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混沌なる迷宮の王  作者: しいなみずき
Dランク迷宮
32/44

迷宮レベル31 冒険者パーティ『無双双肩』

暫くの間更新が滞ってしまい、大変申し訳ありませんでした。

これから再開していこうと思います。

読んで下さっている方々に迷惑をおかけしました。

 五人組の冒険者パーティが、闇に包まれた洞窟の中、湿っぽさが感じられるその通路を、光結晶で辺りを照らしながら進んでいた。

 男が三人、女が二人。初心者が見せる恐る恐る進む、という素振りは一切見せず、慣れた様子で、更に周囲を警戒しつつ歩いている。

 Dランクパーティ『無双双肩』。エディシス内でもトップクラスに位置する冒険者パーティである。

 先日難易度が一段階上がったこの迷宮『宝物庫』は、その影響から急激に挑む人数が低下した。

 そのため、財宝が人の手によって持ち去られることも少なくなり、結果的に以前よりも稼げる量は急増していた。

 そこで都合が良いのが彼らのようなトップクラスの冒険者である。彼らの実力、特に『無双双肩』は相当にレベルが高い。Cランク迷宮『獣畜遺跡』に挑んでも、難なく中層まで行くことが出来る。

 故に、それよりも難易度が低いここ『宝物庫』は格好の狩場となっていた。


「ははっ、笑いがとまんねえな。別に難易度が高い訳でも無いのにこんなにも稼げるなんてよ」

「全くだ。まあ、少々物足りない感はあるが、それでも充分お釣りが来る」


 先頭に立つ、二人の男が面白そうに笑う。

 名前をナベルとマグと云う。この二人、服やアーマーからはみ出る素肌から、どちらも極限にまで肉体が鍛えられ、絞られていることが容易く推測出来る。

 最初に発言した男、ナベルは自身の背丈の四分の三ほどある、巨体な盾と見間違いそうになる大剣を背負っている。しかしそれは縁に見える鋭い刃から間違いなく剣だと云うのが分かる。


 また、どこか落ち着いたようで不満があるのを漏らした男、マグの得物は太刀。見るからに高級感漂う外見を裏切らず、正しくマグが大金を払って手に入れた品である。その鋭さと使い勝手さは、その大金を出しただけの価値はあったと思わせるに相応しいものであった。


 ちなみにではあるが、『無双双肩』。この名前の由来は主にこの二人にある。このパーティを結成したのはもう一人の男、ヤナイではあるが、主にこの二人の戦力があまりに高すぎた故。

 結成当時から周りよりも抜きん出た才能を持っていたが、それは実戦を重ねるにつれ更に周りとの差が大きくなってきていた。そのあまりの活躍ぶりからリーダーであるヤナイの計らいでパーティ名を『無双双肩』へと変えることとなった。

 二人の実力は非常に高く、純粋な戦闘能力だけならば、Cランクであってもおかしくないほどの強さを持っていた。ただし迷宮の攻略はただ強いだけでは上手くは行かない。

 罠にかからないだけの察知能力やスキル、迷宮の内部をしっかりと記憶し、ペース配分や魔物との戦闘時にもしも怪我をおった場合の治療手段。故にそれらを残りの三人が担当し、サポートする形でこのパーティは成り立っていた。


「バカ野郎ども、今は稼ぐことだけ考えろ。今が狙い目だ。もう少しすればメリットとリスクの差が激しいことに気付く奴等が増えてくる。なんとしてもその前に、この先金に困らねえほど稼ぎまくるぞっ!」

「おい、ヤナイ……お前ホントにガメツイ野郎だな。バカ野郎はてめえだ」


 二人の言葉に反応したリーダーであるヤナイの言葉に強く返したのは、遠距離からの魔法を得意とする女、イザベラである。飄々とした態度のヤナイとは打ってかわって、勝ち気な性格の女性である。


「でもこれが正論なんだなー。それに私はとっととお金貯めて親に認めてもらわないと行けないし」


 そして眠たげな口調でヤナイに賛同するのはエラ。口調と同じくやや眠たげな表情をしているが、彼女はこれで普通である。


 ナベルとマグを除いたこの三人は、主戦力たるナベルとマグをサポートする立場にあるが、一応全員が同期であるため、無駄な気負いは存在しない。

 戦闘時はヤナイが全体の動きの指示をだし、後衛から前衛をサポートする形をとる。ただし指示を出しても通用するのがイザベラとエラだけのため、基本的にナベルとマグはここの判断で動いているのだが。


「あっ……」


 ふと、眠たげな顔をぴくっと動かしてエラが僅かに声をあげる。

 その声により注目がエラに集まると、前の暗闇を見つめ、


「オーガだ」


 ポツリと漏らす。

 比較的高い感知能力系統のスキルを持つ彼女は、このように魔物の接近を事前に察知したり、罠などを回避したりと、割と重要なポジションを担っている。

 そして、その言葉に真っ先に反応したのは勿論ナベルとマグ。前衛職を担当しており、更にパーティの主力である以上、自らの実力に自信が無いわけがない。故に、彼らは自分の持つ能力を発揮できる場面を待ち望んでいる、といっても過言ではない。


