迷宮レベル30 『カラフル』
29話ミスって消してしまったため改めて投稿しました。
エディシスを囲い、町に入ろうとする者全てに立ちはだかる重厚な壁は、見ている者を圧倒さえ、計り知れない力強さを感じさせる。しかしそれは外から見た者の感想であり、壁の内側に住まう者にとって自分達を優しく包み込み、魔物や盗賊等から守ってくれる、云わば守護神となる。
その壁を前に、フィルはゼロに命令をする。
「……ゼロ、ここから先、誰に、何に対しても攻撃することは許されない。また私の許可無しに、魔法を使うことも、魔力を動かすことも、許されない」
フィルが今いるのは、町に入るための検問所。厳密にはその検問所を通り、町に入るために検問所への列に並んでいるところだ。
フィルの格好は、召喚された当初を除き、初めてローブ以外の服装である。
黒のインナーに白のシャツ、下はラフなスタイルで茶色の七分丈。フィルは遠くから並んでいる旅人を何人か観察し、取り敢えず目立たなそうな服装を創造魔法により製作したことでこのような服装となった。思ったよりも元いた世界に近い服装であったことに、フィルは少々驚いていた。
しかし問題はゼロであった。町に入るにあたって致命的だった幾つかの内面的な問題点は、フィルの下した命令によって解決できたものの、ボロボロのローブに異様の異様な雰囲気は命令では隠蔽することが叶わなかった。そのためローブに関しては上から被せて着せることで頭以外を目立たなくさせ、残った頭部に関しては魔法により幻覚で対応した。最大限隠蔽したものの、気付かれるかどうかは結局運次第だろう。
しかし検問所とはいってもここにはそこそこの数の人間が往来するため、よっぽど服装が汚いだとか、あからさまに怪しいなどではない限りバレることはない筈だ。
冒険者などは、基本的に迷宮に向かうなどするときに自分の名前と帰還予定日を届けてから出掛けるが、その理由はギルドが生死の判断がしやすいように、と云ったものだ。この理由、冒険者達は知らない者も多く、ただギルドからの呼び掛けにより習慣的にしている者が大半らしい、とフィルは例の二人から聞いていた。
「……まあこのような社会制度である以上、それは仕方のない事か。ある程度までならば力で解決できる。それが、情報の重要性を理解出来ない者が多い、という結果に繋がるのだろうな……」
情報の重要性は人間が誰よりも知っている筈だがと思うも、それは種全体であり、個々が必ずしもそれを理解している訳ではないかーーなどと暇潰しに考え事をしていると、
「よぉ、兄さん。さっきからよく分かんないことを一人でぶつぶつ云ってるみたいだけど、大丈夫かい?」
隣に並んでいた男が喋りかけてくる。
見た限り普通の中年の男だ。冒険者には見えないヒョロっとした体型で、服装からの判断が正しいというか訳ではないが、どうみてもせいぜいが村人あたり。雰囲気にも違和感はまるで感じられず、魔力も反応がほとんどない。
フィルは隠蔽という高度な技術を使っているため周りから察知されることは無いが、それはフィルが迷宮核と結合しているから短期間で習得出来た技であり、低位のスキルですら騙せるレベルだが、普通の冒険者にはまず不可能な芸当。高位の冒険者でも適正によっては完璧な魔力隠蔽を行えない者もいるほどだ。故に、この男は普通の一般人であろうと結論付けた。
「……すまない。つい、癖でな。それより、先程から何人かに見られてる気がするが、私の服装におかしな点でもあるのだろうか?」
フィルは並んでから何度も視線を感じていた。しかしその視線は同じ人物から、という訳ではなく珍しいものでも見る風な視線であったため問題はあまりないと思っていたが。予測としてはフィルの瞳の色だろうか。周囲を見渡したところ、あまり見られなかった。恐らく珍しいだけだろう。ただどうせならと確認の意味で男に聞いてみる。
