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第6話 赤面してみる

「そ、そんな簡単に言わないでよ……。彼氏と言っても、作ろうと思って作れるわけじゃないんだから……。それにほら、私と付き合いたい人なんていないよ……」


 いやいや、と彼が首を振る。


「え、えぇっ? 『すずは可愛いからみんな付き合いたいはずだろ』って……? い、いやいや、そんなことないよ……。私なんかを気にいる人は本当にこの世に存在していないし……」


 首を傾げて真っ直ぐにすずを見つめる彼。もじもじとして、落ち込みながらそんなことを言うすずに、彼はすぐに返答する。


『俺はお前のこと気に入ってるけどな』と。


 すずは目をおっきく開いて、ポカンとした顔で彼を見た。


「へ……?」


 もう一度彼が言う。同じことを、同じ言葉を、もう一度。すずに向けて、彼が言う。


「ッ……!?」


 途端にすずの顔が赤くなった。そして心臓の音も早くなる。意味を理解すればそうなるはずだろう。彼は無自覚にすずに『自分という存在がいるぞ』と自分から公表したということになる。


 発言者である彼は全くそんな気などなく、自分の感じていること、周知の事実であろうことを言ったまでであり、意味を込めた言葉ではなかった。単なる確認といったところだろう。


 しかしすずは先ほどから彼の過剰なスキンシップのおかげで頭の中が妄想のかぎりを尽くしており、何でもかんでも恋愛的な意味に受け取ってしまうようになっていたのだった。


「も、もうっ……からかいすぎだと私、怒っちゃうよっ……! あんまり変なこと言ってると、本当に我慢できなくなるからっ……!」


 何がだよ、と彼が困惑して聞いた。


「えっ、いや、さっきの言葉……だって、そういう意味でしょ……」


 何が、とまた聞いた。


「えっ……。も、もしかして……また無自覚に……」


 お前なんの話してんの、とまたまた追い打ちをかけていく彼。これはからかいでもなんでもなく、ただ本当に困惑しているからである。


「うぐぅ……」


 すずの反応から異変を察知したのか、彼は先ほどの自分を思い出して考えた。うーん、と唸りながら、何を言ったのかを自分で考えてみた。


『俺はお前のこと気に入ってるけどな』。


 その前の『すずは可愛いからみんな付き合いたいはずだろ』。


 あ、と彼。ようやく理解したようだった。


「うぅぅ……。もう〜……。って、あれ? 君、どうしてそんなところ見てるの? それはゴミ箱だけど……何かあるの……?」


 そっぽを向いた彼なのであった。

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