「よしっ。で、何体だ?」

「ここの魔物は地味にタフだからな。オーガならまあ、少なくとも三、四体もいれば満足だな」

「……いや、一体だけなんだけど」


 しかし、彼らからしてみればこの迷宮にいる魔物など正直相手にならない。よって、複数体いないと相手にならないのだが……


「……ふー、またか」

「またかってさー、あんたらこのやり取り何十回繰り返せば飽きるの? え、バカなの?」

「ファキラんとこのエルといい、どうしてこういうバカが多いのかね……」


 魔物が複数体で移動する、これは低位の迷宮ではあまり見掛けない行動パターンである。それを踏まえた上で、ナベルとマグはエラが魔物を発見する度にその問いを繰り返す。

 エラからしてみればいい迷惑でしかない。


「仕方無い。折角だから合わせてみるか。コンビネーションの確認ってところだな」

「まあ、それでいくか」


 まるで実戦ではなく、剣の練習程度にしか思っていない口調。

 そうして、彼らは暗闇から現れたオーガを確認した瞬間、駆け出す。

 オーガもそれに気付き奇妙な鳴き声を上げながら突進してくる。

 最も早くオーガへと接近したマグは、得物である太刀を素早く抜くと迷いなく振りかざし、斬りかかる。

 対するオーガもなんとかマグに反応。手に持っていた棍棒を利用し、マグの攻撃を防御する。一瞬訪れる拮抗、しかしマグの方が遥かに威力で勝る。結果オーガは衝撃により後ろへと跳ばざるおえない。通常のオーガであれば、例え武器を持って対応が出来たとしても、力負けし地面へと転がるのが普通なのだが、この迷宮にいるオーガはそこまで優しくはない。

 後ろへと威力を逃がしオーガだったが、そこへ左側から追撃を加えるべく現れたのがナベル。背負っていた大剣を今は片手で持ち、刃をオーガへと向けた状態で駆ける。束を横腹に当てるように横に持ち、先端を後ろに向ける形で持った大剣は、次の瞬間にはオーガへと横凪ぎされた。それによって発生する風を切り裂く音は、この大剣の質量と威力を物語っている。

 オーガもこれを食らえば間違いなく死が待っていると理解しているようで、片手を大剣へと向け、迫る死からなんとしてでも逃れようとする。

 寸前、片手を大剣へと添えることで僅かに方向をずらし、また素早い動きで体を屈ませる。そうすることで、右手が粉々に、そして背の肉を微かに削ることになったものの、目の前まで迫っていた死を回避。

 ナベルはその判断力と身体能力に、目を見開く。だが――


「次が続かねえな」

「その通り、隙だらけだ」


 オーガがナベルの大剣を間一髪のところで回避した時には、既にマグが正面からオーガの元へと悠々と辿り着いていた。

 マグは容赦なく、奇跡的に大剣を回避したオーガの頭部を下から斬り上げる。

 それだけでオーガの首から上がずるり、と音を上げ、地面へと落下する。そしてオーガの頭部と胴体から血がドバドバと流れ出し、その場に血だまりが出来上がった。


「どうだった? 少しは練習になったかねえ?」


 ナベルがマグへと問う。しかしマグは目を閉じ首を左右に振る。

 お互いに練習としても大した役には立たなかった、という認識。またその証拠に、二人とも息一つ乱していない。


「ただ俺の攻撃を避けられるとはな。今までで一番じゃねえか? あのオーガ」

「確かに、今までは大体一撃、良くて二撃目で死んでたからな」

「まあ大方この迷宮で一番の古株だった、とかだろ」


 そこへ三人が到着すると会話を止め、素早くマグがオーガから魔石を抜き出す。

 そしてマグは魔石をイザベラへと投げ、受け取ったイザベラは慣れた手つきで魔石を鞄へとしまう。

 その時ふと、エラが何かを察知したかのように前を見つめた。






◇◇◇◇◇






「この町で一番強い冒険者?」


 ほとんどの者が、その男をみてまず真っ先に目が行くのは腕だろう。肩から肘にまでかけて、丸太かと疑いたくなるようなぶっとい腕を持つ。拳も殴るのに特化した、ゴツゴツと太いものである。これだけ聞けばどんな凶暴そうな男かと思うかもしれないが、しかし男の妙に優しげな顔がスキンヘッドの頭を持ってしてなお、雰囲気を和らげる。一言で云えば人から好かれそうな男である。

