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第十五話 「統帥の逆鱗」

それは一人の少年だった……。

瞳は虚ろで、まるで魂を抜き取られたかのようだ。顔も身体もどす黒い血の汚れにまみれ、身の毛もよだつほどの気配を放っている。


少年はただ顔を上げ、その生気のない瞳で審問台の上のセリーヌを見つめると、ありったけの力で、場の雰囲気とは全くそぐわない天を衝くような叫びを上げた。




「おーい! 魔族のおばさーん!」


セリーヌのこめかみに、青筋がぴくりと浮き上がった。


「一体、まだ審問を続けるのか!?こっちは転移門の後ろで、足が痺れちまったんだぞ!!!」

エドの叫びは、広場の剣呑な雰囲気を切り裂き、全ての視線を一身に集めさせた。



壇下の民衆は、困惑したように囁き合った。

「……誰だ?あの小僧は……」

「まさか……どこかの貴族の奴隷か?」

「あっ!そうだ!思い出したぞ!あいつ、昨日スレイア様の後ろにいた少年じゃないか?!」

「はっきりと覚えている……この少年……腰に……たくさんの……生首を……ぶら下げていたんだ……」

「なんてことだ……恐ろしい……」

恐怖と悪意に満ちた憶測が急速に広がり、民衆がエドに向ける視線は、最初の困惑から完全な畏怖へと変わっていた。



しかし、その全ての反応の中で、ただ一人、壇下の民衆の誰よりも激しい反応を示した者がいた。


セリーヌの理性が、「ぷつん」と音を立てて切れた。


彼女を激怒させたのは、審問の中断ではない……あの、極めて無礼な呼び方だった。

(お……ば……さん……!? この、身の程知らずのクソガキ……!またしても私を……『おばさん』だと!? しかも……こんな大勢の前で!!!)

内心の火山は既に噴火していたが、統帥としての尊厳がその衝動を無理やり押さえつけさせた。


一方、空中のスカーロディア女王の幻影は、その威厳ある表情のまま、口元を覆って密かに……くすりと笑った。

遠くの時計台の上では、スレイアが完全に堪えきれなくなっていた。


「ぶっ――!あははは!だめ、お腹痛い……!あのセリーヌを『おばさん』呼ばわりなんて!ぷはははは!」

彼女の傍らにいた四人の副官は、此刻、顎が外れんばかりに驚いていた。

(あいつ……命知らずにも程があるわ……!)



その隠す気もない嘲笑を感知したのか、セリーヌは猛然と振り返り、人の肝を冷やすほどの殺意を乗せた視線を、正確に時計台の方角へと撃ち放った。

遠くのスレイアは、その殺気立った視線を捉えると、咎めるどころか、セリーヌの方に向かって、ぺろりと舌を出してあっかんべーをしたのだ!



「フィリス――!!!」

審問台の傍らに控えていたフィリスは、統帥のほとんど実体化しそうなほどの怒気を感じ取った。

「はっ、統帥!」


「あの子を……私の前に……引っ立て――いえ、連れてきなさい!」


「御意に!」


フィリスは一閃、エドの眼前に舞い降りた。その血塗れの、虚ろな目をした少年を見て、彼女は心の中で嘆息した。

(この小僧……せいぜい、無事を祈るしかないわね)


エドは外界の全てに依然として無反応で、フィリスに引かれるがままに、魂のない操り人形のように、一歩、また一歩と、審問台を上がっていった。


セリーヌは高みからエドを見下ろしていた。その美しい紺碧の瞳には、あの「魔族のおばさん」という呼び名によって点火された、抑えきれない怒りの炎が燃え盛っている。


しかし、彼がセリーヌと四つに目を合わせた、その瞬間。虚無を映していたかのようなその空虚な瞳に、突如……再び、焦点の光が灯った。


彼はもはや目を逸らさず、虚ろでもなく、猛然と顔を上げ、その鳶色の瞳で、セリーヌの威圧に満ちた視線を、真っ直ぐに、受け止めた。

(……綺麗だ……。死ぬ前に、こんな美人を目にできるとは。このまま彼女の手に掛かって死ねるなら、儲けものだな)


こうして、魔族の統帥と復讐の少年は、数万の視線が注がれる中、無言の対峙を始めた。空気は凝固し、濃密な火薬の匂いに満ちていた。

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