「あー、それは兄さんの服装は関係ないだろうよ。どちらかというとーーおっと、すまんね。順番が来ちまった」
「…………」
そういうと男の列が動きそして見えなくなった。
やはり瞳の色か。とポツリと呟き、列が進んだため検問所へ進む。
進むにつれ、フィルは真剣な顔つきになってくる。ただ結局のところ無表情には変わりなく、少しだけ変化したかしてないか程度の差だ。
ここで重要なのは、ゼロにかけた幻覚系の魔法の解除タイミング。エディシス内部では魔法の使用が禁止されている。
町全体に緻密に編み込まれた高度な術式。それが有る限り、魔法を使用しながらそこに踏み込むことや、その上で魔力を動かせば即座に警報と共に位置が特定され、範囲内では魔法や魔力操作による恩恵が一切使えなくなる。
よって、ゼロに掛けた魔法を解くタイミングが重要なのだ。しくじれば後はない。仮に逃げることに成功したとしても、今後警備が厳しくなられては意味がない。計画が狂ってしまうのは明らかだ。
刻一刻と近付く入り口には、警備が四人。二人は門の外で入る者を見張り、あとの二人は門の内部で見張っている。
今のところ目はつけられていない。そして門に入る直前、フィルはゼロに掛けた幻覚を解除させると、自身が前に立ち顔を隠すことで最初の二人をやり過ごす。既に魔法は使えない。常に周りに気を配りながら平然を装わなければならないのは当然であり、重要なのは門の横に設置された高台に立つ警備員の目に留まらぬように歩くことだ。
門を抜ける。順調だ。人混みとなっている入り口付近を抜け、監視の目の届かぬ範囲に入ろうとする。しかし一瞬、僅かにであるが、フィルの目が警備員とあってしまう。
不審な点は無いはずだ。現在の立ち位置ならばゼロの顔は見られていない。だが警備員の男は眉間に皺を寄せフィルをジッと見つめている。
(……不味いな。怪しまれたか?)
しかしここで走って逃げてはならない。ゆっくりと、自分は何もしていないとの確信を持った足取りで門の付近から遠ざかっていく。
しばらく歩き、安全を確認し一息つく。街中に入った今、問題事を起こさない限り目立つことはそうないだろう。
「……一先ずは、宿だな」
とにかく安く、評判のあまりよくない宿ならば既に捕らえた冒険者の二人から聞いている。
しばし聞いた通りに歩くと、酷く汚れた建物が見えてくる。
木製の看板は完全に腐っており、そのせいで宿の名前がまるで分からない。宿本体も所々腐っている。一応申し訳程度に修繕はしているのか、なんとか二階建てとして保っている様だが、少し中で暴れれば良くて底が抜けるか、下手をしたら宿そのものが崩れ落ちてきそうな様子。
フィルは納得する。エディシスでも最低ランクと呼ばれる理由が。ここに来るのはよほど金に困った者か、人と関わりたくない者位しか、こんなところには泊まらないだろう。
扉を押し、中に入る。
「いらっしゃい。泊まりか、それとも飯か、どっちだ」
ぶっきらぼうにそういい放つのは中年の男。目はぎらつき、口元にある髭は手入れをしていないのが一目でわかる。服装は比較的普通のでなければ、浮浪者にも近い容貌だ。ただし髪だけは丁寧に整えられており、そこだけ見れば立派な職人風の顔つきなのだが。
「……泊まりだ。二人部屋を頼む」
「あいよ。ほら、鍵だ。二階にあっからよ。ただし今は部屋がねえから相部屋になるが構わねえな?」
その言葉に、フィルは僅かに顔をしかめる。少し、いや、かなり予想外であった。このクソのような宿が、満員だと誰が思おうか。そんな中、フィルはある一つの答えにたどり着いた。
「……なるほど、そういうことか」
「ああ?」
宿主は不機嫌に、自分の云うことに従わないフィルを睨み付ける。しかしフィルは気にする様子もなく