 いや現に、彼は冒険者兼情報屋として、信頼が欠かせない仕事を兼ねている。


「……どうした。云えないか?」

「いや、そうじゃないけどよ、それだけでこんな大金貰っちゃっていいのか?」


 その男の評判を聞き……というわけではなく、ただ情報屋を探していたら偶々見つけたというだけで彼に金を払い話を聞く男。白いシャツと黒いインナーを着用し、下は七分丈という、簡素な格好。そして背が高く、黒髪、更に珍しい黒い瞳を持つ。顔は非常に整っており、男であってもつい凝視してしまいそうなる。ここはギルド内に設置された酒場の中であり、基本酒を飲むことに集中して人のことなどどうでもいいやからが多いのだが、今日に限ってはその男への視線がかなりを占めていた。

 その視線が気になりながらも、好奇の視線と推測した男――フィラデルフィア、略称フィルは、気にしないでいた。


「……金のことなら、気にせずともいい。それよりも、他にも幾つか、聞きたいことがある。……ともかく、正確な情報を期待している」

「そうかい。それならいいけどよ……」


 男は躊躇いがちに、しかしフィルの言葉に開き直ったのか、言われた情報について話始める。


「このエディシスで上位のパーティっつったら、やっぱり『クライシス』が真っ先に上がるだろうな。だけどランク的にトップなのは『レッドクラブ』だ。ただ『レッドクラブ』に関してはあんまり情報がないし、異常な早さで昇進しまくってる『クライシス』とは同じくらいって見られてる感じだけどな。ま、よくも悪くも堅実なパーティだ。

 それから『白の剣』、『無双双肩』だな。この二つのパーティはどっちが上か、っていわれると悩んじまう。ちなみに『白の剣』は全体的に強いって感じだな。関係ねえけどあそこのエルって女のがたいと来たら……ホントに女かどうか疑いたくなるぜ。と、それに比べると『無双双肩』についてはナベルとマグって奴二人が突出して強いって感じだ。まあどちらにも云えるのは主力が前衛って事だな。普通は魔法を主体にしてるパーティが多いんだがな。

 それから上の四つには及ばないものの『ブルーカラー』と『烈火』。『ブルーカラー』は水系統の魔法の使い手でほとんどが構成されている異色のパーティだ。それとサイゴーが率いる『烈火』。このパーティは少し過激な連中が多い印象だな。特にサイゴーがなぁ……。あと有名なのっつったら『武雷』。なんでも全員が魔法を使わないことで有名だ。まあ、実力で云えば魔法が使えない分だけそりゃ使える連中には劣るがな、それでもある意味この町限定ならトップクラスだな。何せ魔法はおろか魔力を動かすのすらこの町では禁止されているからな」

「……なるほど。それで、ソロで有名な冒険者は、

いないのか?」


 テーブルに乗った黒いお茶、のようなものを口に含み、続きを促す。

 フィルが聞いた限り、最深部から監視していた頃、最初に脅威と感じたパーティは恐らく『クライシス』で間違いは無さそうであった。

 またこの町でトップクラスであった『白の剣』は、一日前か二日前にフィルが情報を聞き出し、既に殺したあのパーティであることも確認が取れた。

 だがまだ一つ気になるのが、以前トロールを一度斬りつけるだけで何もせずに殺した、あの目付きの凶悪な男。

 故にソロについての情報を進んで求める。


「ソロ、か。ソロで冒険者やってる奴は意外に多くてな。危険ではあるんだが、その分いざこざが起こることもねえし、報酬だって全部自分のものになるからな。だけど有名な奴って云ったらここでは一人しかいないな」


 その話聞き、『白の剣』から聞き出した内容と合致していることに安堵する。


「ベェネ・オルグレリア。最初は目立たない奴だったんだが、あるときソロでDランクに上り詰めやがった。ソロでDランクだぞ? パーティ組んですらいけない奴だって少なくはないってのに、それをソロで行ったんだ。それから一気に有名になっちまったんだ」

「……その話は聞いたことが、ある。しかし、有名な分だけ周囲から忌み避けられているらしいが、その理由はなんだ? 態度や性格の悪さ以外にでな」


 『白の剣』のメンバーはその明確な理由は知り得なかった。聞いた限りでは、態度の悪さと短気な性格から嫌われているようではあったが、中にはベェネのことを異常なまでに嫌うやからもいるという。

 ただ嫌われるなら分かるが、何故異常なまでに嫌う者が出てくるのか、それが妙に気にかかった。


「うーん……その理由なんだが、これはあんまり公になっていない情報でな」

「……金から追加で払おう。それでもダメだと云うなら他を、当たるが」

「へへへ……悪いね、旦那」


 やはりこういうところが慣れによる交渉上手、というべきなのか。フィルはそう感心する。


「あいつがDランクに上がった辺り、最初は人気だったんだ。なにせ個人の実力が何よりも保証されてるからな。それで色んなパーティから引っ張りだこ……だったんだが、持ち前の態度と性格の悪さで組んだパーティからどんどん評判が悪くなってな。すぐにベェネは不人気になっていったって訳だ。ま、ここまでは一般にも知られてる話なんだが、まだあってな。

