第十八話 「戦場に駆ける絆」
「お待ちください!蒼月魔導団の皆様!」
アリシアたちが昇降ゲートへ殺到した時、数名の機甲守備隊員が即座に立ちはだかった。
「あなた達の出撃許可は出ていません。我々を困らせるような行動は控えていただきたい!」
「これは我々の決断よ」アリシアが一歩前に出る。
「我々の統率者が戦っている。支援に向かうのは当然の職責。ゲートを開けなさい。実力行使はしたくない」
「軍令に背くと?結果を考えているのか!」
「〝友軍への緊急支援〟よ。文句があるなら、後でセリーヌ統帥に直接言いなさい!」
「口先だけは達者なことだ!もし私が、断固として通さぬと言ったらどうする!」守備隊長の口調も、陰鬱なものへと変わった。
アリシアはゆっくりと目を閉じ、再び開いた時、その瞳は氷のような決意に満ちていた。
「ならば……失礼させていただくしかありませんね!」
言い終わるが早いか、彼女は腰のベルトから抜き放った魔導剣を煌めかせ、他のメンバーも次々と武器を構える。一瞬にして、通路内の空気は張り詰め、極限まで緊張が高まった!
一触即発のその時、数条の灰色の影が、音もなく守備隊員の背後から躍り出た!鋭い鉤爪が鉄の鉗子のごとく、最前列にいた数名の首を正確に扼す
「カイエン!――」
アリシアとガレットたちは、同時に驚きの声を上げた。
「失礼する、スティーペロス地区の同胞」
カイエンの低い声が、守備隊長の背後から響く。
「貴様ら……自分が何をしているか分かっているのか!?これは公然たる反乱だ!その結果を考えたことがあるのか!?」制圧された守備隊員が吼えた。
「分かっているさ。だからこそ、こうしている!」カイエンの声は落ち着いていた。「友よ、頼む。ゲートを開け、彼女たちを行かせてやってくれ。責任は全て、この俺、カイエンと、アクリスタ妖狼族軍団が引き受ける!」
「カイエン!手を放しなさい!それが軍事的反乱に等しい重罪だと分かっているの!?」
ガレットが焦って制止する。
「申し訳ない、ガレット副統領。それはできない」カイエンの口調には、自嘲が混じっていた。
「この戦いは、俺たち通常部隊が介入できる範疇を超えている。俺たちにできるのは、これくらいだ。だから……」
彼の視線が蒼月魔導団へ転じる。「……頼む。俺たちの代わりに……上で、存分に暴れてきてくれ!」
「カイエン……」ルーシーたちが、彼の言葉に心を打たれる。
「早くゲートを開けろ!さもなくば……容赦はしないぞ!」カイエンは爪に僅かに力を込めた。
制圧された女戦士は、カイエンの殺気を感じ、ついに諦めたように息を吐いた。
「……1号と3号通路は氷結で使えない。2号か4号から上がれ」
彼女は忌々しげに自身のアームガードを外すと、アリシアへと投げ渡した。
「……これを使いなさい。黄色いボタンで、高速ドローンを呼べる。それで戦闘空域まで直行できるわ」
「貴女……」アリシアが愕然と彼女を見つめる。
「……早く行け。ぐずぐずするな!」女戦士は顔を背けた。
アリシアたち四人は、彼女を深く見つめ、鄭重に一礼すると、毅然と身を翻した。「蒼月魔導団!私に続け!」
魔女たちが通路の奥へ消えると、カイエンは部下に目配せし、拘束を解かせた。
「すまない、先程は非礼を働いた。」
「……そこまでして、彼女たちを行かせる価値が?」女戦士は苦笑した。
「価値があるか否か、それは我々が今、考えるべきことではない。」カイエンの眼差しは深かった。
「俺たちは戦士だ。同胞が血を流しているのを、ただ見ていることの屈辱は……どんな処分よりも耐え難い」
女戦士は暫し沈黙し、やがて何かを決意したように口を開いた。
「私の報告書には、こう記す。当小隊は、アクリスタ妖狼族部隊による強硬な脅迫に遭遇。生命の危険があった状況下で、やむを得ず……緊急通路の起動に協力した、と」
言い終わると、彼女はカイエンに意味ありげに頷き、部下を率いて去っていった。
「……感謝する」カイエンは彼女たちの後ろ姿を見送り、低く呟いた。
やがて、彼は顔を上げる。その視線は合金装甲を貫き、遥か砲火の飛び交う天空を見据え、心の中で静かに祈った。
(セリーヌ統帥……スレイア様……蒼月魔導団の皆……頼んだぞ!)




