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第十九話 「魂の無声劇」

ゴゴゴゴゴ——!!!


天そのものを引き裂かんばかりの、一本の、極太の猩々緋の稲妻が、不吉な虹色の雲の奥深くから迸った! 耳を聾するほどの雷鳴が、神罰の角笛のように世界全体に響き渡る!


貴族の捕虜たちは甲高い悲鳴を上げ、本能のままに地面に跪き、名も知れぬ神へと懺悔していた。


雷鳴が止むと、世界は不気味なほどの死の静寂に包まれた。


その静寂の中、魔導団の少女たちは、皆、呆然と、監獄の門の前にいつの間にか現れていた緋色の人影を仰ぎ見ていた。

今のスレイアは、その身から、息が詰まるほどの死のような静けさを放っている。本来であれば蠱惑的であるはずのその瞳は、今や、ただ燃え盛る、一切の感情を宿さぬ二つの猩々緋と化していた。


アリシアの心臓を、見えざる手に鷲掴みにされたかのような感覚が襲う。

彼女は、スレイアの胸元にある日月の輝石に気づく。「月」の影が、既にその輝きの半分を覆い隠している!

「スレイア様……あなた……!」

アリシアの声が、初めて抑えきれないほどの震えを帯びた。



「恐れるな、アリシア」

スレイアが口を開いた。その声は平坦だが、無数の亡者の怨念が凝り固まったかのような、魂を震わせる重みを持っていた。

「私の意識は、まだ、ここにある」




「し、しかし……!」

アリシアは躊躇わなかった。両手が瞬時に印を結び、深海のように静謐な瑠璃色の魔力の光輪を放つ。

「私が、お力添えを!」


しかし、スレイアは、ただ軽く手を一振りしただけだった。アリシアの、軍隊一つを鎮めるほどの安撫の魔力は、音もなく掻き消えた。

「愚かな真似はよせ、アリシア」

「言ったはずだ。私の意識は、まだ、ある、と!」



そう言うと、彼女はもはや副官を顧みず、その燃え盛る猩々の怒りを宿した瞳を、とうに恐怖で魂も抜け殻となった元凶——典獄長の上へと、再び固定した。


典獄長は、はっと息を呑んだ! その燃え盛る猩々緋の瞳は、まるで二つの血色の渦となって、彼女の魂魄ごと、その内へと吸い込もうとしている。

まさにその時。典獄長の、恐怖に渙散したはずの黒い瞳が、何の兆候もなく、スレイアと全く同じ不吉な猩々緋に染め上がり、やがて全ての光を失って、まるで二つのくすんだガラス玉のように変貌した。



彼女の魂は、既に、別の世界へと墜ちていた。

彼女自身の罪悪によって構築された、一つの、薄暗い舞台。壁には、彼女が最も好んだ数々の刑具が掛けられている。

そして、舞台の中央には、役者たちがいた。彼女がその手で嬲り殺しにしてきた、「残骸」たちが。


その顔に、表情はない。復讐の悦びも、怒りもない。ただ……壊れた人形のような、虚ろな麻痺した感情があるだけだった。

彼女たちは、機械的な、硬質な足取りで、ゆっくりと、この舞台の唯一の主役——典獄长へと、歩み寄ってくる。


「やめろ! やめなさい! このクズどもが! 下賤の囚人が! 私に、何をしようというのだ! ああああああっ——!!!」

典獄長の絶叫が、この「魂の牢獄」における、最初の、そして永遠に繰り返される挽歌となった。。

人形のような亡者たちは、彼女の咆哮も呪詛も意に介さない。

彼女たちは、ただプログラムされたかのような動きで、典狱長を押さえつけると、かつて、彼女たちが生前にそうされたように、機械的な「作業」を、始めた。


時間は、ここでは意味をなさない。

焼印が皮膚を焼く痛みも、鞭が肉を裂く苦痛も、ペンチが骨を砕く絶望も、全てが寸分の狂いなく再現される。

一度の「処刑」が終わるたび、舞台はリセットされる。身体は元通りになり、そして、人形のような亡者たちが、再び、歩み寄る。

叫びは届かず、抵抗は意味をなさず、気を失うことさえ許されない。

ただ、永遠の、プログラムされた拷問があるだけだった。


そして、この、終わりなき絶望の戯曲は、始めから終わりまで、ただ、あの血のように赤い、深淵の如き瞳の中だけで上演される、一つの、小さな、滑稽な、無声劇に過ぎなかった。

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