EP.3 錬金術師
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「はぁはぁ…お、お待たせしました!貴女が『錬金術師』のチヨさんですか?」
「えぇ…そうですけれど…?」
正確には違うのだが話がややこしくなりそうだったのでチヨは素直に答えた。
「良かった…じゃなかった!えっと、僕はアルタ村役場でギルドマスターをしているティアスと申します。まさかこのタイミングで錬金術師の方が来てくれるとは思ってもいなかったので驚きました…!」
「このタイミングとは…?」
チヨの言葉にティアスは一瞬きょとんとした顔をした後、すぐに納得したような顔になり話を続けた。
「チヨさんは遠い他国からいらっしゃったんでしたね。少し長くなりますがご説明します。チヨさんもご存じの通り『錬金術師』と言うのはポーションや生活に関わる様々な錬金道具を作る事の出来る重要な職業ですが、この国では錬金術の習得難易度とかかる費用の関係で深刻な錬金術師不足なのです…本来『錬金術師』は国が雇入れて町や村にそれぞれ最低でも1人は常駐するのですが、現在は優先度の高い地域にのみ派遣されていてこのアルタ村も『錬金術師』のメルダと言う女性が数年前に亡くなってから『錬金術師』不在の状況が続いているのです…」
チヨは顔には出さないがティアスの話を聞いて内心驚いていた。チヨの知っている『錬金術師』はごく一般的な職業だったからだ。ただ考えてみれば今いるこの世界は恐らくゲームの中などでは無い現実であり、『錬金術』などの特異な物はティアスの言っていた様に習得が難しいのだろう。
「そこへ『錬金術』が使える私が来たので先ほどリンカさんは驚いてらっしゃったのね」
「はい、前任の『錬金術師』が亡くなって以降ポーションや錬金道具などの日用品が高騰してしまい冒険者だけでは無く、住民の生活にも支障が出ている状況なのです」
物価の高騰がどれほど深刻な物かは分からないが、この周辺のダンジョンで稼いでいる様な初心者の冒険者には回復ポーションを用意するだけでも厳しいかもしれないし、住民も生活苦になるのは容易に想像が出来る。
「このお部屋に呼ばれた理由は何となく分かりました。けれどこの国では『錬金術師』は国が雇い入れていると言っていましたけれど、私がこの村で『錬金術師』をやる事は問題にならないのでしょうか?」
「それについては問題はありませんが…って事は!よろしいんですか!?王都に向かえば国に雇ってもらう事も出来るでしょうけど…」
話を聞く限り国に雇ってもらい、いわゆる公務員になる事も出来そうだが、薄々と第二の人生になるかも知れないこの世界では自由で何者にも縛られずに生活したいとチヨは思っていた。とは言え生きていく為には稼ぐ必要がある。
「私はこの国の人間ではありませんし、どのような国かも分かって居ませんから。それにお国に勤めるよりもある程度自由が保障されている生活を私は望みます。それでよろしいのであれば私に出来ることはお手伝いいたしますよ」
「あ、ありがとうございます!それでは早速ご依頼した事の詳細を…」
そのまま仕事の話になるのかと思われたが傍らで待機していた受付嬢のリンカが咳払いをした。
「ギルドマスター今日はもう遅いですから、今後のお話は後日になさった方が…」
「そ、そうですね…宿はこちらで手配しますのでまた明日お話を進めましょう」
チヨはその後役場にほぼ隣接した宿屋に案内されて個室に入り一息ついた。
「急な事ばかりで少し疲れたけれどやっと落ち着けるわね…よっこいしょっと」
チヨは部屋に置いてあった椅子に腰かけ、ストレージ内の金貨を取り出すとつまんで眺めた。
「本当にどんな仕組みになっているのかしらねぇ?あら?」
チヨが部屋の中を見渡していると姿見が置いてあるのを発見した。
「そろそろ確認しておきましょうかね…よいしょっと」
自分の目から見える情報と周りの反応から自身の身に何が起こったのかは大体予想は付いていたチヨだったが確信を得るために姿見の前に立った。
「あらあら、やっぱりこの娘になっちゃってたのね…」
姿見に映ったチヨの姿はこの世界に飛ばされる直前にプレイしていたゲームでチヨが使用していたキャラクターのアバターだった。
「さっきまでおばあちゃんだったのにねぇ…随分若返っちゃったわね…」
チヨが自身の頬をむにむにと弄っているその姿は、黒髪ボブカットで少々気だるげに見えるたれ目で幼い顔立ちの身長150㎝前後の少女だった。
「これじゃあお姉ちゃんとかお嬢さんって言われちゃうわよね…さてと、お約束もしちゃいましたし明日に備えて寝てしまいましょうか」
チヨは部屋のベッドに潜り込むとすぐに寝息を立てて眠りに落ちた。
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