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混沌なる迷宮の王  作者: しいなみずき
Fランク迷宮
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迷宮レベル2 理解

 男の目が覚める。――ああそうだ。自分は確か石に触れて……。

すぐにそこまで思い出すが、途中で男を頭痛が襲う。先程の痛みほどでは無いものの、それなりに強いものだ。

それと同時に男には現在の自分の状況を理解した。

 男は現在自らの体液にまみれて痙攣している。主に胃液や鼻血や鼻水、そして排出物などだ。

これは酷い。


 だが――それが霞むほどの収穫を得たな。

まだ痙攣して喋れないが一人そうごちる。

 状況は最悪だが理解出来たのだ。先程までの疑問を含めあらゆることを男は理解出来た。











 男が理解出来たことは膨大だ。いや、理解出来たというよりも理解させられたことの方が多いだろう。しかしそれは一旦置いておく。

 まず男が理解したのは、この簡素な石造りの部屋が迷宮の最深部であった、ということだ。

そも迷宮とは何か。一般的に、迷宮とは魔物が徘徊し罠に溢れる危険に満ちた場所で基本的に一般人は立ち入ることはない。

 また先程触れた石は迷宮核と呼ばれる迷宮の製作や維持に欠かせないものであり、その価値は非常に高くそれを狙って一攫千金を目指して冒険者と呼ばれる職に就くものも少なくはない。

 ちなみに迷宮核を失った迷宮はそのシステムを維持することが不可能になりやがで朽ち果て消える。

しかし地上ではそのことが問題視されることはない。

それは迷宮が消える以上に、またその数を増やしているからだ。

 『冒険者』についてだが、冒険者は国が運営する冒険者ギルドに所属することが義務付けられている。

また冒険者をランク別に分類し、それによって挑んでもいい迷宮を制限した。

これには無駄に死者を増やさないためと強者による迷宮核の独占がないようにするためだ。

 もちろん強者が独占したところで取り分はギルドの方にきっちりと入るようになっている。

だがそれでは後続の冒険者が育たないではないか。そのような声によって冒険者はランク分けされるようになった。




 これらが男の得た知識である。もちろんまだ他にもあるのたが今はいいだろう。

 男はすでに自らの嘔吐物と血と糞尿と涙によって酷く汚れた体を流してり、身には漆黒のローブを纏っている。

 しかし身を清めるといっても水は見当たらない。それもそうだろう。

男が直接作ったのだから。

 男の手の甲には――迷宮核に触れた右手――どういう訳か男と完全に結合している迷宮核があった。

 そこから男は水とローブを創ったのだ。

これは男が迷宮核から得た知識。『創作魔法』の使用によるものである。


「全く。便利だな魔法ってやつは」


 本来迷宮核が高値で取引される理由は、それ自体に魔力(・・)と呼ばれる、人類が生きていく上で必要不可欠なエネルギーが多大に含まれているからである。

 それ故に迷宮核と結合した男には、本来男には使えるはずのない魔法が使えたのだ。

また、何故男が迷宮核と結合したのかは今は省くことにする。


「しかし困ったな。まさか状況がこうも悪いとは……」


 魔力とはある意味粒子のようなものだ。そのため魔力を貯めておくには『器』と、その『器』のある程度の大きさが必要だ。

『器』はその大きさが大きければ大きいほど魔力保有量は上がっていく。

 『器』――迷宮核はその魔力保有量が他の魔力を含む物質と比べて非常に高く、更に密度も高い。

 迷宮核は他の魔力を貯めることが出来る性質を持つ物質とは違い、その迷宮で死んだ生命の魔力を吸収することで迷宮核自体を巨大化させて魔力最大保有量を増やすことが出来る。

また一定以上の魔力を使い、ある程度の時間を過ぎても使った分の魔力が回復しない場合、その迷宮核は縮小し魔力最大保有量が減ることになる。ただこの世界の空気中には多少の魔力が漂っているので、僅かなら自然的に回復するのだが。


 迷宮核の大きさはどんなに小さくとも人間のこぶしの半分ほどのもの。もしそれ以下の大きさだと迷宮核は迷宮自体を維持できなくなり崩壊する。

 そして男の手の甲にあるのはこぶし一つの半分以下ほどしかない。

 つまりだ、この迷宮は現在最低限の魔力しかないのだ。男は知っている。ただし強制的に脳内に叩き込まれた情報ではあるのだが。

 この迷宮核は男と結合し、男に情報を無理矢理流し込んだことによって相当の魔力を

消耗していることを。

要するに、今男の手にある迷宮核は魔力切れ寸前だということ。


「残ってる魔力は……」


 男は目を閉じる。


「これだけか……。このまま手をこまいていたところで迷宮が崩れて俺も死ぬだけだ。一か八か、あんまり賭けは好きじゃないが……まあやるしかないか」





 

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