「……宿主よ。この宿がいくら人の住む水準を遥かに下回り、草臥れた馬小屋と同等だとしても、見栄を張りサクラを使う必要はない。金ならば通常の値よりも高くても構わん。……その脳みその足りなそうな頭で理解することが出来たならば、とっととサクラを立ち退かせることだな」
フィルは僅かに残った親切心と、相部屋になるのをさけるために宿の主であるこの男に、見栄を張る無意味さを教える。
このような宿が今更見栄を張ったところで、笑い者になるだけだとの想いから。
しかし男は目をいっそう細め、フィルを睨み付ける。
「……口がクソみてえにきたねえ兄ちゃんだな。俺に喧嘩を売ってくるバカ野郎はたまにいるが、兄ちゃんみたいなのは初めてだぜ」
「……なに。事実を、云っただけだ」
「つってもまあこの程度でキレるほどガキじゃねえ。云っとくが全部事実だ。相部屋が嫌なら他の宿を探しな」
フィルはその様子を見て僅かに溜め息を吐く。どうやらこの男、嘘はついていないようである。
元々フィルの宿を探す目的は、ゼロの待機場所を作るために他ならない。初日はある人物の捜索をする予定であるため、ゼロは必要ない。それならばと、リスクを排除するために宿で待機させようというのがフィルのプランだった。基本的に汚い宿の方が人が少なく、また詮索がされにくいと思いわざわざ聞き出したのだが、残念ながらそうはいかないようだ。
「……仕方ない。では別の宿を探すとしよう」
「待ちな」
諦め、他の宿を探そうとしたところ、二階へと続く階段から軋んだ音と共に一人の男が降りてくる。
爽やか。それが第一印象になりそうな二十代ほどの男性。白色をした髪は、肩ほどまで伸びていた。服装は青を基本としたラフなものだが、腰には冒険者がよく愛用している剣が。そのため恐らく冒険者だろうと簡単に予想できる。
「たまたま話が聴こえてな。あんたここに泊まりたいんだろ? なら俺がいたところ空けるてやるよ」
「なに偉そうに云ってんだてめえは。いつもツケで済ますくせに客ぶってんじゃねえ」
「うへぇ……。ま、それでも俺に部屋を貸してくれるオヤジの優しさにはいつも感謝してるよ。なんにせよ、俺はそろそろ仕事いくつもりだったからな」
常連客なのだろう。やり取りをみたフィルはそう思う。しかしそれは現状フィルには全く関係のない話であり、要は部屋が空いたということのみを認識していた。
「……って訳だ、じゃあ兄ちゃん金は先払い。んでこのカギを使いな」
二階に泊まっていた男から鍵をぶんどると、フィルに投げ渡す。
そこから金を渡すとゼロを連れて二階へと上がる。そして鍵の番号と同じ部屋に着くと扉を開け、部屋を見渡す。特に危険なものはないのを確認すると、ゼロのみを入れる。
そこからフィルは下に降り、宿を出ると捜索を開始した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
冒険者ギルドの一階、つまるところ依頼を受理するためのエリア。そこの少し離れた場所に、休憩所として丸テーブルとそれを囲むように五つの椅子、それが六セットほど設置してある。
基本的に冒険者はそこではなく酒場にいって飲む者が殆どであり、その場所が満席になることはほぼないと云っても差し支えはない。
しかし人が全くいないということもなく、常にどこかのパーティーが作戦を練っていたり、また友人同士で雑談に興じていたりする。
そしてここにいるティム・バーティンも同じように、友人と話をするため席に腰を下ろしていた。
かなり短い栗色の髪をした二十代前半ほどの男性だ。細身で背が高いことと、至って平均的な顔立ちをした彼だが、何故か目には特徴的な、レンズがうす黒い眼鏡のようなゴーグルを着用している。布ゴムで頭に固定されているそれは、彼が骨董市でたまたま見つけたものだった。
そんな彼が待っているのはザリンド・ガドル。
