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第七話 「女王の懺悔」

ベレーラの意識は激痛の中を漂っていたが、セリーヌの一言一句が、焼き印のように、その魂に刻印されていく。そうだ……認めざるを得ない……この三年間、魔族の攻勢は苛烈に見えたが、常に、幾つかの重要な局面で、「絶妙な加減で」、手を引いていた。


奴らは、常に、何かを避けていた……戦火が、民衆の暮らす大都市に及ぶのを、取り返しのつかない、大規模な殺戮を……それは、無能なのではない。一種の……意図的な……抑制?


セリーヌは、彼女の顔に浮かんだ、次第に驚愕へと変わっていく茫然とした表情を見つめ、ほとんど残忍なほどの、静けさで、最後の答えを、告げた。


「もし、モネイアラやシヴィルが軍を率いて来たならば、三年も要らん。三日だ。三日で、貴様のグランディは、一面の焦土と、死体の山と化すだろう!」



その一言が、ベレーラの精神を支えていた最後の藁となった。氷のように冷たく、巨大な屈辱を伴う悪寒が、一瞬にして、彼女の背骨を駆け上り、脳天を貫いた。


そういうことか……スカロディア女王は、最初から、無益な死傷と損失を、最大限、減らしたかったのだ!


彼女は、已む無く、反撃したが、その目的は、断じて、破壊ではなかった。ただ、より「穏健」なやり方で、この腐りきった政権を、取って代わる、ただそれだけのために!


ベレーラは地に身を投げ出したまま、力なく、キャロラインが倒れた方角を、その、広がりゆく、目に焼き付く血の染みを見つめていた。


(残念なことに、私……私は、あまりに傲慢で……あまりに、権力を貪り……権力という欲望に、目が眩んでいた……。なんと……なんと、完全に、見過ごしていたことか……あれらの、明確で、数多の犠牲を、避けることができたはずの、信号を……)



「だから、ベレーラ」

セリーヌの声が、再び響いた。もはや、説得や理念の響きはない。ただ、最後の審判を下す、一片の温度も感じさせぬ、冷酷さだけがあった。


「まだ、続けるか?罪なき者たちの血肉を以て、その、とうに腐り果てた、偽りの『栄光』を」


地に倒れ伏したベレーラは、激痛と後悔に、身を止めどなく震わせる。

これが、最後の慈悲なのだと。抵抗は、キャロラインの犠牲を、ただの茶番へと貶める。

彼女は涙を浮かべながら、困難に、顔を上げた。その視線は、最後にもう一度、セリーヌの腕の中にいる、あの、安らかな顔へと注がれた。


「わ……私は、降伏する……」

その声は嗄れて、力なく、完全な敗北を帯びていた。

「私……グランディ帝国を代表し……アルタナス合衆国に、降伏する……」

彼女は、ぜえぜえと荒い息をつく。

「そして……私は、親筆で……降伏文書と……私が女王として犯した……全ての罪状を記し……天下に、公表しよう」


彼女の視線に、一筋の、決然たる光が宿った。

「願わくば……私一人の命を以て……万民の……赦しを、得んことを……」


ベレーラが震える両手を上げ、降伏の言葉を口にしたその時、セリーヌの、海のように深いその瞳の奥で、あたかも、遥か彼方の星がごく微かにまたたいたかのようだった――キャロラインへの、最後の約束が、果たされた。


彼女は、外界からの降伏の意にすぐさま応えることなく、その全ての注意を、腕の中の、冷たくなっていく魂へと注いだ。

(これで、安心するといい……キャロライン)

その瞬間、セリーヌの顔に、ただこの時だけの、この上なく優しく、尽きせぬ安堵を帯びた笑みが浮かんだ。


だが、その優しさが留まったのは、ほんの僅かな間だけだった。セリーヌが再び顔を上げた時、その眼差しは、魔族の統帥たるべき、氷の如き威厳を取り戻していた。彼女は、地に伏す敗れた女王を見据え、歴史を宣告するかのような、感情の籠もらぬ口調で、言った。


「捕らえよ!」


「女王ベレーラを……一時、牢へ」


セリーヌは、一拍の間を置き、背後のカイエンを一瞥した。その声は少し和らいだが、より明確な、命令の響きを帯びていた。

「だが、忘れるな。女王陛下に対し……礼を尽くせ。無礼は、許さん」


カイエンは身を屈め、厳粛な面持ちで、命を受けた。

「はっ、セリーヌ様!」

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