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混沌なる迷宮の王  作者: しいなみずき
Fランク迷宮
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迷宮レベル4 強者の接近

感想、評価等いただけると嬉しいです。

 薄暗い洞窟の中、人間の男二人に――子ども程の身長で、全身が緑色の肌に覆われており顔は人間のそれと比べ酷く醜い異形の化物――ゴブリンの群れが襲いかかっていた。

ゴブリン達は手に錆び付いた剣を持ち、奇妙な叫び声を上げながら人間の男に向かい突撃してしていく。


「オラアアアアアアアアア!」


 襲いかかってくるゴブリンに対し、身軽さを重視してか急所にのみ鎧をつけた男は、自身の身長程の大斧を縦に降り下ろす。

その一撃により無防備に突撃してきたコブリンは真っ二つに両断される。

 そのゴブリンから噴き出した血により返り血が掛かるが、男は気に止める様子もなく次々と襲いかかってくるゴブリン達に攻撃を続ける。


「おいゴードン! 数が多すぎる! 引くか!?」


「はっ! ジェイク、バカいってんじゃねぇぞ!  ゴブリンの二十や三十俺達にはどうってことねぇ!」


 男――ゴードンは仲間であるジェイクの質問に荒々しく答える。

 その間にも、まるで本当に人間の腕か疑いたくなるような太い腕で大斧をゴブリンの群れに向かって降り下ろしている。


「それによぉ――」


 大斧を降り下ろした形から僅かに宙に浮かせ横に凪ぎ払う。

その凪ぎ払いにより数匹のゴブリンが血を噴き出して、あるいは横に真っ二つになり死んでいく。


「こいつら皆殺しにすりゃあどんだけの魔石が手に入ると思ってんだ、よぉっと!」


 喋りながらも繰り出される大斧は、これといって特に決まった型は無く、ただひたすらに力任せの一撃だ。

しかし技術の欠片もなく物量にものを言わせているだけのゴブリン達には非常に有効的な攻撃方法である。

 もちろん力任せの一撃必殺ゆえその隙は大きく、既にゴードンは全身傷だらけだ。

 しかしその全てがかすり傷であり、ゴブリンの攻撃での致命傷を紙一重で避けているのが分かる。


「全く……仕方ない――」


 ジェイクと呼ばれた――緑と白を基本としたローブを纏い、手には腕の長さほどの木の杖を持った――もう一人の男はやや不服そうではあったが杖に魔力を込め、それをゴブリンの群れに向ける。


「――いけ、炎の矢(フレイムアロー)!」


 呪文を唱えるとジェイクが持つ杖の周りに炎の矢が五本出現し、ゴブリンの群れに向かい高速で発射される。


「グ!? グギャ――」


 その矢に気付いたゴブリンは悲鳴を上げ避けようとするも間に合わない。

 全ての矢を発射し終わるとジェイクは再度魔法を展開し――


炎の矢(フレイムアロー)!」


 ――群れに撃ち込む。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







「いやぁ大量大量! これだけの魔石がありゃ今夜は飲み放題だな相棒!」


 『魔石』。それは主に魔物の体内から取れるものだ。魔石の中には、魔物によって量がピンからキリまで有るものの、必ず魔力が貯まっている。

 この世界では、魔力はあらゆる空間に存在するのだが、魔力の固形物は人工的には作ることができない。

そのため自然の固形魔力である魔石や迷宮核などの物質は国家が基準を設け、それらを買い取っている。

 固形魔力の有用性は非常に高く、船などの乗り物のエネルギーや城の防衛設備、転移結晶やゴーレムの原動力等々非常に様々だ。

 もちろん魔物として最下級に位置するゴブリンから取れる魔石は決して高く買い取ってもらえる訳ではない。しかしゴードンとジェイクが殲滅したゴブリンは計三十七体ものゴブリンだ。

 いくら高くないといっても魔石は魔石。それだけあれば今夜は贅沢をしても利益は十分に出るのだ。


「ジェイクてめぇ……乗り気じゃなかったくせによく云うぜ。しかしあれだな。Eランク迷宮だからもう少し強いのが出るのかと思ったが……大したことなかったなぁ」


 現在彼らが歩いているのはEランク迷宮。本来迷宮には名前が付けらているのだがDランクまでの迷宮には名は付けられることは基本的にない。

FからDまでの、つまり生まれたばかりの迷宮はその難易度故消滅する可能性が高いからだ。


「まあまあ、実際あの数のゴブリンどもに大した損害も出さずに勝てたのは大きいぞ」


「まあな。この分ならEランク冒険者になるのも遠くねぇかもしれねぇなぁ」


 ゴードンとジェイク。この二人の冒険者のランクは現在Fランクとなっている。

 冒険者のランクはFからSSSまであり、それから分かるように二人のランクは最下級だ。

 ただしランクが最下級とはいえど冒険者。冒険者になるには国家が設けた一定の基準を満たさなければならない。つまるところその実力は国の折り紙つき。登録料さえあれば加入出来る訳では決してないのだ。

 因みにこの二人はFランクの中でもかなり優秀な部類に入り、期待のルーキーとして密かに期待や嫉妬の目で見られている。

 また冒険者のシステムとしてランクによって挑むことの出来る迷宮は決まっており、自らのランクとその前後のランクなら自由に挑むのが可能だ。


「おっと、そろそろ出口だ。といっても気を抜くなよ?」


「あったりめぇよぉ。けど折角のEランクだ。もう少し奥まで行きたかったぜぇ」


「ゴードン、そう文句を言うな。今日は様子見といったろ? それに明日からはここを狩り場にするんだからいいじゃないか」


「それは分かってんだがよぉ。やっぱり自分の実力がどこまで通じるか試してみたくてなぁ」


「……確かに俺達は他の同ランク冒険者と比べれば強いが自信過剰過ぎるのもどうかと思うぞ?」


「心配すんな。我慢くらいはできらぁ」




 二人は雑談をしながら迷宮を出てしばらく歩く。このEランク迷宮は、一帯の冒険者が拠点としている町『エディシス』から徒歩で二時間とやや遠い場所に位置しているため必然的に話のタネも尽きていく。

 と、そこで急にゴードンが立ち止まる。


「どうした? 魔物か?」


 ジェイクが少し焦ったように問いかける。ここは森の中だ。鬱蒼と木々が生い茂っている訳ではないがそれでも自分の魔法を使う分には相性が悪すぎる。下手したら森一帯を焼きかねない。


「いや、ちげぇ。アレを見てみろ」


「何? ……アレは、洞窟の入口か?」


「ああ、しかもありゃあ迷宮だぜ」


「なっ! 本当か? 来るときと同じ道と通ってるはずだがこんな所に迷宮なんてあったか?」


「いや、来るときには間違いなく無かった。……恐らく真新しい迷宮ってとこだろなぁ。魔力の量からみても間違いねぇ」


「ってことは……」


「……ああ」




「最高にツいてるってことじゃねぇか!」


「その通りだ! 今日は運がいい日ってこったぁ! どうする? 乗り込むか!?」


 新しい迷宮は、冒険者達にとって非常に価値のあるものだ。

 つい数時間前に出現した迷宮は便宜上Fランク迷宮となっているのだが、魔物や階層が他のFランク迷宮と比べ遥かに弱く浅い。

それはつまり、迷宮核に辿り着く可能性が十分にあり得るということだ。


「そんなこと聞いたってどうせ俺が言うまでもないんだろ?」


「まあなぁ! こんな絶好のチャンスを逃す意味がねぇ」


「おし! 行くぞ!」


 そして二人は、意気揚々と迷宮にと入っていった。 

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