ザリンドはティムにとって昔からの親友であり、ペアを組んで冒険者もやっている。二人は数年前にこの町に拠点を移し、以来順調にDランクの上位とまでになっていた。
無論、Dランク最強と呼ばれるハデルバート率いる『クライシス』、それに次いで強いとされるファキラ率いる『白の剣』。またソロでDランクに上り詰め、更に上位の実力を誇ると云われる『ベェネ・オルグレリア』。これらの実力者にはまだ及ばないであろうものの、二人の実力は彼らを除けばトップであろうものだ。
そんな二人は、また仕事時の関係も、私生活としての関係も良好であった。
しかし、今はそれを疑いたくなるほどの剣幕で彼を待っていた。
その理由は大した事ではない。
「遅い……。あのやろぉ、何時間待たせる気だ?」
正確には待ち合わせの時間を過ぎて三時間五十五分。ほぼ四時間ティムはザリンドを待ち続けていた。なかなかの健気さではあるが、それでも流石に苛立ちは募っていた。
といってもこれはよくあることで、ザリンドはよく遅刻する。待ち合わせをしていようと、彼は毎度寝坊を欠かさない。とはいえ実際は毎回している訳ではないが、かなりの頻度と云えるだろう。
そんなとき、待たされるティムにはある暇潰しの遊びがあった。
人の心を観る。それがティムには出来た。いや、正確には人の気持ちを抽象的に感じ取る事が出来るというべきだろう。
この能力はティムが幼い時から持っているもので、当時はよく分からなかったものの、今ではかなり上手に使いこなせていた。
例えば、対象がとても歓喜に満ちた気持ちであった場合、ティムにはその人物から明るい色を感じ取れる。逆に落ち込んでいた場合、暗い色のようなものが朧気ながらも感じることが出来る。もちろん様々な種類があり、同じような色でも違いがあったりもする。またその色から、ティムは心の内を感じ取り、抽象的にではあるが、それを感じ取る事が出来た。
無論最初は非常に使い勝手の悪い能力であったが、それを長年扱ってきた結果、彼は感じ取る過程を脳内でほぼ省き、心の内を読み取るまでに強化させていた。
「へぇ、あいつ結構稼ぎがあったか……。おっと、あれは、今日はついてなかったみたいだな。仲間が怪我をしたってとこか」
ティムはこの能力を理解していた。『ユニークスキル』。何故知っているのかは分からない。指が動かせるのが当たり前のように、スキルのことを知っているのも、スキルを使えるのもごく当たり前だったのだから。
このスキルのせいで、よく人のどす黒い感情を読み取ることもある。また仲間だと思っていた者の本当の気持ちを知ってしまったこともある。だがそれでもティムはこの能力がいらないなどと思ったことは一度もなかった。またザリンドとの仲が深いのも、この能力を本人に知らせており、それでもザリンドが受け入れてくれ尚且つ態度を変えることなく付き合ってくれているからに他ならない。
ティムが出入りする冒険者達の心を読んでいると、漸くザリンドが呑気にやって来た。
「わりぃわりぃ! 気が付いたらこんな時間でよ!」
といいつつ全く反省のない白髪の彼を見て、ティムは呆れ顔を隠せない。
「また寝坊か……。そろそろ直す努力でいいからしてくれないか?」
「いや、こればっかりは譲れないな。て、そう言えばさっきここに来るときによ、滅茶苦茶カッコいい男にあってな」
「話をそらすな……。……まあいい。それにしても珍しいな。お前がそんなこと云うなんて」
「まあな。俺も自分でこんなこと云うなんて思わなかったぜ」
果たしてどんな状況で見かけたのかはやや気になるが、今はそれどころではない。
「色々気になるが……お前のせいで時間が押してるんだ。まずはそれを決めてから教えてくれ」
今日待ち合わせをしていた理由。それは『宝物庫』が変化したことと関係あるものだ。
元々、ティムは勘において、非常に鋭いものを持っていた。罠を勘のみで見抜いたこともしばしば、宝石類を勘のみで探し当てたのもよくあることだった。