 ベェネが完全にソロになる前に一時的に組んだ最後のパーティ。そのパーティがベェネと一緒に迷宮探索に出たあと、生きて帰ってきたのはベェネだけだったんだ」

「……迷宮を探索していた、ということは、何が起こっても不思議ではないはずだが。一人だけが生き残る。……その程度、よくあることではないのか?」


 その男の話に積もる疑問。しかし首を振って男は話を続けた。


 曰く、確かに一人だけが生き残るなどは不思議でもなんでもないことではあるが、問題はベェネがそのパーティと一緒に潜った迷宮にあった奇妙なもの(・・・・・)

 ベェネが戻り、ギルドにその旨を報告したあと、そのパーティと仲が良かった何人かで死体を回収しにいったという。冒険者とはいえは、死体をその場に置いておくよりも埋葬した方がいいという考えは存在する。

 そのために死体を回収しにいったのだが、数時間捜索したがそのパーティの死体は見つからず、代わりに見つけられたのは奇妙な七つの死体。装備はなく、肌をむき出しにしていた。

 それだけでも異様な死体だが、なにより問題なのは、その死体には顔が一切存在しなかった(・・・・・・・)ということ。切り取られた、のではなく、まるで元々そこには顔のパーツがなかったようであったという。

 加えて、そのパーティのメンバーはベェネを除いて計七人と、比較的大所帯なパーティであった。

 その死体の数はどう考えてもそのパーティと一致するが、証拠がなにも存在しないために、断定は出来なかったという。


「ちなみに顔無しの遺体は損傷が激しすぎたのと、何故か異常なまでに重すぎて(・・・・)持ち帰れなかったそうだ。ま、一番の理由は不気味すぎたからだったからなんだけどな」

「…………」

「ま、俺が知ってるのはここまでだ。この話があまり広まっていないのは、その遺体回収に参加したメンバー数人が後日行方不明になってな、だから皆これは話したがらねえ。この話は他言無用で頼むぜ旦那」

「……了解した。しかし、なるほど。実に、興味深い内容だった……」


 男の話を聞き終わった後、フィルが抱いたのは僅かな衝撃と焦り。もしも、その話を真実とした場合、ベェネという青年はとても厄介な存在になる可能性が非常に高い。

 恐らく、ベェネが持つのはなんらかの特殊能力(ユニークスキル)。そしてなによりも問題なのは能力を完全に使いこなしていると思われる点。


(……しかし、一体どんな能力を持っている……。能力の、要点は顔のパーツに関わる、のか? しかし、それではトロールに関しては、一体どのようにして……あのあと調べた限りトロールの、死体には不審な点は見当たらなかったが……)


 と、そこまで考え、考察を止める。能力には様々なものがある。それは使い方次第であらゆる現象を引き起こすことが出来るものや、フィルの【眷顧隷属】ように使い方がほとんどが決まっているようなものまで様々だ。

 そして恐らくへの能力は応用が効きやすいもの。現時点でもいくつかの推測はできるものの、可能性がありすぎて今ここで答えを導き出すのは至難の技であろう。

 ゼロの能力【イレウス】のように、普通では思い至らないような能力であるかもしれない以上、考察は時間の無駄である。

 それに、


(……予定通りならば、奴とは直接戦うことなど、まずあり得はしない、か。……『クライシス』、『レッドクラブ』と共に、勝手に死ぬがいい……)


