第7話 おやつ食べてみる
変な空気になったことを気にした彼は、台所に行っておぼんを持ってきた。
「あっ、おやつ〜……。これ私が好きなチョコレートだね……。君、ちゃんと覚えててくれたんだ」
普通に親が買ってきてるだけだ、と少し無愛想に言って、これまた少し乱暴にすずに渡した。
「チョコレート……。あっ、君それ、私が取ろうとしたやつだよぉ……。食べたかったのにぃ……」
見せつけるようにして彼が包装紙に包まれたチョコレートを剥いて食べる。うまー、となんとも感情のこもっていない感想を言い、しばらくして飲み込んだ音がする。
「むぅ……。なにその顔……。その勝ち誇ったような顔やめてよ……。なんか分かんないけど私が負けたみたいだから」
そう言いながらもすずはおぼんのお菓子に手を伸ばす。すずの好きなチョコレート、もなかに饅頭、駄菓子屋でよくみる小さなドーナツまで種類は豊富だ。
「あっ……! また取られた……。それも最後のやつ……。イジワルぅ……。いいなぁ、いいなぁ……」
手を伸ばしたところでまた彼が奪って行った。しかし今度は違う。彼はそのチョコレートをすずの方に向けた。
「ふぇ……。どうしたの、急に見せつけて。『やるよ』って? い、いいの? ありがとう……やったぁ……」
両手で器のような形にしてもらうのを待つすず。
「ん? 『そういう意味じゃない』って? でも、くれるんでしょ? だからそうやって差し出してるんじゃ……」
あーん、と口を開けながら指示する彼。
「ッ!?」
すずはすぐに気づき、顔を赤らめる。
「い、いや……ちょっと……。食べさせてもらえるのは嬉しいんだけど、あんまり、その、恥ずかしいからさ……。こういうのは……」
どんどん彼の手が伸びてくる
「ちょ、ちょっと……」
抵抗できず、折れたすずが口を大きく開けた。
「んぅ……」
唇のところで一旦止めたが、彼は構わず指ごと中に入れた。
「あむ……はむ……」
甘い味が口に広がる。
「ん。おいしい……」
すると彼は自分の手が汚れていたのか、ぺろぺろと舐め始めた。
「あっ……! ダメだよ! それだと私の唾液が付いちゃうから———」
警告など無視。彼は舐める。
「あ……。あぁ……」
見ているだけのすずが、また顔を赤くする。変にえっちで不思議だった。
「う、うぅぅ……。そんなに舐めないでよ……! 汚いから、舐め回さないでよぉ……」
ニヤリ、と口角を上げた彼なのであった。