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第十三話 「理想の果て」

幼く拙いながらも真情に満ちた幼少期の日記を読み、セリーヌの、常はどこか一線を画したその顔に、自身も気づかぬほどの、淡く温かい笑みが浮かんだ。


指先がそっと黄ばんだ紙面を撫で、戯れや戸惑い、そして純粋な友情が記録された筆跡を静かに見つめる。まるで本当に時空を超え、キャロラインとベレーラの、いかなる現実の翳りも差さぬ、純真で美しかった幼少期を、その身で感じているかのようだった。


しばしの後、セリーヌはほとんど聞こえぬほどの溜息一つと共に、日記帳の後半を捲った。


案の定、歳月の流れと共に、キャロラインの筆跡は成熟し、力強いものへと変化していた。その主人のように。


【帝国歴XXX年、帰郷の日】


「一年にわたる血と炎を経て、ついに南方の獣人族の騒乱を平定した。再びベラに会えた時、私の心臓は張り裂けんばかりだった。彼女はもう、あの泣き-虫の姫様ではない!即位してわずか三年、その眼差しには女王の威厳が宿っていた。彼女が独りでこの国を支える様を見て、ただ、心の底からの誇りを感じた。


今日、私は『鉄騎大統領』の職位を授かった。だが、思いもよらなかった。祝宴の後、ベラが私を一人引き止め、『共にこの国を治めてほしい』と誘ってくれたのだ!彼女は、私が唯一信頼できる親友なのだと。


なんてことだ……。これは、どれほどの栄誉だろう!その瞬間、私には見えた。私たちの共通の理想が——繁栄し、安定し、強大なグランディ王国が。

我が剣と忠誠の全てを、我が友、我が女王に捧げよう。我らの理想のために。」




【日記・見知らぬ世界】


「……久しく筆を執っていなかった。疲弊した軍を率いて辺境から帰還した時、私を迎えたのは、見知らぬ祖国だった。街路には、飢えで虚ろな目をした民が亡霊のように彷徨い、一方で、貴族たちの屋敷は夜毎に宴を開き、灯火が煌々と輝いている。私が血を流して守り抜いたはずの国が、内側から腐り始めていた。


私はベラに進言し、国民の窮状に目を向けるよう願った。彼女は驚き、怒るだろうと、そう思っていた。だが……。


彼女は、膨大な軍費を支えるためには仕方ないのだと、私を怒鳴りつけた。彼女が私を下がらせた時、その背後に控える貴族の佞臣たちが漏らす、押し殺したような忍び笑いが耳に届いた。

疑いたくはない。我が親友を。彼女はきっと、巨大な重圧に直面し、やむを得ず、苦渋の決断を下したのだろう……そうに、違いない。」




【日記、無】


「再びこの日記帳を開き、過去の喜びに満ちた文字を見つめていると、そのすべてが、今の私の無力を嘲笑っているかのようだ。内政はさらに腐敗し、あの貴族たちの貪欲さは深淵のように、この国の礎を喰らい尽くそうとしている。

そして、何より私を氷の底へ突き落としたのは、ベレーラの最新の法令——

一部の男性国民を奴隷に貶め、自由に売買できる財産と見なすことに、彼女が同意したのだ!これは建国の理念への裏切りであり、人間性への冒涜だ!

私は大殿へ駆け込み、ほとんど祈るように、撤回を求めた。だが今回、彼女は私を見ようともしなかった。ただ冷ややかに、『キャロライン、自分の軍だけを管理しろ。内政に干渉するな』と。

その瞬間、私はようやく理解した。

玉座の上に座っているのは、もはや、私の知るベレーラではなかった。

かつて、私が彼女を泣かせただけで心を痛めたあの少女は……一体、どこへ行ってしまったのだろうか……。」

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