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第二十話 「神罰の十字星」

(やれやれ……本当に、手の焼ける子たちね……)


最終的に、セリーヌは一つ深呼吸をすると、全軍へ向け、明瞭な指令を発した。


「いいでしょう!来たからには、その覚悟を見せなさい!蒼月魔導団、総員傾聴!」

彼女の声は、いつもの落ち着きと威厳を取り戻していた。


「二手に分かれろ!第一小隊、ガレット、シンシアが指揮を執れ。任務は機甲部隊を援護し、主砲の威力を増幅、奴の角を砕け!」


「第二小隊、アリシア、ルーシーは精鋭を率いてスレイアの元へ!いかなる代償を払っても、彼女の『日月輝石』を安定させ、暴走を食い止めろ!スレイアが暴走すれば、その結果は『ベス・モン』を超える!理解したか!?直ちに行動に移れ!」


「はっ!!」


作戦指令の後、セリーヌの声のトーンが、不意に、僅かに、弱々しいものに変わった。


「……皆、必ず……自分の身を最優先しなさい。決して……死なないで。分かったわね…」

通信チャンネルに、息を呑むような沈黙が訪れる。


刹那の後、今までとは比べ物にならぬほど、魂を燃やすかのような斉唱が、響き渡った。


「「「了――解!!!」」」



「第一強襲小隊、主砲の最終エネルギー充填を開始せよ!」セリーヌの指令が、全部隊のチャンネルに下された。


「了解!」マハロスが応じ、九機の機甲が緊密な砲撃陣形を組む。


「レニ、」セリーヌは別のチャンネルに切り替える。

「貴官のシステムで、敵のシールドを継続監視せよ。僅かでも不安定な兆候が見られた瞬間――マハロス小隊に、目標を奴の角にロックさせ、致命的な一撃を放て!」


「はっ!しかし……どうすれば、その『脆弱な一瞬』を?」


セリーヌの口元に、絶対的な自信と、氷のような殺意を秘めた笑みが浮かんだ。


「それについては……貴女が心配するには及ばないわ。私が、こじ開ける」

言い終わるが早いか、セリーヌは体内で荒れ狂う膨大なエネルギーを、もはや抑えようとはしなかった!


「はぁぁぁぁぁぁっ――!!!」


雲を引き裂く叱咤!その身を纏う蒼き闘気が、天を衝く巨大な青い光の柱と化した!

闘気の縁で躍動していた金色の電光も狂ったように増幅・集束し、ついには彼女の周囲に、純粋な雷のエネルギーだけで構成された、高速で回転し爆ぜる、金色の神輪を形成した!


シュン――!



エネルギーの放出が頂点に達した瞬間、セリーヌの姿は金と蒼の二色の電光を纏う流星と化し、音速を超えた速度で、刹那のうちにドラスペルタの真正面に現れていた!


「三百年、使う機会もなかった力だ……」


「その絶望を、その身に刻むがいい、畜生――」


「〝次元破碎ディメンジョン・ツェルシュテーラー〟ッ!!!」


その言葉と共に、彼女が右手で虚空を切り裂くと、金色の神雷と、深藍の空間消滅エネルギーが織りなす、十字の破壊の星が、ドラスペルタの巨体の上に、烙印のごとく刻まれた!


その十字の中心は、実体を持たぬ、光さえ呑み込む漆黒の虚無。その歪み収縮する虚無が、まるで世界の理そのものを書き換えるかのように、あの暗赤色のエネルギーシールドを存在ごと侵食・分解し、現実が削り取られていくような、不快な軋み音を立てていた!

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