プロローグ
『ギャアアアアアアァァァ――――』
特に修飾がなされていない、寂しい石造りの簡素な部屋に、男のものと思われる絶叫が響き渡る。
部屋の内部には、質素なベッドと漆黒のローブを身に纏った男が一人だけ。
だが絶叫を響かせているのはこの男ではない。
発生源は、男のやや斜め上、空中に投影されている鮮明な映像の方からだ。
映像には、新品と思わしき派手な鎧を身に付けバスターソードを片手に持った男が魔物になぶり殺されている場面が写る。そしてその周囲には仲間と思わしき死体が幾つか転がっている。
「……これで、七人目か。ここら一帯はレベルの低い魔物が多いおかげか、自分の力を過信した初心者が多くて助かる」
ローブを身に纏った男がそうぼやく。無表情に、感情を感じさせない声で。
「……この魔力の溜まり具合ならそう遠くない内に地下四層を、作れるかもな。いや、それより守護者の強化に回そうか。いや、やはり――――」
そこまで言って男は急に沈黙し、映像を見つめる。
「……まさか一日にこんなに客人が来るとは。しかもパーティか。これはしっかり、もてなさないとな」
そして急に喋り出した男の声は変わらず、無感情なものであった。