「にしても悪いねえ、こんなに貰っちゃって……」

「……気にするな。それより確認だが――」

「分かってますよ、町の中央は領主の豪邸で間違いねえ。それから変なことを聞いてきたり、あんたと同じ瞳の奴も見たことねえ」

「……それなら、問題はない。……非常に残念だがな」

「しかし、なんでそんなこと聞くんだ? 冒険者のことはまだしも、町の中央って……」

「……その質問には、答える必要がないな」

「そうかい……。まあ、今回はありがとよ。俺の名前はジス。また機会があればよろしく頼むぜ旦那」

「……そうだな。また機会があれば(・・・・・・・・)、な」





◇◇◇◇◇






 ふと、エラが前を見つめる。


「何かくる……?」

「何か? わからないのか?」

「うん、よくわかんない」


 ヤナイが目を細める。エラがその存在を捉えながらなが、何が来ているのか分からないとは、一体どうゆうことなのか。


「あっ、オーガだ」

「おいっ……なんだそりゃ」


 それを聞き、ナベルとマグがそれぞれ武器を用意する。


「またオーガかよ。懲りないやつだぜ」

「懲りる懲りないは関係ねえけどな」


 そう軽口を叩くナベルとヤナイ。すると、少ししてオーガが現れる。

 そのオーガ、先程よりも少し大きく、武器は棍棒ではなく、鋭い鉄製の斧を持つ。


「さっきよりも少し強そうだな。おもしれえ」

「油断するなよ。あの斧、血がついている。どこかで、冒険者を殺してきたんだろう」


 そしてその体に傷はない。つまり、なんの苦もなく冒険者を殺せるだけの実力を持っているということ。

 しかし、それを分かってなお二人は笑う。

 それは自身の持つ実力の自信ゆえ。

 と、


「まずっ、気をつけてッ! うそ、急に来た!?」


 後方で待機していたエラが、血相を変えて急に叫ぶ。


「あん? どうしたエラ、急に――」



――ドスン。

 何か大きいものが地面とぶつかったかのような、そんな地響きが、五人に伝わってくる。

 それはオーガにも聞こえたのか、その正体を探ろうと後ろを振り向いた瞬間、オーガの上半身が叩き潰された(・・・・・・)


「なっ……」

「なんだこいつは……まさか、トロール、なのか?」


 目の前に突然現れ、オーガを叩き殺した、その正体はトロール。

 しかしマグが半信半疑なのはその外見があまりにも異常であるため。

 浅黒く染まった全身。所々には、より黒い斑点のようなものが見受けられる。目は一つが異様なまでに見開き、一つは焦点が合わずあらぬ方向を向いている。興奮しているのか、呼吸は完全に乱れ、明らかに普通ではない。全長は三メートルほどと、普通ではあるものの、その他の特徴は凡そ通常のトロールとは大きくかけ離れていた。更に手に持つ棍棒に付着するオーガの血が、このトロールの異常さを増しにして見せる。


「一体、なんだこいつは……」


 もう一つ。明らかに異常な点がある。

 普通の魔物は、基本的に魔物を攻撃しない。それは種族が違っていようがそれは当てはまる。にも関わらず、目の前のトロールはなんのためらいもなく、障害物を取り除くかのように同族を叩き殺した。

 だがなによりも問題は、その早さ。エラが探知してから向かってくるまで僅か数秒。エラの探知可能範囲から見ても、その速度ゆえ確実に逃げることが出来ないのがわかる。

 だが、


「落ち着け、この程度の魔物なら何体も仕留めた経験はある」

「……うん、大丈夫」


 マグが特に動揺を隠しきれていなかったエラとヤナイ、イザベラを安心させる。

 だが、なにより三人を安心させるのは、トロールの前に立ちはだかるのはこのパーティの実質的トップ、ナベルとマグだということ。

 敵を見据え、他の三人よりも深く相手の実力を見抜くこの二人だからこそ、見た目に惑わされず臆することがない。


「サポートは頼んだぞ。……おもしれえ。久し振りに本気を出すぜ」

「俺に合わせろ。隙をついて脚をもぎ取れ」

「任せろ」


 ナベルの言葉に決意を固めた三人は、既に補助魔法の詠唱に入っていた。

 そして睨み合う二人とトロール。


 補助魔法が二人に掛けられ、力が身体中にみなぎる。それを踏ん切りに、二人は地面を強く蹴りつける。

 それに合わせたのか、それとも単なる偶然か。トロールも二人に向かって駆け出す。

 先程容易くオーガを殺した二人だが、実は全く本気を出してはいなかった。

 本来前衛の者が魔物と戦うときには、大なり小なり魔力を身体中に巡らせ身体を活性化する『魔力強化』を使用する。それによって飛躍的に上がる肉体の耐久力と筋力によって魔物と対抗するのだ。

 だが二人はオーガとの戦闘時、驚くべきことに、全くといっていいほど魔力を使わなかった。通常の冒険者であれば『魔力強化』を使っても相当に危険な魔物を、素の身体能力だけで倒してしまうのだ。

 その二人が本気を出すということは、無論自身に『魔力強化』を施すということ。『魔力強化』で重要な点は、素の身体の能力と魔力の量。この二点で強化のされ具合が全く変わる。

 そして二人はどちらも兼ね備えていた――オーガを易々と殺せるだけの身体能力、そして常人と比べて圧倒的な魔力量。

 この二つが合わさることに加わえ、後衛からの補助魔法による強化。二人はまさに今悪魔的な力を持つといっても過言ではない。


 一瞬でトロールに接近したマグが、脚を狙って太刀を振るう。

 だがトロールはそれに即座に対応。駆けていた状態から後ろへと、地面を蹴りつけることによって回避。更にその異常に発達した筋肉で棍棒を振り上げ、降り下ろす――間際、あえてマグよりもワンテンポ遅れていたナベルが、自慢の大剣を脚に斬りつける。

