第8話 付き合ってみる
食べ終えて、少しだけ休憩した。すずは彼が気になって気が気でなかった。しばらくの間、彼の横顔を見つめていたのだった。
「(端正な横顔だなぁ……)」
勝手に出てくる感想を、心の中で言ってみる。静かな時間が今、目の前にあることを再確認する。
「(でもなんだか、赤くなっているような……。気のせいかな……?)」
見つめていたすずが確認した、発見したこと。それは彼がちょっとだけ頬の周りを赤くしていたからだった。異変に思ったすずだったが、すず自身もその理由をすぐに理解した。
「(わ、わたしも赤くなってる……。彼も赤くなってる……。だから、つまりは……)」
ようやく合致がいったところで、また頬を染めるすず。恥ずかしがっていると頬が赤くなるのは当然だ。すずは彼が思い切った大胆な行動をしたために、顔を赤くしていたことを知ったのだ。
すると、すずのいる方向に寝転びながら顔を向けた彼。まともに顔を合わせられないすずは、反射的に彼が見ているであろう予測を立てたうえで、その方向を確認するように追って視線を移した。
なぁ、と彼がすずを呼ぶ。
「な、なんでふか……」
変な噛み方に困惑を覚える彼。お構いなしに彼は続けた。
「ふぇ……」
間抜けな返事にまたも困惑する彼。
「え? ちょ、ちょっと待ってね? 『好きな人いんのか?』って? 答える前に、どうしてそんなことを聞くのかな……?」
単純に知りたいから、と彼がぶっきらぼうに言った。
「えっ……あっ、いや……。その、いないわけでもないけど……。いると言ったら、へんな感じになっちゃうから……」
意味わかんねぇ、と彼。とっとと言えよ、と急かしてきた。
「え、えぇ〜……? でもぉ……」
いいから早く言えよ、とまた彼がすずを急かしてくる。
「い、いるよ……」
ニヤリと笑い、すずの方に近づいた。彼はすずの顔を下から覗くようにして見つめ合う。
「『だれ?』って……そんなの、言えるわけないよ……」
俺の知ってるやつか、と興味津々のようだった。
「だ、だって……」
「君だもん……」
直球な言葉に、彼は応えた。
『今からデートでもするか』
「うん……お願いします……」
すずに彼氏ができたのだった。