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第二十三話 「共有された地獄」

夕暮れのルカドナ市街、その広場は、久しく忘れていた喜びに包み込まれていた。広場の中央には巨大な篝火が燃え盛り、老いも若きも、男も女も、手を取り合って不格好なダンスを踊っていた。その顔には、涙が伝いながらも、晴れやかな笑顔が咲き誇っている。


解放された一つの都市、自由の味を噛み締める一つの夜。杯は高く掲げられ、歌声は天に届けとばかりに響き渡る。


まさに、その時だった。


本来であれば紺青色の夜の帳に覆われるはずの天空が、何の兆候もなく、完全に、果てのない、ゆっくりと流れる血の海へと変貌した。

そして、その血の海の水面の下には、一団、また一団と、不吉な七色の雲の塊が、渦を巻いていた。



「お母ちゃん見て! 空に、虹が出てる!」

一人の子供が、突然空を指差した。だが、その無邪気な声は、最後まで紡がれることはなかった。


「あああっ!」


合図もなく、唐突に。

割れるような激痛が、広場にいる全ての人間の脳を、同時に、貫いた!


「あっ!」


「頭が!」


「痛い!」


苦痛の叫びが、まるで疫病のように、歓喜に沸いていた群衆の間で迸った! あれほど賑やかだった広場は、ほんの数秒のうちに、おぞましい呻きと混乱の渦へと叩き込まれる。

秩序を維持していた妖狼族の兵士の一人が駆け寄ろうとした、その瞬間――彼自身のものではない、極限の苦痛と絶望に満ちた記憶の奔流が、まるで灼熱の鉄水のように、彼の脳内へと殺到したのだ!



……薄暗い、拷問室……


……赤熱した、焼印……


……肥え太った、典獄官の制服を着た女が、愉悦に満ちた、残忍な笑みを浮かべている……


……その下で、拷問台に縛り付けられた、もはや人の形さえ留めていない「何か」が、声なき悲鳴を上げている……


己のものではない、極限の苦痛と絶望に満ちたその光景が、最も悪辣な呪いとなって、広場にいた、一人一人の脳裏に、強制的に、焼き付けられていく!


「た……助けて……」


「痛い……痛いよぉ……」


民衆は、まるで我が身のことのように、地獄の底から響いてくるかのような、凄絶な呻き声を上げた。


まさにその時、広場の中央、巨大な篝火の真上で、一つの、深紫色の、まるで傷口のように引き裂かれた転移魔法陣が、渦を巻きながら現れた!


次いで、肥え太った典獄官の制服を着た女が、まるで吐き出されたゴミクズのように、その魔法陣の中から、容赦なく放り出された!




ドン!


という鈍い音を立てて、その身体は、衆人の眼前に、無様に、叩きつけられる。


その顔を見た、瞬間、広場を埋め尽くしていた全ての呻き声が、ぴたりと、止んだ。


彼らの眼差しは、苦痛から、困惑へ、そして、困惑から、全てを悟ったかのような表情へと変わり、やがて、その全てが、人一人を焼き尽くしてもなお余りある、凄まじい憎悪の奔流へと、収束していった!



「あいつだ……」


「……あの女だ……」


「貴様かっ!!!」


先ほどまで床を呻き転がっていた一人の男が、その、今なおのたうつ人影を指差し、最初の、怒りの咆哮を上げた。

「貴様だ! 俺の頭の中で、あの哀れな娘に、焼印を押し付けたのは!」


「あんただったのか!!!」

別の婦人も、泣き叫ぶ。「あたしは見たぞ! あんたが、無実の大臣たちを、化け物に変えていくのを!!」


「「「貴様が!!! この人殺しめ!!!」」」


抑えつけられていた怒りの堰が、ついに、完全に、決壊した!

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