佳久は、唇を噛み締めながら無言で榊原を睨みつけた。が、榊原は動じる事無く、植原をさらに追い詰めにかかる。

「まず、この加湿器入れ替えが事実だとするなら、秘書の小荒侑香里が犯人である可能性は低い。彼女は事件直前にタンクに水を入れた張本人です。もし彼女が加湿器の入れ替えを行ったのなら、タンク内の水の量の差異で入れ替えがばれる可能性に気付かないはずがありません。入れ替えがばれないためにも必ず加湿器Bのタンクに水の補充をしていたはずですし、彼女にはそれが充分可能だった。彼女自身が犯人だとすれば受付の後ろにある給湯室の水道を自由に使う事ができるわけですからね。それをしていない時点で彼女が犯人とは考えづらい」

「……」

「次に、小荒秘書と共に第一発見者となった保嶋頼人という芸能プロダクションの社長も犯人とは考えにくい。なぜなら単純に、彼には入れ替えるべき加湿器Bをその場で用意する事が不可能だからです。これは彼のみならず、外部の人間全てに当てはまる話です。となると、逆に犯人の可能性があるのはこのビルの他のフロアの関係者という事になります。該当するのは一階の設計事務所と三階の司法書士事務所の関係者です」

「……」

「また、第二の条件である『タンクに水を入れる際に指紋が付着しない状況』が成立する可能性を考えた場合、条件に合致する加湿器はこれまた一階と三階の物しかありません。なぜなら、この二つのテナントには清掃業者が入っていて、加湿器のタンクに水を入れる作業もその清掃業者が行っているはずだからです。そしてその場合、タンクの水を入れ替えている清掃業者は業務上の理由から確実に手袋をしていますので、タンクに指紋が付着しない事になります」

 その上で、と榊原は推理を進めていく。

「一階と三階、どちらの加湿器が実際に入れ替えられたのかという問題について考えてみると、条件に合致するのは三階の加湿器しか考えられないのです。なぜなら、一階の加湿器は事件直前に清掃業者の清掃作業を受けていて、その際に加湿器の水の入れ替え作業が行われているはずだからです。つまり、一階の加湿器のタンクは二階の加湿器と同じく事件直前に満水になっていた。だとすれば、入れ替えがあったとしても水の量が変化する事はありません。水の量が変遷するとしたら、清掃業者による水の入れ替えが事件の前日に行われ、そこから丸一日使った事でタンク内の水が減った状態にあった三階の加湿器が入れ替わりに使われた場合のみです」

 一呼吸おいて、榊原は改めて告発する。

「以上の根拠から、入れ替えられた加湿器Bは元々三階のこの事務所内にあった加湿器だったと考えるしかありません。となれば、この入れ替えが可能な人間はただ一人しか考えられない。言うまでもなく、事件が発生した時間帯にずっと一人でこの事務所内にいたと主張している、植原さん、あなたです」

「言いがかりだ!」

 植原が初めて榊原の言葉に反論した。

「いきなりやって来て無礼な事を……。そこまで言うなら証拠は? うちの事務所にある加湿器が現場の加湿器と入れ替えられたなんて証拠、あるわけが……」

 だが、そんな植原の反論を、榊原は容赦なく打ち砕いていく。

「事件が起こったのは昨日の事です。そして事件発覚後、現場となったこのビルには多くの警察関係者が出入りし、現在に至るまで出入りする人間や物品に対する厳しい監視が行われています。となれば、あなた自身はビルを出入りできても、入れ替えた加湿器Aを処分する事は不可能だったはず。そんな事をすれば、あまりにも目立ち過ぎてしまいますからね。なので、今この事務所にある加湿器こそが、事件現場で入れ替えた加湿器Aその物だと考えても問題はないでしょう」

 そこで一度言葉を切り、榊原はさらに畳みかけていく

「その上で何度も言うように、犯人は加湿器の入れ替えを行うにあたって内包されているタンクを確認する事を失念している可能性が高いと考えられます。となれば、現場にあった加湿器に指紋が残っていなかったのとは対照的に、この事務所の加湿器のタンクからは事件直前にタンクに水を入れた小荒侑香里さんの指紋が検出されるはずです。当然ですが、小荒さんが全く関係のないこの事務所の加湿器のタンクに触れられるはずがない。つまり、この事務所の加湿器のタンクから彼女の指紋が検出された時点で、加湿器の入れ替えが行われた事が事実として立証されるのです」

 その言葉を聞いて、植原はみるみる顔色が悪くなっていく。

「さらに、入れ替えた加湿器Aが処分できていないとなれば、そもそも加湿器を入れ替える根本的な原因となった犯人にとって致命的となる何らかの痕跡も、まだ加湿器Aに残ったままである可能性が非常に高い。いずれにせよ、この部屋にある加湿器を警察がちゃんと調べれば、全ては明らかになる事なんですよ」

 同時に、後ろに立っていた大内が植原に対して一枚の書類を突き付ける。

「植原佳久! 横浜地裁からこの部屋の加湿器の捜索差押令状が出ている。おとなしく引き渡してもらうぞ」

「……畜生っ!」

 植原はそう叫ぶと突如として身をひるがえし、事務所の奥にある加湿器の方へ駆け出そうとした。どうやら証拠になる加湿器を破壊してしまうつもりだったようだが、その前に間髪入れずに大内が植原にとびかかり、彼をその場で押さえつける。そしてその間に、控えていた他の刑事たちが室内に入り、問題の加湿器を素早く押収しにかかった。