 と同時、大剣を斬りつけた脚の部位から爆発が発生。


――魔法剣。それは魔法を付加された武器を指す。付加される魔法は様々で、それに籠められた魔法の発動の際には、魔力消費を抑えるための詠唱も、魔法を発動させるための呪文も、予備動作さえも必要ない。

 魔力を感知した時点では回避が難しい故に接近戦にて強い武器とされる。


 ナベルの持つ武器『爆撃』は本人の魔力が流れ込むことによって発動するタイプの魔法剣であり、また流し込む魔力の量によって魔法の威力が変化する。そしてその効果は、大剣が対象と接した場合に魔力による爆発を発声させるものである。


「バッ、ジィィイイィィ――」

 

 トロールが奇妙な叫び声を上げようとした瞬間、マグが喉を狙って跳躍し回転、その遠心力に力を乗せ太刀を横に凪ぐ。隙を晒していたトロールの喉は、マグの太刀によってバッサリと斬られる。しかし首から上が分離しなかったのは、直前にトロールが身を引いたからだ。

 その反射神経に、地面に着地し距離をとるマグは舌打ちをする。


「こいつ、なんて反射神経していやがる。俺の攻撃も一瞬で気付いてギリギリで避けやがった。当たっちゃいるがまだまだ浅い」

「次は後ろに回り込んで同時にやるぞ。それに、こいつはもうすぐ死ぬ……」


 舌打ちするナベルに、マグはそういうと不気味に笑う。

 後衛の方から二人の耳にコツンと、音が聞こえた。


 それを契機に、二人はトロールに向かって駆ける。

 喉を斬られ、脚も僅かだが焼けただれている。それに怒ったのか、それとも別の理由か。顔を不気味に変化させる。


「グッ、ジィッーーー」


 声にならない声を上げるトロールに、ナベルが大剣を横に凪ぐ。今度は当たらず、逆に振るわれた棍棒が右から迫る結果となる。

 間際、マグがいつの間にか回り込んでいた背後から太刀を切り上げた。だが驚くべきことに、完全に死角からの隙をついたにも関わらず、トロールが筋肉に力を籠め膨張させることによって硬化、表面だけしか切り裂けない。


「チッ……」


 しかしそれにより、トロールの攻撃が一瞬遅れたのも利用し、ナベルは体勢を建て直す。

 なんとか大剣を戻し、迫る棍棒を防ぐため盾がわりとする。両手で支え、地面に足をしっかりと置くことで支柱の代わりとする。

 それがなんとか完成した直後、今までに味わったことのない、あまりにも強烈な衝撃がナベルを襲う。


「が……ッ」


 それでもなんとか耐えきり、そしてしゃがみ込む(・・・・・・)

 そのナベルの上を通過するのは一本の雷の槍(・・・)

 『雷帝槍』。それは中級魔法に属する強力な魔法。三人で協力することで威力を上げ、発動時間を短縮した『雷帝槍』。その破壊力は相当なもので、トロールの腹部に直撃し、体内の中程まで進み、電撃を体内外へと撒き散らす。

 あまりの痛みのせいか、硬直し動かなくなったトロールをマグが後ろから切り裂く。が、全身が硬直しているゆえに硬く、上手く斬ることが出来ない。

 それでも斬り続けるが、自分の太刀ではこの魔物の筋肉は簡単に斬れないと悟り、ナベルに向かって叫ぶ。


「ナベル! 今がチャンスだ……ッ! ありったけの魔力を込めてこいつを殺せ!」


 このトロール、本来筋肉だけではなく皮膚そのものが異常なまでに硬い。通常の冒険者では、例えトロールが一切攻撃することなく、動くことなく、その条件でさえ倒すのはおろか、傷をつけるのでさえ至難の技であろう。

 その皮膚を易々と切り裂いているのは、マグの太刀の切れ味と、マグ自身の能力がずば抜けて高いからであるが、それを持ってしてもトロールに致命傷を与えるのは難しいと言わざるをえない。

 そのためナベルに必殺の一撃を与えるよう叫ぶマグであったが、しかし逆にトロールの重い一撃をその身で耐えたナベルの、朦朧とした意識ではそこまでの余裕は一切存在しなかった。

 斬りつけること数回、時間にしてみれば僅かと云って何ら問題がない時間の硬直から回復したトロールは、先程から自身に多数の傷を作っていた後ろにいる小賢しい人間を殺すためか、目の前で意識を戻したナベルを狙うよりも先に、マグに棍棒を振るう。

 だがそれは完全に判断ミスであり、背後を晒したトロールに、ナベルは渾身の一撃を叩き付ける。それは大量の魔力を魔法剣に注いだ一撃。

 結果として、トロールの背中が爆発し、マグを優に越えて吹き飛ぶこととなる。地面を転がり、しかしそれでも立ち上がるトロール。不死身かと思えるその巨人だが、ナベルとマグはその巨人の限界を既に見切っていた。後ろから流れる夥しい血の量。魔物である以上、無論まだ十分危険ではあれど、そのトロールは確実に死へと近づいていた。

