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第十話 「奈落への階層」

シャーリーとフレイムは、全身を感電したかのように硬直させ、反射的に顔を上げた。前方で高速移動するスレイアが、その残像越しに、冷たく危険な光を宿した金色の瞳でこちらを振り返っているのが見えた。二人は即座に雑念を振り払い、粛々とその後を追った。

一方、彼女に首根っこを掴まれている典獄官は、人生で最も恐ろしい一瞬を味わっていた。極度の恐怖は、やがて耳障りな絶叫へと変わる。

「あああああ……助けてええええええ——」


(……うるさい)

スレイアの秀麗な眉が苛立ちにぴくりと動いた。

「――黙れ!」

彼女は振り返りもせず、ただ純粋な殺意の波動を精神的な衝撃波として放った!

「次に鳴けば、その口を縫い付けてやる」

典獄官は見えざる槌で脳天を殴られたかのような衝撃を受け、絶叫も思考も粉々に砕かれる。後方を飛ぶフレイムとシャーリーでさえ、一瞬目眩を感じた。


彼女がようやく静かになったのを見て、スレイアは満足げにふんと鼻を鳴らした。

しかし、下の階層へと続く入り口の角に差し掛かろうとした、まさにその時。スレイアのその金色の瞳が、視界に映ったある人影によって、初めて、真に、僅かに見開かれたのだ。


(ん? この子供は……)


その小さな人影は、一行に背を向け、冷たい石の床に跪いていた。彼の目の前には、十数個の、まだ血の滴る「戦利品」が行儀よく並べられている。彼は背後を通り過ぎる一行に気づく様子もなく、ただその手にした鋭い石くれで、一心不乱に、壁に新たな文字を刻みつけていた。


スレイア一行は、その孤独な世界と、すれ違う。だが、その僅かな一瞥の間に、彼女の視線は、壁に刻まれた、ある一つの名前を的確に捉えていた――


タリア・ケレス。


(なるほど……奴が持ち歩いていたあの頭部は、歪んだ自己満足のためではなく……それを贄として、己が心に刻まれた、大切な者たちに捧げるためだったのか)

スレイアは思わず、四年前、彼女がルーシーたちと足を踏み入れた、あの焼き尽くされた村のことを思い出していた。

(もし……今日、彼が捕まっていなければ、今頃、あの頭部を手に、あの無名の墓地へと戻り、四年遅れの……血祭りを上げていたのかもしれない)


その複雑な思考は、スレイアの脳裏を瞬く間に駆け巡っただけだった。彼女が瞑想から我に返った時、一行は既に、次の階層へと続く入口の前に到着していた。



カチャリ——

澄んだ開錠の音と共に、次の階層へと続く鉄格子が開け放たれた。


「ここを下り、その最奥にある尋問室に、地下牢へと通じる隠し扉があります……」

案内役の典獄官の声には、もはや一種の諦念にも似た平坦さがあった。


「この階層の下に、例の冤罪の者たちが収容されているのか?」

スレイアは歩きながら、不意に尋ねた。


典獄官の足が、ぴたりと止まった。

そう言うと、彼女は回廊の両脇に並ぶ薄暗い牢屋を一瞥し、自嘲的で、何の感情も含まぬ声で、ぽつりと言った。


「ちなみに、この階層のいわゆる『重罪人』とやらの大半は……へっ、貴族街でパンの一切れでも盗んで、ただ生き延びようとしただけの、哀れな連中ですよ。そんな馬鹿げた理由で、ここに一生閉じ込められ、朽ち果てていくのです」


その言葉に、後続のフレイムは僅かな戸惑いを覚えた。

「食料を盗むだけ? なぜ金銭を? 金銭があれば、もっと多くのものが手に入るはずだが」


その、あまりに世間知らずな問いに、典獄官は力なく苦笑すると、無垢な魔族の少女を振り返った。


「お嬢様。自分が飢えて、立つことさえままならない時、金貨と石ころに、何の違いがあると? それに、この国で、みすぼらしい身なりの男が、不意に大金などを手にすれば……貴女は、その男が、無事に食料品店まで辿り着けるとお思いで?」


「その口ぶり、どこか得意げに聞こえるが?」シャーリーは、彼女のその自嘲的な態度が気に食わず、憤然と言った。


「得意、ですって?」


典獄官は立ち止まり、初めて、まるで哀れな子供でも見るような眼差しで、怒りに顔を赤らめる少女を見つめた。

「お嬢様、お尋ねしますが、飢えて骨と皮だけになった男たちに、完全武装の衛兵に抵抗する力など、おありで?」


「そ、それは……」

シャーリーは言葉に詰まった。


「誰もが、貴女方のように、生まれながらにして天変地異をもたらすほどの力を持つわけではないのです」

典獄官は、まるで判決でも下すかのように、静かに告げた。


「この国ではな、お嬢様方。多くの者にとって、ただ生き永らえること、それ自体が、奴らにできる、唯一の抵抗なのだ」




ギィィ——


彼女は次の区画へと続く扉を押し開け、振り返ることなく、その中へと歩いていった。


フレイムとシャーリーは、押し黙った。典獄官の言葉が、重い石のように、彼女たちの胸にのしかかる。スレイアの顔からも、先ほどまでの戯れの色は消え、ただ氷のような静寂だけが残っていた。一行は重苦しい沈黙に包まれ、彼女の後に続いた。


しかし、一行が次の階層へと続く回廊に足を踏み入れた瞬間、眼前の光景は、上の階層とは全く異なっていた。


ここは上の階層よりもさらに死のように静まり返り、空気には、よどんだ絶望の気配が満ちていた。

一つ一つの牢の小窓から中を覗くと、囚人たち――執事やメイドの制服を着ている――が、魂を抜かれた人形のように、ただ虚ろな眼差しで天井を見つめている。


「なるほど、この者たちが、例の大臣たちの家族というわけか」スレイアの声は軽やかだったが、この静寂の中ではやけに鮮明に響いた。

「はい」典獄官は感情を失ったように答える。「主人の無実を触れ回らぬよう、屋敷にいた者は一人残らず、密かにここへ連れてこられました」


一行が、ある牢の前を通り過ぎようとした、その時――


ガシャン――!


耳障りな金属の衝撃音が、何の兆候もなく轟いた!

続くように、一対の、蒼白で骨張った手が、牢の小窓の鉄格子の隙間から、凄まじい勢いで突き出された!

「きゃっ——!」シャーリーとフレイムは、思わず悲鳴を上げ、一歩後ずさった。


その両手は虚空を掻き、爪が折れて裂けるのも構わず、見えざる仇敵の喉笛を締め上げようとしているかのようだった!

その狂気じみた動作と共に、まるで地獄の底から響いてくるかのような、怨毒に満ちた叫びが、空気を引き裂いた!

「ファリナ!!! この蛇蝎の女め! 貴様を呪ってやる! 無様な死に方をするがいい——!!」

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