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月光浴  作者: 高倉 壮
9/10

光を纏って……


二度の放出後の僕のせいきは、

鎮まるどころか、

鎧を纏ったかのようにますます硬く、

薄明かりの中で鈍い光すら放って、

尚も彼女を求めていました。


彼女に与えてもらった快感に見合うだけのものは無理だとしても、

少しでも報いたい、

彼女から教わったばかりの愛撫もいくつか加えて、

僕は彼女に尽くしました。

その時の彼女は、目を瞑りながらも体全体で僕を見守ってくれているように見えました。



 その頃の僕は、硬くて太いせいきを体力に任せて強く奥深く、

まるで大地に杭を打ち込む如くに突くことしか知らず、

彼女の華奢な体を危うく壊してしまう程の勢いで、彼女の中へせいきを叩き込みました。

彼女と僕の恥骨がぶつかる音が響き、

僕の下で彼女は、

眉間に深い皺を寄せて唇を震わせながら僕を受け入れます。


程なくして僕がまた絶頂に達すると、

少しの間脱力した僕を優しい目で慰めるように見、また仰向けに寝かせて、

彼女は僕の腰に跨りました。

馬を乗りこなすような要領で彼女は実に巧妙に腰を動かすのでした。


僕は快感に霧散していく意識の中で、

まろやかな月の光に浮かんだ彼女の美しい姿を僕はただ観ていました。


羽ばたく鳥のように胸をいっぱいに反らせた彼女は、哀しいほどに美しく、

その姿は僕のどこかに貼りついていて今も時々僕を襲うのです。


最後に熱い濡れ縄で絞められたような痛いほどの快感を僕は感じ、意識は明かりを消したように落ちました。



 目が覚めると、彼女の姿は僕の寝ている布団にはありませんでした。

時刻は昼をゆうに過ぎていて、前の日あの人と会った時と同じ位置に太陽が来ていました。


僕はすぐにあの人を追いかけねばという思いに駆られ、服を着てリュックを背負うと、

一階の宿の受付へ走りました。


支払いを済ませようとして、

もしかすると彼女は僕の分も支払って出て行ったのかもしれないなという考えが頭をかすめましたが、

昨日と同じ受付の女性が料金を言うのを待ちました。


ところが、その女性は何も言わず面倒臭そうに僕が料金を出すのを待っているだけなので、

僕は念のため二人分の料金を出しました。


そうすると更に面倒な顔をして、

彼女は一人分の料金を告げました。

僕に向ける視線が昨晩と変わらないことで、

僕はあることに気がつきました。


その女性には、昨日の夜、あの人は見えていなかったのです。


同じ部屋にするか、別の部屋にするかを尋ねなかったこと、狭い部屋に通され、

一枚の布団しかなかったこと、それらはそのように考えれば一瞬にして合点がいきました。


僕は自分を抑えることができず、言葉にならない何かを叫んでいました。



 どれくらいの間、その宿の受付で立ち尽くしていたのでしょうか。

僕はどのようにしてその町を抜け出して次の町へ行ったのでしょうか。

 

 そのあたりのことが、どうしても思い出せないのです。


               つづく


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