第十二話 「復讐の鋭矢」
数回の徒労な空間跳躍の後、ドラスペルタもこの回避が無意味だと悟ったようだ。
鬱屈と狂怒に満ちた咆哮の後、それは転移を諦め、再び身の周りに透明な空間障壁を凝縮させ、遍在する「悪霊」の侵擾を防ごうと試みた。
高空の雲層の中、眼下の光景を全て目に収めていたフィリスの口元に、優雅で残酷な笑みが浮かんだ。
「無限の幻影の中で足掻くがいいわ、愚か者。この『精神汚染』に完全な耐性を持つ者など、指で数えるほどしかいないのだから」
眼下でドラスペルタが咆哮し、その巨躯の周りに再び、あの透明な漣の如き空間障壁が凝縮されていくのを見て、セリーヌの口元に氷のような弧が描かれた――待ち望んだ好機!
「第一強襲小隊、マハロス!麾下部隊を率いて全速で出撃!任務は『空間震爆弾』による飽和攻撃で、敵の空間障壁を強制的に過負荷させろ!」
「残りの全火力部隊、及びフィリスの空騎兵団は、敵の耳鰭をロックオン!障壁消失と同時に、命令を待たず集中砲火を開始せよ!」
「了解!!」
「御意のままに、統帥様!」
通信チャンネルに、マハロスとフィリスらの、気力に満ちた応答が響き渡った。
命令一下、山腹の格納庫ゲートが開き、マハロスの率いる九機の戦闘機甲が、復讐の鋭矢のごとく咆哮を上げて飛び出した!
「三号機の……血の代償だ。支払わせてやるぞ、畜生がッ!」
マハロスの低い唸り声が、部隊内通信に響く。彼女は座機の推進器を、怒りと共に限界まで引き上げた。
九機の戦闘機甲は、マハロスの先導の下、あたかも一本の刃が、二つの切っ先に分かれるかのごとく、迅速に二つの攻撃梯隊へと分散した。
マハロス自らが率いる三機が、障壁を破壊する主攻。彼女たちの特殊弾頭ランチャーが、既に見え隠れする空間障壁をロックオンしていた。
残りの六機は有利な攻撃陣地を占拠し、主砲のエネルギーを急激に集束させる。その砲口が、ドラスペルタの耳鰭を固く狙い定めていた。
時を同じくして、高空の雲層の中、フィリスも麾下の騎士たちに命じる。待機していた六頭の『デストラゴン』が喉の奥で、不吉な紫黒色のエネルギー体を凝縮させ始めた。
全軍の殺意が、ただ一つの目標へと注がれる。
「今よ!空間震爆弾――全弾、発射ッ!!」
マハロスの一声の下、三機の特殊ランチャーが同時に火を噴いた!数十発の、奇妙な蒼い電光を放つ『空間震爆弾』が、不安定なエネルギーの尾を引きながら、異なる角度から、咆哮を上げて透明な空間障壁へと殺到した――!




