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第二話 「孤剣の女帝」

数名の蒼月魔導団員が進み出た。指先が床を滑り、生命の緑色に輝く魔法陣が、キャロラインの足元で華麗に開花した。

神聖にして暖かなエネルギーが、生まれたての太陽のように彼女の全身を包み込む。麻痺の毒は光の中で浄化され、取って代わったのは、神性すら帯びた、強大な力。それが、信じられぬ速さで彼女の細胞の一つ一つを修復し、昇華させていく。


彼女は驚愕に目を見開き、己が両手をぐっと握りしめる。感じたのは、自らの全盛期さえ超えた、頂点の、その更に上にある力!

「この力は……本当に、私なのか……?」

戦士としての誇りが、この、敵から与えられた「恩恵」によって激しく揺さぶられていた。


カッと目を見開いたキャロラインは、利剣のように、その全てを与えた魔族の統帥を射抜く。

セリーヌの顔には、全てを理解した、神性すら感じさせるほどの静けさが浮かんでいた。まるで、今まさに最も眩い光を放とうとしている芸術品を、鑑賞しているかのよう。

差し伸べられた右手は、再び、前へとすっと動く。非の打ち所のない、古風な趣に満ちた誘いの手つき。


「――どうぞ!」

セリーヌの声が、湖の中心に投じられた一石のように、幾重もの波紋を広げた。その一言が、両国の運命を決する決闘の、開戦を告げる鐘の音だった!


キャロラインは、行動をもって応えた。

彼女は力強く跳躍し、誇り高き雌鷲のように空中で回転すると、羽毛のように軽やかに着地。そのまま半ば身を屈め、手中の長剣で満月のような光の弧を描き、その切っ先を、寸分の狂いもなく、セリーヌの心臓へと向けた。



セリーヌは、その流れる水のごとき動きを見て、内心で感嘆の声を漏らした。

(このような軍人は、尊敬に値する。もし、彼女と肩を並べて戦うことができたなら……)

その眼差しに、一筋の惜しむ念が過ぎる。


キャロラインは眉を顰めた。

「決闘である以上、なぜ剣を抜かれぬ!?」

その問いを聞き、セリーヌの口元に、絶対的な自信に満ちた笑みが浮かんだ。

「剣など不要。何故なら、私自身が――」

「――最も鋭利な、剣なのだからな」


「ほう?」

キャロラインの瞳に驚きがよぎるが、それはすぐさま、より強い闘志へと変わった。「ならば、その身をもって、魔族軍を統べる統帥――『孤剣の女帝』の、真の威光とやらを、見せてもらおう!」


キャロラインは躊躇わなかった。長剣が絢爛たる銀色の弧を描き、静まり返った湖面が、一瞬にして荒れ狂う大波と化したかのようだった。

剣の舞は月光のように流麗だが、その一瞬一瞬に、殺意が潜んでいる。


セリーヌとの間合いが三歩以内となった時、その月光が突如として炸裂した!切っ先は闇を引き裂く稲妻と化し、さながら毒龍の牙のように、音もなくセリーヌの喉元へと喰らいついた!


(もらった!)

キャロラインが勝利を確信した、その刹那。


セリーヌの顔に驚きは一切なかった。この致命的な一撃を前に、彼女は避けもせず、防ぎもせず、ただ左足を、舞踏家のように優雅に振り上げたのだ!


タン――!

金属の悲鳴が大広間に響き渡る。キャロラインの迅雷の突きは、セリーヌの足先によって、いとも容易く蹴り上げられ、逸らされた。

(馬鹿な!? 足で、私の剣を……!?)



衝撃が走る。だが、セリーヌの反撃は、それよりも速かった。剣を蹴り上げたその勢いのまま、彼女の右手が弾丸のように突き出され、見えぬ刃を纏い、キャロラインの首筋へと迫る!


キャロラインの反応もまた、人間の限界を超えていた。左腕のガントレットが魔力の光を迸らせ、盾のようにセリーヌの手刀を防ぐ!

それと同時に、彼女は体の回転を利用し、右手の長剣が致命的な円の軌跡を描く。刃が空を切り、唸り声を上げ、身近に迫ったセリーヌを、腰から両断せんと迫った!


だが、セリーヌの姿は、まるで亡霊のように、その後退も、防御も、もはや予測不能だった。

キャロラインの斬撃が空を切ったその瞬間、長剣は自らの命を得たかのように、追撃の突きへと転じる。銀色の光が、稲妻のごとき速さでセリーヌの腹部へと突き進んだ!


(今度こそ――!)


しかし、再び、常識を超えた光景が、キャロラインの思考を停止させた。

セリーヌの体は羽毛のように宙へと舞い上がり、その左足の爪先が、突き進む剣の切っ先を、蜻蛉が水面に触れるが如く、軽く、ただ一点、突いた。

その、触れるか触れぬかの反作用の力を借り、彼女の体は、信じられぬように宙で回転し、さながら月下の仙女のように、剣の光の中で絢爛たる軌跡を描くと、音もなく、キャロラインの背後――その、絶対的な死角へと、舞い降りた!


(背後!? ありえない、いつの間に……!?)


パッ!

キャロラインが剣を振るった勢いを殺しきれず、防御が間に合わぬその刹那、セリーヌの右の掌が、亡霊のように、彼女の背中の中心へと、吸い付くように張り付いていた。その、軽々と触れただけに見える一掌に、極限まで凝縮された、浸透する力が込められていた。


「ぐ……はっ――!」

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