 ふと、基本的に表情を表に出さないマグであるが、その彼が不気味に笑う。


「ハハハッ。もう動けない。ナベル、決めろ」

「たりめえよ」


 怒りなのか、それとも別の感情なのか、それともそもそも感情がないのかは分からない。だが不気味に顔を歪め、走る体勢に入ろうとしていたトロールが、その動きをピタリと止める。


――魔法剣、『無毒』。無毒とあるものの、毒がないのではなく、無味無臭、毒を感じないということを意味する。アリブレチレンという、ある魔生の植物からも取れるその毒素は非常に強力で、たったの一滴で人を死へと至らしめる。毒を感じる暇もなく。そしてこの毒、魔物にすら通ずる。あまりに強いこの毒ですら、魔物では即死とまではいかないものの、少しの間(・・・・)体が機能不全を起こし硬直状態へと至る。

 その少しの間(・・・・)だが、それは戦闘を行うこの状況ではあまりに長い時間。


 ナベルは魔力を大剣へと溜めながら、悠々とした足取りでトロールの目前へ。


「よう……」


 そう呟くと、自身の魔力を今までで最も多く注いだ渾身の一撃を、叩き付ける――同時、トロールが棍棒をナベルへと横凪ぎにする。

 それに不意を付かれたナベル。僅かに先手を制した一手は、間違いなく先に敵へと届く。だが敵に当たり爆発が敵を吹き飛ばす前に、自身がその棍棒によって潰されるのは必至。


 判断力。その点でおいても、ナベルはずば抜けたものを持つ。

 故にその先手を捨て、その分の時間を防御のために回すことを選択した。

 今回は二度目の防御。

 これは基本的に何においても云えることだが、経験とは非常に強みとなる。それがたった一度でも、その事柄をかなりの精度で予想できるということは、その分意識を他に割けられるということ。


 今回は防御ではない。受け流す――。


 流石に、痺れる体で無理矢理放ったために一度目よりも威力は無さそうだが、防御してただですむものではない。


 棍棒が大剣に触れた。その衝撃をいなすため、足でふんばり、両の手で大剣を支える。

 流せる。そう確信した刹那――足が浮く。


――理解不能。何が起きたのか。


 簡単だ。棍棒が大剣に触れる僅かに前。トロールは渾身の力を持って、足を大きく上げ、それを地面に叩きつけていた。


 その振動によって、足を下支えにしていたナベルは、棍棒を流しきれず押されるように大剣と壁に挟まれ、肉片と化した――


 もしも、これが一対一であったならば。


 後ろに控える後衛は前衛と違いある程度の余裕が存在する。故に、あらゆる状況に対応できるだけの準備を着々と進めていた結果とも云えよう。


――トロールの左腕、つまり棍棒を持つ腕が、肩から指先に至るまで凍りついているのは。


「うらぁッ!」


 死への覚悟から一転、希望が差したナベルに僅かな動揺はあったものの、戸惑う事なく大剣を叩きつける。

――爆裂。

 爆裂が巻き起こり、その威力より腹部が裂け大量の血が、肉片が、辺りへと撒き散らされる。

 トロールは声帯を潰されているのか声にならない声を上げ、後方へと大きく吹き飛んでいく。


 腹部が大きく裂けたものの、爆発によって損害の大きい箇所は逆に焼けて血が止まっている。致命傷には間違いないが、このトロールはどうやら戦いを諦めるつもりはないようである。

 立ち上がると同時、棍棒をナベル目掛けて槍投げのような体勢から放つ。

 ナベルはそれを大剣で弾き、トロールに向かおうとした瞬間、脇を高速で何かが横切った。


 マグである。マグにしてはあまりにも珍しい必死の表情を、ナベルは通りすがりに垣間見た。


――何だ。今棍棒を投げられ弾くまでの一瞬で何があった。

 そう思うと同時、理解する。

 トロールがこちらに背を向け逃走を、否、ナベルとマグらを仕留めにかかろうとしていた。


 トロールの最も恐るべき攻撃方法はなにか……。凄まじい威力を持つ棍棒による打撃攻撃……? それとも強靭な脚によっての打ち込み……? もしくは凶悪な特殊能力……?

