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第十七話 「魂の叫び」

――死寂。


先程よりも更に徹底的な、呼吸の音すら消え失せた死寂。


随即、火山が噴火するかの如き、完全な騒乱が巻き起こった!


「見ろ!奴自身が認めたぞ!俺たちを皆殺しにするつもりだったんだ!」


「怪物め!奴は本物の怪物だ!」


「――死刑だ!死刑!死刑!」


耳を聾するほどの斉唱が、津波のように広場を打った!



「エド・ウォーカー、そこまで——」

セリーヌが制止しようとした、その時、彼は…


…笑った?



「ハハハ…ハハハハハ…….アハハハハハハハハ――」


民衆は、少年がなぜ審問台で突然大笑いし始めたのか、理解できなかった。


セリーヌにも、理解はできなかった。

だが、彼女には聞き取れた。その笑い声に秘められた、憎悪よりも遥かに深いものが――それは、魂が完全に引き裂かれた末の……絶望の悲鳴なのだと。



「見たか?魔族の統帥とやら」

「これがお前の言う、アルタナスが救おうとしている……所謂『民衆』だ。奴らが、どれほど臆病で、どれほど愚かであるか!」

エドの視線が刃のように、壇下の顔一つ一つを薙ぎ払った。

「奴らは、強者の庇護があって初めて、その安っぽい『正義』とやらを叫ぶことができる」

「己の弱さを武器とし、その悲惨な境遇を盾として、強者の同情を引く」

「そして、何の呵責もなく、他人の手を使って、己のその醜く卑劣な、復讐欲を満たさせるのだ!」



(……やめろ)

セリーヌの唇が、声もなく動いた。


エドは再び、短く、そして悲哀に満ちた笑い声を上げた

「フフ……滑稽だろう? お前が築いたこの神聖な審問台も、今や、奴らの私欲を満たすためだけの、貴族を屠る祭典に成り下がった」

「お前たちの、その『正義』という上着の下に隠された私欲は……この俺の復讐の手より、更に汚らわしい!俺が調合した毒より、更に悪辣だ!」



エドの言葉は、無慈悲な鉄槌と化し、セリーヌの心にあった『理想』という名の神像を、一撃で粉々にした。


一方、壇下の民衆は、その言葉に完全に激昂した。図星を指されたことへの逆上は、最も悪辣な呪詛へと変わる!


「黙れ!人間の裏切り者が、我らを語る資格があるものか!」


「死刑など生ぬるい!八つ裂きにして、苦しませて殺すべきだ!」


「そうだ!奴自身の毒を使え!世にある全ての毒を味あわせ、苦しみ抜いて腐り果てさせろ!」



の光景に、空中のスカーロディア女王の幻影でさえ、その表情に一抹のやるせなさがよぎったかのようだった。

だが、彼女は依然として介入せず、ただその全てを見通す瞳で、審問台の上の少年を固く見据えていた。この膠着状態を解けるのは、彼しかいないと、信じているかのように。



「フン――」

「だから言ったんだ。最初から、お前たちなど皆殺しにすべきだったと」

彼は再び、あの身の毛もよだつ考えを、更に冷たい口調で繰り返した。

「あのベレーラ女王は、実に死ぬのが早すぎたな。もし彼女がまだここにいたなら、今のお前たちの様を見て、己の最初の理念が正しかったと、更に確信したことだろう――お前たちのような輩は、永遠に奴隷とされるのがお似合いだと」


エドの視線が、まるで審判を下すかのように、壇下の民衆を再び薙ぎ払った。

「今の己の姿を見るがいい。吐き出した言葉をよく味わい、己の行いを、よく考えてみろ。この腐った国を真の繁栄とやらに導く力が、お前たちのどこにある?」


エドは、その痩せた背筋をぴんと伸ばし、その瞳に鋼のような信念を迸らせた。

「俺は、お前たちとは違う。俺は、己の信念を貫くために、この手を血に染め、そして、ここに立って俺の罪を受け入れている!だが、お前たちは……」


彼は再び民衆へと向き直る。その氷のように冷たく鋭かった声が、突如、制御不能に……震え始めた。その震えは、次第に、抑えきれない嗚咽を帯びていく。その痩せた身体、その肩が、苦痛に震え、彼は、壇下の民衆へ、そして、四年前の、誰にも助けてもらえなかった自分自身へ、魂の叫びを、放った――




「――お前たちは、一体、何をしたっていうんだ!!!――」

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