そんな彼の勘は、今回の『宝物庫』の件でナニカを感じていた。
「ああ、確かここを離れようとかだったか?」
「そうだ。何か、あれは良くないことの前兆のような気がするんだ……」
「良くないこと、か。まあお前が云うならそうなんだろうな。しかし迷宮のランクが少しばかり早く上がっただけだぜ? 拠点移すっても色々人付き合いとかもあるしな……。普通にあの迷宮に行かなければいいんじゃないのか?」
「まあ普通に考えればその通りなんだが……理由は分からないが、ここにいたくないんだ」
ここにいると、恐らくどんな形かあの迷宮と関わるような気がする。彼の勘は叫んでいた。
「ーー分かった。ま、対処しようにも原因が分かんないんじゃ仕方ねえしな」
「……すまないな」
「気にするなって。お前にはその分助けられてんだ
。それでいつごろーーあっ! あいつだ。俺がさっき話してた男」
唐突に、ザリンドが目を見開きギルドの入口の方を指差す。
釣られてそこを見るとーー背筋が凍った。
「あいつ冒険者だったのか? まあいいや、わりぃ、ちょっと話してくるわ」
そういうと、ザリンドは席を立ち男の方へと駆け寄っていった。
元々自由な性格のザリンドは、思いたったらすぐに行動してしまう。ゆえに、特に考えもせずに話を中断して男へと向かったことはティムなら怒ることもない。そもそも話ならほぼ大半は既に終わったのだから。
それにしても、と思う。あまりに馬鹿げている。なんだあれは。異常、いや、それよりも遥かに上。
ザリンドの指差す方を見て、まず最初に眼に映ったのは一人の青年。青年、と云うよりもやや年齢は上かもしれないが、どちらにせよ、その男はまさに美と形容できるほど非常に整った顔立ちをしていた。また、どこか若い印象を与えてくる。
黒髪黒目。黒髪の人物はさほど珍しくないが、黒目という非常に珍しい特徴を持っていた。
身長は百八十センチほどか。服装は黒のインナーに白のシャツを肘まで捲り羽織っている。下は茶色の七分丈。杖も武器も持ってない点から冒険者かどうかは定かではないが、どこかに置いてきている可能性もあるわけで、つまるところ、彼が何者なのかは外見だけでは判断することは出来なかった。
そんな見惚れてしまいそうになる容姿を持った男を見て、ティムは震えが止まらなかった。
ティムの能力『カラフル』。ティムは先程、発動していたものの、まだ解除することなく習慣的に能力を発動させたままだった。
彼は後悔する。そのせいで、そのせいでこんな、あまりにおぞましい色を見てしまってたのだから。
彼の周りにまとわりついている、まるでヘドロのようなもの。それが恐らくあの男の心の色。しかしその色は、最早色という枠組みを越え粘着質な性質を持った物体であるかのようにさえ見える。
ーー思えば、一度。一度だけ酷く心が腐った人物を見たことがあった。
その時は人がここまで色を黒く染めることが出来るのかと、衝撃を受けた。
云ってしまえばそう、格だ。格が違う。それも遥かに。以前の人物は嫌悪感を経験した。だがそれだけだ。それを経験した今の自分ですら、あの男を目の前に、平然と立っていられる気がまるでしない。
吐き気さえ覚えるあのおぞましき色。そこからティムは心の内を読んでしまう。
正確に云えば、あまりに強烈なティムにとっての負の精神は、その意思を抽象的にだが殆ど強制的に伝えてくる。
ヤバい。直感した瞬間、ティムは能力を解除する。心の色を直視しすぎれば、今度は自分が危うい。最悪精神が崩壊しかねない。またそれを逃れても相手に悟られてしまう可能性もある。今は僅かに覗いた程度で済んだが、もしもう少し能力の扱いが下手だったら、間違いなくただでは済まなかっただろう。
それにしても、それにしてもだ。ティムは震えと共に確信した。
ーー非常に不味いと。
最近冷えますね。おなかいたいです