「くそっ! 離せ! 畜生が!」

「おとなしくしろ! 今の言葉に反応した時点でお前の負けだ!」

 その瞬間、植原はハッとしたような顔をしたかと思うとがっくりとうなだれ、そのまま動かなくなってしまう。そんな植原に、大内は少し同情気味に声をかけた。

「まぁ、何と言うか、運が悪かったな。色々な意味で」

 植原は拳を握りしめたまま何も言わない。榊原はそんな植原の様子を厳しい表情で見つめていたのだった……


 その後、押収された植原の事務所の加湿器を県警の鑑識が徹底的に調べた結果、榊原の予想通り、内包されているタンクから本来なら付着しているはずのない小荒侑香里の部分指紋が検出され、植原の容疑は決定的なものとなった。さらに問題の加湿器をより詳しく調べてみると、わずかではあるが血痕らしきものを検出。DNA鑑定の結果、その血痕は犯人の植原自身のものである事が判明したのである。

 これらの事実を受け、神奈川県警は有水殺害容疑で植原佳久を正式に逮捕。小細工までして隠そうとした証拠が呆気なく暴かれた事で植原も観念したらしく、事の次第をおとなしく自供し始めたのだった。

「要するにお前は、被害者を絞殺した時に被害者が持っていたペンで手の甲を切られてしまい、その飛び散った血が加湿器に付着してしまったという事か」

 大内の追及に対し、取調室で植原は力なく頷きながら、やけくそ気味に吐き捨てるように供述した。

「あぁ、そうだよ。非常口からあの部屋に入って隙を見てあいつの頭を鉄パイプで殴った所までは良かったんだが、その後首を絞めている時に、本能的な反射行為なのか何なのかは知らないが、机の上に置いてあったペンで俺の右手の甲を切りつけやがったんだ! そのすぐ後に意識を失ってそのままくたばったが、それ以上に、そのアクシデントのせいで少しとはいえ加湿器に俺の血がついちまった事の方が問題だった。一度ついた血の痕跡を完全に消せない事くらい俺だって知ってるし、消せたとしても『何かを消した痕跡』が残っちまう。それが血だとばれた時点で、手に怪我をしている俺が疑われるのは目に見えていた。だから、もう加湿器ごとあそこから持ち去るしかなかったんだよ!」

「だが、さすがに加湿器が部屋からなくなっていたら怪しまれる。だから、お前の事務所の加湿器と現場の加湿器を入れ替えたというわけか」

「あぁ。あの部屋にあった加湿器が俺の事務所の加湿器と同じ機種だという事に気付いて、そのトリックを思いついた。すぐにあの部屋の加湿器を抱えて非常階段を使って自分の事務所に戻って、俺の事務所にあった加湿器と入れ替えた。でも、まさかその入れ替えた加湿器から全てを暴かれるなんて思っていなかった……」

 植原は悔しそうに言う。

「入れ替えた血痕付きの加湿器はどうするつもりだったんだ?」

「警察の封鎖が解除された後、ほとぼりが冷めた頃に処分するつもりだった。いくらなんでもこんな短期間でばれるはずがないと思っていたからな」

「凶器の鉄パイプは?」

「簡単に見つからないと思って四階の空きテナントの天井に隠しておいた」

 そう言いながら恨めしそうな視線を向ける植原に対し、大内はさらに切り込んでいく。

「有水乾太郎氏を殺害した動機は何だ?」

「そんなの、俺が言うまでもなく調べてあるんだろう?」

「それでもちゃんとあんたの口から説明してもらうぞ」

 大内の言葉に、植原はふてくされたように答えた。

「……ありきたりな話だよ。あの有水って男、今でこそ経営コンサルタントだが、五年くらい前まで怪しげな投資セミナーを主催していて、それに俺の妹が引っかかった。結論から言うと、妹はその詐欺まがいの投資セミナーが原因でかなりの額の借金を背負い、最後には鬱病になって自殺に追い込まれた。田舎の両親もその心労で倒れちまってね。まぁ、それだけなら恨みこそしても別に殺すまでの事はしなかったんだが、何のつもりか奴は一年くらい前に俺が事務所を構えていたこのビルの二階に経営コンサルタント事務所を開きやがった。で、偵察がてら正体を隠して奴と接触して、その時に思い切って理由をつけて妹の写真を見せたんだが……あいつ、何て言いやがったと思う?」

 そう言ってから、植原は顔を引きつらせてこう続けた。

「『あなたの妹さんですか? 綺麗な方ですね。機会があれば、ぜひともお会いしたいです』ときたもんだ。あいつ……人の人生を滅茶苦茶にしておきながら、その相手の顔も名前も全く覚えていなかったんだよ。だからこそ何も気付かないまま平気で俺の事務所の近くにやってきたってわけだ。その一言で、俺はあいつが妹の件で全く反省なんかしていない事をよく理解したよ。復讐なんて小説の中だけの話だと思っていたが……実際に自分がその立場になってみると、そんなの関係なかった。その後は、あの探偵が推理した通りだ」

 大きく息を吐いて、植原は虚ろな視線を大内に向ける。

「な、ありきたりだろ? 笑いたければ笑えばいいさ」

 だが、大内は笑うような事はしなかった。刑事という立場上、努めて無表情かつ事務的に取り調べを進めつつ、その眼にどこか悲しみのようなものが浮かんでいる事に、しかし植原は最後まで気付く事はなかったのだった……。

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