 ……どれも違う。トロール最強の攻撃方法とは、ある一定距離の助走を必要とする、そこからの加速にある。その加速スピードは異常の一言。通常のトロールですら加速による攻撃は脅威的である。そしてこの個体は他のトロールよりも明らかに強い。ではもしそのトロールが加速による突進をしたら。

 現状でさえ苦しい戦いをしているというのに、食らえば即死は間違いがない。そして洞窟の通路という狭い空間にいる以上、それを回避することはまず不可能。


 それらの情報は、戦闘直後から二人の間で共通認識になるほど有名でもあり。しかも普通であれば逃走を計っても良いはずの肉体損傷でさえ戦うのを諦めない個体。故に、あのトロールが背をこちらに向けたのは、間違いなく逃走を目的としたものではない。

 それに気が付いたマグが、真っ先に駆ける。


「ここで、お前を逃がすわけには、いかない……ッ!」


 満身創痍。みるからにそうであるのが嘘のようにトロールの速度は早い。

 早い、が戦闘開始時に比べれば僅かに落ちる。


 追い付くか、追い付かないか。その狭間。

 マグがギリギリでトロールを追い、その後ろをナベルが追いかけ、更に後ろから後衛が追いかけながら魔法を放つ。


「――『雷帝槍』!」


 電撃の槍がトロールへと放たれる。それはマグから逃走していたトロールの脚へと、吸い込まれるように伸びる――が、紙一重的に一瞬空中へと足を浮かせる事で回避する。

 だがもう一発。初撃の魔力を極力抑えることで発動した連続しての『雷帝槍』。これがトロールの背中に刺さる。

 そこへすかさず止血の役目をしていた火傷痕へと刀を滑り込ませたマグ。狙いは見事的中、軟化していた傷口から大量の血が溢れだす。更にもう一撃。トロールの動きが完全に止まる。

 遅れて到着したナベルが、疲労を見せながらも、トロールの頭部へと持ち上げた大剣の一撃を――降り下ろした。






「た、倒した……?」


 エラが、少しびくついた様子で頭部を潰された生き絶えたトロールを眺める。


「ああ……流石に頭が潰れても生きていられるほど、こいつもヤバくはねえ……多分な。まあ、それよりもさっきは助けられちまった」


 マグの魔法剣『無毒』すら予想の十分の一の時間しか動きを止めることが出来なかったという、トロールの驚愕の免疫機能と回復力。

 一時はそれによりナベルが死ぬかと思われたあの状況、それを無事阻止したのは彼女ら三人であった。


「そうやって、助け合うのがチームだろ。お互い様だ」


 ヤナイが笑う。


「私もそう思うよ」

「わ、わたしも!」


 イザベラとエラがヤナイに賛同する。

 ナベルは少し照れたように――それもそうだな、と呟くと、


「問題は、こいつだな。なんでこんなやべえのがこんなとこにいやがる」

「俺の毒はCランクの『獣畜遺跡』の魔物でも十分通用する。……それ以上の魔物ってことか?」

「そ、それって、私達がBランクでも通用するってこと!?」

「バカ、あくまでも効く効かないは個体にもよるだろ。まあ、なんにせよこれはギルドに報告だな」


 目の前に倒れるトロールの魔石を、マグが取り出そうとした瞬間――


「楽しみね」


 綺麗な声がした。優しく、包み込まれるような、聞いているだけで癒されるような、そんな声だ。


「誰だ?」


 彼らが通ってきた道。そこから松明の光と一緒に、一人の女性が現れる。

 そして後ろには控えるようにして立つ二人の男。

 まず最も目につく、いや、目が無意識にいってしまうのは女性。その女性は髪の長いウェーブがかっており、その立ち振舞いは気品に溢れ非常に美しい。少しばかりほっそりとしているものの、肌は粉雪を連想されるほどに白く美しく、髪はいつまでも見つめていたいと思わせる深い黒に染まっている。

 美しい蒼色の瞳は、非常に整ったその顔の造形と合わさって、見る者を魅了させて止まない。


 後ろに立ち、松明を持つのは如何にも凶悪そうな男だ。

 睨むだけで人を殺せるのではないかと思わせる鋭い目付き。スキンヘッドの頭と低い鼻、そして無駄に整えられた無精髭が絶妙なバランスを取り合い、その顔つきをこれでもかと云うくらいに凶悪にしている。


 もう一人。青い髪を肩まで伸ばし、隣の男同様に整えられた無精髭は、そのスラリとした体型に、片方の男とは別の意味で非常に合っている。共通するのは鋭い眼光。


 この、まるで不釣り合いな三人。


「ああ、楽しみだわぁ。素敵な匂いがしそう……」


 その女性が嬉しそうに、そう声に出す。


「楽しみ、だと……?」


――ぐちゃりと。歪める。

 同じ女性ですら見とれてしまうほどの美貌を持った美しい顔が、突然不気味(・・・)に歪められたのだ。豹変と、その言葉がまさに相応しい。

 あまりの豹変ぶりに恐怖すら抱く五人。


「そう、楽しみ……これから嗅げるぅう、てめえらの血肉の匂いぃぃがなぁああぁあぁああ――」


 メリハ・ミハルチーク。最凶最悪の『魔女』が五人を見つめて、愉しげに笑う――――。


登場人物が忘れてて分かりにくい、という方がいれば登場人物紹介的なのを作ろうかと思います。


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