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備忘録1 『魔法学院 1日目』

 ――あの時、確かに俺は死んだんだと思った。


 白く、何もない世界で、どこからともなく聞こえて来た声。

 神様なのか何なのか、全く分からなかったけど、その言葉を聞いて、俺は思った。

 ああ、もう終わったんだな、と。


 剣を振るい、命を賭して守ったもの、守れなかったもの――すべてを背負って、俺の物語は静かに幕を下ろした。悔いがなかったわけじゃない。でも、それでも俺は、あの場所で、 精一杯生き抜いたんだと、思えた。


 だからこそ、目を覚ました時には、正直なところ少し戸惑った。


 目に映ったのは見たこともない空、聞こえてきたのは知らない言葉。

 まるで夢の続きを見ているようで、どこか現実味がなかった。

 だが、それが現実。ここで俺は、再び生きているらしい。

 この世界で何をするべきなのか、なぜ自分がここにいるのか。まだ答えは見つからないけれど、それでも、今のこの時間は確かに現実なんだと、少しずつ理解してきた。


 そうして入学することになったのが、このルーヴェル・ウルフェン魔法学院。名前からして立派だが、中身もなかなか一筋縄じゃいかない。

 まず、年齢がバラバラってのがちょっと驚いた。見た目は俺より年下に見えるのに先輩だったり、逆に明らかに大人っぽいのに新入生だったり。年齢じゃなくて「いつ入ったか」で立場が決まるってのは、正直最初は混乱したけど……どこか、剣の世界にも似てる気がする。

 強さとか、経験とか、ただ年が上なだけじゃ誰もついてこない。道場も似たようなもんだったな。ああ、でもあっちはもっと厳しかったか。


 魔法については、まだわからないことだらけだ。

 でも不思議と、すごく惹かれる。

 理屈じゃ説明しきれない力だけど、それでもちゃんと『型』みたいなものがある。集中の仕方とか、力の巡らせ方とか、何かを制御する感覚。それは、剣を振る時の呼吸や体重の流れに似ている気がする。

 魔法は剣じゃないけど、根っこの部分にある『自分の中の力をどう使うか』って意味では、似てるんじゃないかと思う。もしかしたら、俺には合ってるのかもしれない。


 それから、使い魔。

 この世界に来て、召喚という儀式を通して呼び出した存在だ。

 名前はノワール。見た目はただの黒猫で、小さくて、どこか気まぐれで。でも正体はドラゴンというらしい。それも、相当な力を持った存在であることは、一目見た俺でもわかった。そんな存在が、今は俺の足元で、尻尾を揺らしながら丸まって寝てる。信じられないような話だ。


 ノワールが、なぜ俺を選んだのかは正直わからない。けど、あいつは確かに俺を見ていた。最初から、ちゃんと見ていて、それでも俺に力を貸すと決めてくれたんだろう。

 少し嬉しい。あいつが、俺の傍にいてくれることが。


 この世界の言葉も、最初はわからなかったはずなのに、気がつけば普通に会話ができている。今日、ふと魔導書を開いたら、そこに書かれていた文字が、すらすら読めてしまった。見たこともない記号のような文字なのに、頭に直接意味が入ってくるような感覚だ。

 俺が普段書いてる文字も、周囲にはちゃんと通じてるらしい。多分、ここの魔力とか何かの影響で、互いの言葉が自然と変換されてるんじゃないかと思う。

 不思議な世界だ。だが、不快じゃない。


 この世界で、俺は何をするべきなんだろう。

 答えはまだわからないけど、こうして生きていることの意味を見つけられたらと思う。

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