第二十四話 「女王の演説」
「ドサッ」という鈍い音がした。
典獄長の肥え太った身体が、ゴミ袋のように広場の石畳の上へと投げ出された。
「痛っ……」
彼女は怨嗟の眼差しを背後に向けたが、そこにはもう何もない。顔を上げ、眼前の光景を捉えた時、その動きは凍りついた。
彼女を包囲しているのは、怒りに歪んだ、彼女が見慣れすぎているほどの——下賤の民の顔だった。その手には、包丁が、鎌が、ただ先端を削っただけの木の棒が握られている。
「貴様ら……何をする気だ! 反逆か!?」
典獄長は、反射的に、権力に満ちた恫喝の言葉を吼えた。
しかし、その言葉が口から滑り出た瞬間、彼女自身、思わず笑いたくなった。彼女の視線は、眼前の狂乱する顔々を越え、やがて遠くの、静かに中空に浮かぶ緋色の人影へと注がれた。
「はは……はははははは……」
典獄長は、笑った。その眼差しに、未だかつてない侮蔑と、全てを悟ったかのような複雑な色が浮かんでいた。
「哀れなものだな、魔女よ」
彼女は高らかに言った。
「世界を滅ぼすほどの力を持ちながら、『規則』ごときに手足を縛られるとは。自ら復讐する勇気もなく、ただこうして、己で思考できぬ家畜どもを煽動する……神様ごっこでもしているつもりか?」
スレイアの計略を見抜いた後、典獄長は意外にも、ゆっくりと立ち上がった。彼女は服についた埃を払い、再び背筋を伸ばすと、まるで今なおこの場の唯一の女帝であるかのような姿で、周囲の民衆を見回した。
「そして、貴様ら」
彼女の声には、隠しようもない侮蔑が満ちていた。
「我らの統治の下、犬のように大人しくしておきながら、骨の一本さえしゃぶる勇気もなかったというのに。今になって、『魔族』に後ろ盾になってもらった途端、その滑稽な武器を手に、この私に吠え面をかくとは」
「何を言っている——!!!」
典獄長の嘲りは、煮えたぎる油のように、民衆の怒りへと容赦なく注ぎ込まれた!
「来い! 私を殺しに来い!」
典獄長は両腕を広げ、病的な、殉教者のような笑みを浮かべた。
「だが、忘れるな!」
彼女は、中空に浮かぶ緋色の人影を指差し、最後の、そして最も悪辣な挑発の言葉を放った。
「私を殺せば、それは、貴様らが今日この日から、犬のようにこの魔族どもの足元で生きていくと認めることに等しい! 忘れなさるな、奴らは……残忍で、狡猾な、あの魔族なのだぞ!」
その言葉は、冷水を浴びせかけられたかのように、多くの者たちの怒りを一瞬にして鎮めた。一つの、より深い、未知への恐怖が、彼らの心に広がり始めていた。
「ふっ……」
その不安が広場全体を呑み込もうとした、まさにその時。一つの、侮蔑に満ちた軽笑が、中空から全ての者の耳に届いた。
スレイアの姿が、まるで重さのない羽根のように、中空からゆっくりと舞い降りてきた。まるで血の池に浸されたかのように、毛先から根本へと緋色に染め上げられていく桃色の髪が、荒れ狂う風の中で華麗な翼のように翻る。
スレイアは、ぴたりと地に足を着けると、優雅に、その場にいた全ての民衆へ、非の打ち所のない貴族の一礼を捧げた。
「グランディ帝国の民よ、初めまして。私はスレイア。アルタナス合衆国が一人、『歓愉』の大公爵」
その声は大きくない。だが、奇妙な魔力を帯び、聞く者全ての心を一瞬にして鷲掴みにした。
次いで、スレイアは振り返り、面白い玩具でも見るかのような目で、典獄長を見つめた。
「目の前のこの者がどれほど残忍な罪を犯したか、その答えは、とうに諸君らの脳裏にあるはずだ」
「私がこの者をここへ連れてきたのは、ただ、民意を問うため」
彼女の声が、不意に凄みを増した。それは、神の勅令の如く、広場全体に響き渡る!
「私が知りたいのは、ただ一つ。諸君らの心の中、このような、国を蝕む罪人が——」
彼女は一拍置き、その猩々緋の瞳で、一人一人の顔を射抜くように見渡した。
「——殺すか、それとも、殺さないか?」




